305:2年ぶりの家族
・2年ちょっとぶりに帰省し、久々に母と兄との時間を楽しんだ。
・なんというか、自分は拗ねていたのだな、と感じた。
・中学生、なんなら小学生くらいの頃までに戻ったような感覚で家族と過ごした。
***
・自分と血の繋がった母と兄であるので、言わずもがな社会にはうまく適合できていないようであった。
・管理栄養士の母は保育園で給食を作っていたはずだが、職場の人間関係がうまくいかず辞めていた。
・もう還暦を過ぎているので、今後は何か働けそうなことがあれば働くかもしれないくらいのスタンスで、少ない年金で慎ましやかな生活を送っていた。
・兄はwebデザインに関する職業訓練学校を卒業したあとデザイン事務所で働いていたはずだが、職場の人間関係がうまくいかず辞めていた。
・今はゲームのデバックのアルバイトをしながら、webデザインは副業的に少しやったりやらなかったりする、といったスタンスで過ごしていた。
・特に思うところは何もない。家族だなぁ、といった感じである。
・生活ができる程度には生計を立てれているのなら、その時点でもう立派だろう。
***
・兄がwebサイトを作る技術をきちんと持っていることに、少し驚いた。
・元々兄は外食や通信小売などの接客・販売職を転々としていたが、思うところがあったようで一旦仕事を完全に辞め、職業訓練学校でデザインの勉強をし、デザイン事務所に入った。
・そしてその後、数ヶ月程度とわりと短期間で離職している。
・職業訓練学校はハローワークが主催している無料のものだし、それまで特にデザインに関わる仕事に携わっていなかったので、まぁイラレやフォトショがちょっと触れるくらいになったのかな、程度に思っていた。
・だがこれまでの制作物を見せてもらったら、自分がかなり舐めていたことに気付かされた。
・というのも、母の通っている整体院のホームページを雀の涙ほどの金額で請けて制作したらしいので、どんなものかと見せてもらったのだ。
・かなりしっかりとしたホームページで、本当に驚いた。
・LPみたいな一枚ものではなくきちんとサイトマップ(note上の定義ではなく、ホームページ上での定義)があり、それぞれのページはしっかりとした役割を持っていて、それでいて「予約に繋げる」ためのサイト構成やコンバージョンポイントが設定されている。
・ホームページ制作を主業としている企業が作ったといっても全く過言ではないレベルのものを、兄はひとりで制作していた。
・しかもフルスクラッチ。WordPressやWIX、Studioといったノーコードツールではない。
・聞けば、最初に話したいことを聞いた後ワイヤーフレームを作って合意を取り、その後カンプを作って合意を取ったのちに、コーディングまで自分でして本番環境を作ったとのこと。
・兄はひとりで顧客からヒアリングをし、デザインをし、コーディングしていた。
・一端のwebデザイナー過ぎる。すごい。
***
・本当にすごいと思ったのですげーすげーと言いながら兄の話を聞いていたら、母の「おぉ、形になってきた!」という声が聞こえてきたので、何事かと母の元へ行ってみた。
・すると母は編み物をしていて、スマートフォンか何かを入れるためのバッグのようなものを作っていた。
・自分は編み物にはあまり詳しくないが、それは結構頑丈そうに見えて、綺麗な形をしていた。
・完成したら使い勝手が良さそうだった。
・そういえば自分はこういう、作り物が好きな一家に生まれたのだなと思った。
***
・小さい頃の自分は、兄にとにかくついていっていた。
・5つ年が離れているのもあり、その頃の自分にとって兄が教えてくれることはどれもがすごく見えた。
・小さい頃の自分は、母がとても好きだった。
・自分は内弁慶で、いつも母の後ろから世界をのぞいていた。
・中学に上がり、親が離婚してからは自分が前に出なければいけない場面も増え、強がらざるを得ない状況がしばらく続いた。
・そうやって中学・高校生活を送っているうちに、いつしか母や兄を小さく捉える自分が出来上がっていった。
・あの頃教えてもらったこと、意外と大したことなかったじゃん。そんな気持ちで過ごしていた。
・拗ねていた。擦れていた。
・拗らせたまま、大人になった。
・自分は関西のそこそこ名も知れている大学を出て東京でサラリーマンをしている。その傍ら、母と兄は地元の片田舎に留まり続けている。
・自分は彼らに比べて成功している。馬鹿みたいだが、おそらく無意識的にそう驕っていた。
・東京などという掃き溜めを詰め込んだような場所で過ごしている自分の方が小さいではないか。
***
・今回の帰省ではきっかけはわからないが、自分は母や兄の言葉を不思議と素直に受け入れていた。
・まるで昔に戻ったような感覚で、すごいな、すごいな、と思いながらいろいろな話を聞いていた。
・自分もこの一家に恥じぬよう、頑張ろう。そう思える、今の自分にとって確実に必要な帰省だった。
***
・余談。
・ぬるっと話に出てきたが「母の通っている整体院のホームページを兄が作った」という話自体、すごくないだろうか。
・東京ではあまりなさそうな話である。そのような文化のある地域は、尊い。
