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宅配

宅配はもちろん、昔からよく使う。そして昔から通販サイトもよく使う。最近は置き配になり、玄関ドアの前にちょこんと荷物が置いてある。通販サイトでは商品購入時の遷移画面に、置き配が通常設定になるとしっかり書いてある。

考えようによっては購入物が無造作に玄関先に置かれているのは不用心だし、通販サイトや宅配業者側の論理の効率最優先の仕組みの一環のように思える。ただ、今のこのご時世で、見知らぬ配達員との対面の荷物の受け取りに抵抗がある人がいることも、また、事実なのだろう。

先週、ようやく重い腰を上げてイスを通販サイトで購入した。テレワーク主流の時代になるとは思わず、長男が小学校の時から使っている、ガタガタのイスを使い続けていたのだが、それをとうとう買い換えた。

イスはタイムセールの売り出し品を購入したが、組み立て式で荷姿は大きく重く、持ってくるのは少し大変だろうなぁ、これは置き配は出来ないなぁと、ちょっと頭をかすめた。

ポチッ。

日曜日が配送日だったが、いろいろな雑事があったため、たまたま配送時間に間に合わず、その日は段取り不足で申し訳なくも持ち帰り荷物としてしまった。

配達員に悪かったなぁと反省しつつその日のうちに、翌日の再配達時間を午前中に指定し、配達時間には他用を入れないように家内とスケジュールを合わせた。

ポチッ

翌日、宅配業者がやってきた。正面玄関からのインターホンで確認する。配達員は若者だった。

昨日は悪いことをしたなぁ。

私が言うと、家内が言った。

熱いから、冷たい飲み物、一口、出そうかな。

えっ?

そう聞き返した私の目は少し潤んでいたと思う。なんて優しい家内なんだろう!

手際よく家内がカルピスを作る。紙コップに入れ直して、

無理に飲ませてはいけないからねぇ。気を遣って渡してね。

家内が言い終わるか終わらないかのうちに、その青年は、やってきた。

ドアを開けると、マスクをして多少息を切らしている青年が伝票を持って立っていた。台車には大きな荷物。私のイスが一番大きい。他にも様々多数の荷物を載せてある。

私は、荷物を受け取ると、紙コップを差し出して青年に言った。

もしも良かったら、飲んで。喉、潤して下さい。

すると青年は、驚きながら、

えっ、良いんすか?

良いですよ。暑すぎるでしょ。荷物も大きかったし。

えっ、このご時世に。

そう言いながら、青年は既に手をこちらに伸ばしかけている。

そう、このご時世に。毒も、コロも、入ってないですよ。たぶん。

手渡すと、青年は一礼をしてから、一気に飲み干した。

あざっす!

昨日もあなたが?ごめんなさいね。

と私が言うと、

別の人間です。昨日は。

そうですか。昨日の人、残念!

俺、ラッキーっす。

紙コップの返しを受け取り、私は、言った。

暑すぎるから、熱中症に気をつけて下さい!

青年は、もう一度、

あざっす!

そう言って、2人でグータッチをすると、青年は台車に手をかけ、踵を返して走り去っていった。


家内との完全連携プレーで、ちょっと清々しい1日になりそうだなと自己満悦に浸りながら机に戻ると、そこにはちょこんとカルピスが置いてあった。

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