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ジャズ記念日: 11月2日、1962年@ニューヨーク “Monk’s Dream”

Nov. 2, 1962 “Monk’s Dream”
by Thelonious Monk Quartet (Thelonious Monk, Charlie Rouse, John Ore & Frankie Dunlop) at Columbia 30th Street Studio, NYC for Columbia (Monk’s Dream)

モンクは崩しと揺らぎの人というイメージがあります。リズムや和音を意図して変則的に崩して強烈な印象を残すものの、それは独自のタイム感と調和感があって、揺らぎとして表出するように感じられるからです。その揺らぎの最たる例が、シングルトーンで不規則に叩く、0:31からの表現で、子供がおもちゃのピアノで実験するかのような遊び心があります。

あまりにも個性が強いので、マイルスから自分のソロの間は演奏を控えるようにと言われたというのは有名な話ですが、それも納得出来るほど場を支配してしまうユニークな演奏をする証でもあります。

ここでは、リーダーとなったモンクの意を汲んだメンバーによる伴奏の極みに耳を傾けてみてください。鬼才モンクの尋常ならぬ外し方、崩し方、間合いの入れ方、その全てを理解して、型にはまらない、そして遠慮しない伴奏が素晴らしいと思います。モンクがリズムや旋律を外して裏を行くとして、その更に裏を行ってバランスを取る事でモンクの世界観を創り出せるのは、並々ならぬモンク愛がメンバー間で共有されているからだと察します。

テナーサックスのチャーリーラウズはモンクの奇抜なバッキングを受けながら呼応する形でソロを開始、その奇想天外さを踏襲したトリッキーな展開をして行きます。何故か1:38から一分半近くモンクは登場せず、トリオ演奏になっていますが、その不在を感じさせないリーダーの意図を汲んだ演奏に脱帽です。モンクがこの手を休めている間に何をしているのか想像してみるのも乙な楽しみ方です。ラウズの演奏を純粋に聴き入っているのか、はたまたタバコを燻らしているのか、立ち上がって踊っているのか、はたまたその全てでしょうか。予測不能なので想像力が膨らむところが、モンクを聴く楽しみでもあります。

見つめるモンク
タバコを燻らすモンク
踊るモンク(そして、独特の怪しいステップ)

本作の翌年3月10日の同メンバーでのブリュッセルにおける本曲のライブ映像に一つのヒントがありそうです。

この演奏では、モンクに良くある夢遊病者的なフラフラ歩くパターンでした。まさに曲名「モンクの夢」の如く夢見心地なのか、それともお決まりの演出なのか、本能に赴くままの行為なのでしょうか。実際のレコーディング現場でも同じ光景だったのか、も気になるところです。

そして、この映像を見て改めて気付いたのは、伴奏者がリーダーのモンクを大して見ていないことです。むしろモンクに崩されないように自分の演奏に集中しているように見えます。立ち上がってピアノから離れてふらふらするモンクが居ながら、ラウズは自分のパートをやり遂げると意に介さずにソロをやめ、それに促されるようにモンクがピアノに戻ってソロを弾き始めるところが象徴的な場面です。

伴奏者がモンクの強力な個性に引きずられることによって演奏のバランスを崩さないようにするのと、モンク自身も自らの演奏(個性)を引き立てる為に、敢えて伴奏者に進行やリズムは保つようにとの指示を出しているとも解釈出来そうです。

とはいえ伴奏者も生真面目に自分のパートを譜面通りに演奏するかというと、決してそうではなくて、ピアノソロにおいて上下に揺らぐモンクの裏リズムに対して、ドラムのフランキーダンロップによる、その意図を汲んだ絶妙な合いの手をすかさず入れるといった高度なやりとりがあって、この演奏の面白さを演出しています。両者の音楽的な対話は、本人達は単に音楽上のやり取りや駆け引きと思っているかも知れませんが、聴衆にとってはそれが遊び心の側面を深めて味わう唯一無二の楽しさがあります。

これだけモンクがテンポを崩しても音楽が崩壊しない理由のひとつには、ジョンオーレの強固で堅実なベースがあると考えます。調べてみたらオーレは、実力派のベース演奏家を多数輩出しているフィラデルフィア出身でした。以下記事でも触れた通り、同地を含むペンシルベニア州出身の優秀なベーシストが何と多いことか。

11月の録音曲の選定候補としては、オルガン奏者ラリーヤングの1965年11月10日録音”Unity”のアルバムに収録されていた好演奏と、どちらを選ぶか相当迷ったのですが、作曲者によるオリジナル演奏を優先しました。その演奏ではドラムのエルビンジョーンズとのデュオ演奏で、ヤングもモンクのスタイルを踏襲した崩しが耳心地良い内容です。

最後に、本録音を行った名盤頻出のニューヨークに存在していた名門スタジオ、”The Church”の紹介を含む記事をどうぞ。

崩しや揺らぎを楽しむ一日をお過ごしください。

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