不動産と人権に関する話題 002
今回は賃貸住宅について考えてみます。
家賃相場が上昇を続ける一方で適正な所得分配が実現されていない現在の日本において、適切な住まいを確保することは容易ではなくなっています。
相場は需要と供給のバランスで成り立つものとされています。総務省の住宅・土地統計調査を見てみましょう。
2003年は5389.1万戸だった住宅総戸数が2023年では6504.7万戸と1115.6万戸増加しています。そのうち2023年の空き家戸数は900.2万戸です。
一方、2003年は4725.5万世帯だった世帯数が2023年では5621.5万世帯と896万世帯増加しています。
世帯数を上回る住宅戸数となっています。この数字だけを見ると供給過多の状況です。もう少し詳しく見るために空き家の状況を確認してみます。
空き家のうち55.9%の502.9万戸は共同住宅で、そのうち78.5%の394.7万戸が「賃貸用の空き家」となっています。ここでも数字だけ見ると供給過多です。
世帯数を超える住宅戸数、そして空き家の4割は賃貸物件。供給過多の賃貸住宅市場なのに、それでも賃料を上昇させている要因は何なのでしょう?令和7年版土地白書を確認してみます。
不動産投資市場の動向は、不動産証券化市場の令和6年3月末時点の資産総額は取得価額ベースで約31兆円、そのうち住宅の割合が20.6%となっています。そして不動産業向けの貸出状況は、令和6年の新規貸出は15兆5519億円、貸出残高は106兆7485億円となっています。海外マネーについて見ると、海外投資家による不動産の購入額は令和6年通年で9397億円、そのうち国別投資額の割合はアメリカの投資家が最も多く34%を占めます。
不動産投資では家賃収入が配当の原資です。高い利回りを約束するには高い家賃を維持する必要があります。現在の賃貸住宅は金が金を生む金融経済の動向に支配される側面もあるようです。
SDGsには「住み続けられるまちづくりを」という目標(Goal)があり、さらにその実現のための具体的な目標(Target)のひとつに「2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する」が挙げられています。「人びとを貧困や欠乏からときはなち、地球を守ることを決意する」SDGsの目標と、実需と乖離し高騰する賃貸住宅の家賃は相容れないものです。
近年、企業経営に人権デューディリジェンスという考え方が浸透してきています。人権の尊重も企業の役割としてみなされる時代です。家賃相場はその国の人権の指標のひとつとも言えるのではないでしょうか。
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