一平ちゃん、のり塩ポテチ、ハーゲンダッツ
会社を辞めたい。
(あれ、好きな食べ物の話じゃないの?)
私が現在勤めている会社は、社員が15人ほどの小さな家族経営の会社で、社長と、社長の奥様が仕切っている。
私が入社してから13人が入れ替わった。
幹部以外がとにかく全然続かない。
会社の人間や、やり方に不満を持った社員の愚痴を聞きながら、これまで13人を見送った。
新しい環境に飛び込んでいく人たちを眺めていたら、早くも古株になってしまった。
事務員として入社し、もうすぐ勤続4年目に突入する私は、たったの4年目で、最年少ながらお局(?)をしている。
人が辞めていく会社にはそれなりの理由がある。
今の私の職場にもそれなりの理由があるし、
私もそれなりの理由で辞めたいと思っている。
(あれ?ペヤングは?)
私より前に入社していた事務員は全員辞めた。
退職代行を使って、突然いなくなった人もいた。
私はみんなが辞めていく理由を知っている。
そして、私が辞めたいと思っている理由も同じような理由だ。
みんなが辞めて、勤続期間が一番長くなった私に、いわゆる面倒くさい仕事が飛んでくる。
誰もやったことがない仕事。
前の人が飛んで、中途半端な状態の仕事。
整理されていない書類管理の仕事。
誰がやるか曖昧な仕事。
何度催促しても返事がもらえなくて進まない仕事。
月に数回しか事務所に来ない上司(社長の奥様)は、いつも涼しい顔で昼頃出社する。
高級そうなお菓子の差し入れと共に、
「夏子ちゃんこれやっといて〜」
と面倒くさい仕事を、明るい声で回してくる。
やり方がわからないので、
「これをどうしたらいいですか?」
と聞くと
「ちょっと調べてみてー」
と言われる。笑
そんな環境の中、なぜかしぶとく働き続けている私は、回ってきた面倒くさい仕事に順応し、難なくこなせるようになってきた。
同時に、上司から絶対的な信頼も勝ち取った。
好かれたところで都合良く使われるだけなのはわかっていても、自然と信頼を得るための行動をしてしまう。
私はどうしようもなく人たらしだ。
「そんなんだから、みんな辞めるんですよ」
積み上げてきた信頼を一瞬で壊す言葉を、
これまで何度も飲み込んできた。
いつか私が辞めた時に
「夏子ちゃんがいなくなって大変だ」
と思わせるために、私は誰よりも仕事をこなしている。(そんなんだから信頼されてしまうのだ)
人たらしな私のささやかな復讐。
私が辞めても会社は回り続けるし、復讐しても心は晴れないこともわかっている。
でも、今はこんな不純な動機で、仕事をダラダラと続けている。
こんな不純な動機で、忙しそうにしている後輩の仕事を手伝ったりもする。
そして、その忙しそうな後輩もまた今月末に退職する。これで14人目。
早くここから脱出しなきゃ。
わかってはいるが、動けない。
私が会社を辞めたら、他の誰かが私のポジションにつく。大変な思いをするのは、上司ではなく、私の後に入ってきた後輩たちだ。
しかし、一緒に働いてきた後輩たちが苦しむことは、私の責任ではない。
そこまで考えられるほど私は優しい人間ではない。
だったら辞めれるじゃん。
そうなんだけどね〜〜〜〜。
一生懸命仕事をしながら、一生懸命仕事を辞めることを考える。
考えていたら、今日は「ご褒美デー」だということに気がついた。
「ご褒美デー」とは夫が飲み会や出張で家にいない日のこと。
体に悪い美味しい食べ物を買いまくって、夜はテレビを見ながらダラダラする。
今日の晩御飯は、
一平ちゃん、のり塩ポテチ、ハーゲンダッツ。
(ここで出てきたァ!やっとタイトル回収!)
自由に好きなものを買って食べられるのも、自分の収入があるから。
会社を辞めてもこれくらいは買えるんだろうけどね。そうなんだけどね〜〜〜〜。
買い物を終え、帰宅する。
手を洗い、早速一平ちゃんの蓋を開け、ソースらを取り出す。
お湯を注いで3分。
湯切りをすると、体に悪そうなインスタント麺の匂いが辺りに広がる。
控えめに「マヨビーム!!!」と声に出しながら、雑にソースをかける。
3分で出来上がる晩御飯のおかげで、私の夜の自由時間が増える。
一平ちゃんを食べながら、同時にポテチを開封し、箸でつまむ。そしてその流れでハーゲンダッツも開ける。甘いのしょっぱいの。交互に食べる。
夫がいない日は、バランスなんて考えない。
お行儀なんて考えない。
夫が家にいる日は楽しい。
夫が家にいない日も楽しい。
結婚生活って、1人も2人も楽しめるお得な生活だなと、なんだかご機嫌になってくる。
こうやっていつのまにか話が逸れて、私はいつまでも会社を辞められない。

ありがとう。
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