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一本
ついこの前の秋の展示会の時。出展しているブースで先輩に言われた。
「コジ、会社辞めたのかと思った。元気で良かった」
よくよく先輩に聞くと、毎朝、同じ電車に乗っていたのに急に春から会わなくなって心配していたんだと。
そう言えば昨年度までは、毎朝、同じ電車で。挨拶をしていたと思い出した。
そして、先輩に言ったのである。
「電車、1本早めたんです。ご心配をおかけしました」

「いや、コジが元気なら良いんだ」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、気遣ってくれる先輩が会社にいて、嬉しいな。
確かに、その通りだ。
その先輩も、あと2年。私も、あと4年を切った。その後は、働こうにも働けない。
そして本心は。
私は、実は、働きたくない。
なんのはなしですか。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
「コジくん、ローンが返済できて、老後が安泰なだけ余裕がある人だけよ、そんなこと言えるのは。仕事もマッサー(注1)も、まだまだ、ちゃんとやろうか。
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。


