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"天才”のつくり方【書籍紹介】「君のクイズ」(著:小川哲)

天才はフィクション<偶像>として存在している。
だから天才はつくることができる。

世界は知っていることと知らないことの2つで構成されているとすると、その反比例する2つの要素に"何を"加えるかで、どのようなフィクションがつくられるかが決まる。

なぜなら人は信じられるものを信じているわけではなく、信じたいものを信じるからだ。だから”天才”はつくること、エンジニアリングが可能となる。

今回のnoteは、「地図と拳」で直木賞を受賞した小川哲さんの「君のクイズ」を紹介します。クイズに命をかける主人公が、「クイズとは何か?」、「クイズに正解することはどういうことか?」という謎を解くミステリー小説です。

このnoteでは、書評を中心に読書に関する記事を発信しています。ぐちゃぐちゃになった頭の中を読書で整理してみると、それだけで人生がラクになります。人生をラクにする1冊を紹介するnoteです。

「君のクイズ」のあらすじ

クイズに命をかける主人公三島玲央は不可解な負けをした。

パァン、という早押しボタンが点灯した音が聞こえた。

僕はすぐに隣の本庄絆を見た。彼のランプが赤く光っていた。
僕は真っ先に「ああやっちまったな」と思った。本庄絆に同情した。まだ問題は一文字も読まれていない。

「ママ、クリーニング小野寺よ」
本庄絆はそう口にした。

それから十秒ほどの間があって、正解を示す「ピンポン」という音がなった。

「君のクイズ」(著:小川哲)

対戦相手の本庄絆は問題を一言も聴くことなく『ママ.クリーニング小野寺よ』と答え、そして正解。

日本一のクイズプレイヤーを決めるクイズ番組「Q-1グランプリ」の決勝戦で三島は完敗。何が起きたのか?それをまったく理解できず、ただを負けたという事実だけが残った。

本庄は天才?番組のやらせ?
三島にとってクイズは人生そのもの。その自分のすべてであるクイズに自分の理解の範疇を超えることが起きた。

三島はこの不可解な謎の真相解明のため奔走する。

問題を一言も聴くことなく正解にたどり着くことなどありえない。
でもこの数年間、本庄の成長を見てきた三島には、彼が、本庄が"やらせ"に加担しているとは思えない。

信じたくない。なによりも人生を捧げてきたクイズにやらせがあったとこと、それに自分も加担してた可能性があるなんてことは。

天才の、本庄の思考を追っていく中で、それまでは見えていなかったことが見えてくる。ただどこから見ているか?その視点が違うだけだ。

そういう意味では天才も愚者もたいして変わらない。

この1冊から手に入れた視点

この1冊をより楽しむための視点、この1冊から手に入れた視点は次の3つ。

①なぜ本庄は問題を一言も聴くことなくクイズに正解できたのか?

早押しクイズで問題文を一言も聴くことなく正解を導き出すことは不可能だ。だが本庄はそれを実現した。それも三島の目の前で。

この謎を解くことに三島は執着していく。

三島は本庄の思考を追う。
今までに本庄が出たクイズ番組、それだけじゃなくどんな子供だったのか?本庄の過去にまでさかのぼる。

「世界を頭の中に保存した男」という肩書きを与えられた本庄絆は、本気で世界を頭の中に保存しようとしたのかもしれない。本庄絆という人間のことを、少しだけ理解したような気分になる。

「君のクイズ」(著:小川哲)

天才の思考を追っていく、このクイズを解くために。

②クイズというスポーツの勝ち方とは?

クイズは知識の量を競うスポーツではない。クイズというスポーツに勝つためには問題文を聴きながらそれと同時に"確定ポイント"を見極めること。そこにたどり着くまでのスピードが勝負の分かれ目となる。

例えば次の問題では、

Q.CNSと略されることもある三大学術誌とは、『セル』、『ネイチャー』となんでしょう?

「君のクイズ」(著:小川哲)

答えは「サイエンス」。
だがその答えより重要な確定ポイントは次だ。

Q.CNSと略されることもある三大学術誌とは、『セル』、『ネ

「君のクイズ」(著:小川哲)

「ネ」である。ここがこの問題の確定ポイント。
この「ネ」を聴いた段階で3つある選択肢のうちたった1つだけが残る。
答えがここで"確定"している。だからここがこの問題の確定ポイントになる。

さらにそのスピードを上げることもできる。
この確定ポイントをもう一段階早く読むためにはこうなる。

Q.CNSと略されることもある三大

「君のクイズ」(著:小川哲)

ここだ。「三大」が確定ポイントの先にある確定ポイントとなる。
この時点でケアンズ国際空港と中枢神経の略という選択肢はなくなり、学術誌だけが残る。そしてCNSという並びから答えが「サイエンス」たったひとつであることも読める。

不確実性を減らし確実性を上げる。その反比例する要素の最適なバランスとなるポイントを瞬時に図る。それがクイズという頭のスポーツだ。

読み上げられた問題文が耳に入ってから、その答えを口から出すまでの数秒間。その数秒間をどれだけ縮められるか。そこだけに頭のすべてを集中させる。それがクイズの勝ち方だ。

③クイズは目的か?それとも手段か?

僕にとってクイズをすることの一番の魅力は、クイズが僕の人生を肯定してくれることにあった。どんな人生であれ、それが間違いではなかったと背中を押してくれることにあった。

「君のクイズ」(著:小川哲)

人生で唯一の彼女だった桐崎さんと出会いのきっかけもクイズ、仲良くなったきっかけもクイズだった。

その桐崎さんとの思い出あるから、まったく興味がなかった刀剣に関するクイズ、ゲームに関するクイズ、アニメに関するクイズに正解することができた。

クイズに向き合うことで、正解することで、人生が回っていく。

三島にとってクイズは人生でありすべてだ。
では本庄にとってクイズとは何か?
物語の終盤で三島は天才の思考の確定ポイントにたどり着く。

”天才”という偶像のつくり方

結論、天才は存在する。
ただ天才は、その天才ではない人の頭の中に偶像<フィクション>として存在している。

同じ場所、同じゲーム版にいるからといって相手が同じゲームをしているとは限らない。天才と呼ばれる人は周囲がどんなゲームをしているに関わらず、同じゲーム版の上でまったく異なる”自分だけのゲーム”をプレイしている人のこと。

本人からすればそれは天才だからではなく、その場、その瞬間で最善の判断をしているだけ。

解くべきクイズは「クイズとは何か?」ではなく「君のとってのクイズとは何?」で、出すべき答えはたったひとつのとてもシンプルな答えだった。

シンプルに考えよう。そうするだけで人生がラクになる。

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