幻の脚本が暴く、美しき狂気|原田マハ『サロメ』を読む
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今回は、
原田マハさんの『サロメ』の感想記事です。
原田マハさんは、
アートと人間ドラマを融合させた作品で知られる作家です。
実在の絵画や画家を題材にした、
アートミステリーを多数執筆しています。
私は今まで、
『楽園のカンヴァス』
『暗幕のゲルニカ』
『たゆたえども沈まず』
の3冊を読みました。
いずれも、実在の画家、アンリ・ルソー、パブロ・ピカソ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホについて深く掘り下げ、フィクションとリアルを織り交ぜながら、アートミステリーを作り上げています。
原田マハ『サロメ』は、ビアズリーの幻の挿絵を巡り、芸術家たちの愛と葛藤を描くアートミステリーです。
あらすじ
現代のロンドン。
日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、
ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受けます。
この戯曲は、若き画家オーブリー・ビアズリーを世に送り出し、
彼の挿絵で一躍有名になりました。
ビアズリーは、18歳で絵を描き始め、
ワイルドに見出されるものの、
肺結核で25歳で早逝。
英語訳出版には、
ワイルドとその恋人ダグラス、
ビアズリーの姉メイベルとの複雑な愛憎関係が絡んでいました。
退廃的な時代背景を描き、美術史の謎に迫る傑作長編。
サロメの挿絵とその印象
サロメの挿絵は、以前から目にしたことがありました。
どこかエドワード・ゴーリーにも通じる、
不気味で、でも目をそらせない、
「見てはいけないが、見てしまう」
そんな罪深さを感じる絵。
その作者が、今回の主役の一人であるオーブリーでした。
オスカー・ワイルドと退廃的な世界
原田マハさんの『サロメ』は、
そんな挿絵の向こう側にあった、
狂気や退廃を、鮮やかに描き出します。
オスカー・ワイルドという名前は、
英文学の作家として知ってはいたものの、
学生時代はシェイクスピアやアメリカ文学を中心に学んでいたため、
深く知ることはありませんでした。
「幸福な王子」など、児童文学の作家という印象さえありました。
まさか、あの作品と同じ作者が、
こんなにも退廃的で血と性愛に満ちた脚本を書いていたとは、驚きでした。
芸術に呑み込まれていく人々
この作品はフィクションですが、
19世紀末の芸術界の退廃と熱狂に呑み込まれていく、
若き天才オーブリー・ビアズリーや姉メイベルの姿が、
生々しく描かれています。
ワイルドは、まるで芸術に取り憑かれた怪物のよう。
彼の魅力に引き込まれていく二人の姿は、
まさにサロメの物語と重なり、
読者までをも物語の中に引きずり込んでいきます。
現代と過去を結ぶ謎
現代のパートは、
短いプロローグとエピローグだけなのですが、
発見された脚本と挿絵が、どう過去の狂気と結びついていくのか、
その謎がじわじわと解き明かされていく過程は、
先を知りたいような、でも知りたくないような、
そんな相反する気持ちを誘います。
作者の力量と熱量
あらためて、
サロメという物語の奥深さを、
新たなフィクションに落とし込んだ、
原田マハさんの力量と熱量に、深く感動しました。
膨大な文献からのリサーチと、
プロのキュレーターである原田さんの専門性なしには
成り立たない作品だと思います。
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