作っては壊す、それが人間関係だもの【読書記録】スクラップ・アンド・ビルド
原因はよくわからないけど、なぜかいろいろうまく行かない。
狭くなった視界、凝り固まった考え方、頭の中に暗雲が漂っている感じ。
頭の中のその部分をいったんクリアにしたかったら何も考えずに本を読むのが一番。
そういう時は私は本を読みます、特に芥川賞にノミネートされるような作品、純文学を読むことが多いです。
読み終わった後はビジネス本、自己啓発本よりもずっと頭がクリアになってスッキリします。
でも芥川賞って難しくない?読みづらくない?
って感じたら羽田圭介さんの芥川賞受賞作「スクラップ・アンド・ビルド」を手にとってみてください。
もうびっくりするぐらい読みやすく、情景や登場人物がすっと頭の中に入ってくる。
あっという間に読み終えてしまいます。
<こんな人にオススメの1冊>
・最近うまくいかない、どうしたらいいかわからない、この暗雲から抜け出したい
・コミュニケーションは難しい、コミュニケーションに対して苦手意識がある
・凝り固まった頭を柔らかくしたい、狭くなった視界を広くしたい、頭の中をクリアーにしたい
このnoteでは、書評を中心に読書に関する記事を発信しています。
本を読んだことで発見したことを整理しながらそれを記事にまとめて発信していきます。
ぐちゃぐちゃになった頭の中を読書で整理してみると、それだけで人生がラクになります。
どんな物語?
このスクラップアンドビルドは、健斗と健斗と一緒に住んでいるじいちゃんの物語です。
主人公の健斗は28歳の独身。
勤めていたブラック気味の企業を辞め、今は就活と資格の勉強をしているフリーター。
一方のじいちゃんは86歳で、健斗がいないと生活をすることができない要介護者。
「老人世代のクレジットカード利用の支払い役を担わされてたまるか!」
高齢化社会に対する若者の不満を代弁しながらも、
再就職も資格の勉強はそれほどはかどらず、
二度とは戻らない20代の時間だけが虚しくも、ただそれだけが確実に過ぎていく。
使わない機能は衰える
「じいちゃんはもう死んだらよか。早く迎えが来てくれることば祈っとる」
毎日弱音をはくほどに身体は弱りきっているがとはいえすぐ死ぬことはなく、
そんな終わりがない生活を続ける中で健斗はじいちゃんの願いを叶えるべくある計画を発動させます。
それは、その言葉通りの願いを叶えるべくじいちゃんに苦しみのない穏やかで「尊厳ある死」を与えること。
具体的には過剰すぎる介護を与えること。
「使わない機能は衰える」
小さなこと、かんたんなことさえもじいちゃんから奪うことで、
じいちゃんを動けなくし、考えなくすることで、身体も脳もいっぺんに衰えさせるという計画的衰弱死。
そのために健斗はじいちゃんの介護に全力をつくします(就活はどうした???)。
そのギョッとする計画と、その計画を合理化するための健斗の理屈の組み立て方がこの作品の魅力。
高齢化社会、介護、ヤングケアラー。誰もがわかっていて、誰もが当事者となりうる社会の重いテーマをストレートに扱いながらも、それほど暗くはなく、全体的にはクスッとシニカルに笑える作品です。
コミュニケーション ≠ わかりあえる
そんな健斗の思いとは裏腹に、物語の進める中でじいちゃんは高齢者、介護者、弱者というラベルでは捉えきれない多様性も発揮してきます。
けっして高齢者 ≠ 弱者ではない。
コミュニケーションというのは他者とわかりあうことではなく、このような一方的な思い込みや決めつけで構成されているのではないか?
この本を読んでいるとそんな気がして少しラクになります。
一方的な思い込みが、スクラップ(破棄)されては再びビルド(再構築)されていく。
コミュニケーションはただその繰り返し。
感情やその感情によって突き動かされて出てきた行動があって、
それが後付で人と"わかりあえた"といったラベルを貼り付けられたり、貼り付けられなかったりしている。
だから狭くなった視界を広くする、凝り固まった考え方を柔らかくする。
一方的な思い込みや決めつけをしていってOK、それをスクラップしてもう一回ビルドしていけばOK。
今の自分が感じていることや思っていることの半分は本当で、残りの半分はそうじゃない。
これぐらいのバランスの方がラクで丁度いい。
人生をラクにするためにスクラップアンドビルドしたかったらこの「スクラップ・アンド・ビルド」はオススメの1冊です。
【著者情報】
羽田圭介 (作家)
・2015年「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞受賞(又吉直樹『火花』との同時受賞)
・明治大学在学中に「黒冷水」でデビューし第40回文藝賞を受賞
・筋トレが趣味
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