三題噺ショートショート_チキン
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、きかん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼四朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、気が済むのよね?
ブラックホールよりも重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「チキン」まいりましょうか。

学生の時。試合前の食べ物には拘りがあった。
トンカツを所望したはずなのに、弁当に入っているのはチキンカツ。
お袋は言った。
「豚より鶏が安いのよ」
大学を出て。休日は遊んでいられると思ったのに草野球チームに入れられた。
だけど、人生初。チームに女子マネがいて。張り切って練習に行くようになった。
意を決して中古車をローンで手に入れ。お気に入りのチャゲアスをかけまくれるCDチェンジャーを装備した。
優勝がかかった地域リーグ最終試合。帰り道、気持ちを伝えようと思ってたんだ。
ところがエースの先輩が仕事のトラブルで来れなくて俺がスクランブルで先発。
今、車内でひとり、街の弁当屋の唐揚げ弁当を食べてる。
コンコンと窓をノックする音が聞こえる。
横を向くとニコニコ顔の警察官が言った。
「ここ駐車禁止。降りてきて貰えます?」
切符を切られて、孤独なドライブもそこそこに寮に帰ってきて。深い溜息をついて独り言ちた。
「俺ってつくづく、やっぱ、チキンだわ」

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
そうなの?三題噺?落語の?ショートショートの?書いたの?また、下手くその?みんなに迷惑じゃん!じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しと参りましょうか。ぺぺペン、ペンッ!
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

