水滴
ずっと前から、さっちゃん(注1)が毎日のように気になって気になって仕方がないことがあったのである。
それは、洗面所の蛇口の水滴のポタポタである。

ずっと、落ちていた。1年や2年などというスパンではなく。ここ数年以上のレベルで。
ご存知のように、さっちゃんの拘りポイントは、ポイ活とクーポンと節約であり。
この水滴の無駄は、節約の大原則に触れる。
リモートワークをしたある日の夕方、たまたま早く帰宅してきたさっちゃんが突然、フロントに行こうと言い出した。
「コジくん、、今日は休みだから時間あるでしょ、夜」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
いや、リモートワークというのは、休みじゃないけどね。
そしてフロントで勝手に話を進めてしまい、この水滴を修復するためのカートリッジと工具一式を借りてきたのである。
フロントの管理人さんは長く懇意にしている。凄く丁寧で優しい人で。事細かに手順と注意点を教授してくれた。
で、最後に言われたのである。
「コジさん、ネジの頭を潰したら、大変なことになるからその危険を感じたら、潔く撤退ですよ!」
そして帰宅して直ぐに、作業に取りかかり。ネジが硬くて回らず、即座に断念した。
このうえは、業者に依頼して。そしてお金を支払うことになる。
「コジくん、敏腕エージェントじゃないの?簡単に諦めていいの?そんなに簡単に?」
なんのはなしですか。

翌日業者に依頼して。週末直ぐに来て工事をしてくれた。
なんと、1時間かかったが……。ネジは結局回らず、すべての部材を取り替えることになった。ネジを回すチャレンジに、40分以上かけて必死にやってくれた。
フロントで部材の返品をし、事の次第を会話してみた。
「コジさん、コジさんでこの、17年で2例目です。総取っ替え。諦めて正解でしたね。英断です」
そんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
「コジくん、で、どんだけ?修理費?」
「え?1万7千円……。」
「あのさぁ……役に立たないエージェント……。ま、3倍返しで許すわ」
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。


