271:知識の薄膜の上を歩く
・自分の知識は薄っぺらいな、と思う。
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・自分はよく思考をする。
・自分のこと。人間のこと。社会のこと。
・通りすがりの会話、ニュースの見出し、動画に出演している人物の言葉、読みかけの小説の一文。
・自分の世界で起きた出来事を、自分の知識と照らし合わせて言葉にしようとする癖がある。
・そのような出来事の断片が心の中で混ざり合って自分なりの思考を生み、言葉として出力する。
・その行為に特に意義はない。ただ、そういった性格なのである。
・時折、照らし合わせるべき知識の薄さに落胆し、出力物に何の価値もないと絶望する。
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・先日、定期的に視聴しているYoutubeチャンネルで人生相談のような企画があった。
・視聴者から悩みを募集し、そのチャンネルの出演者5人がそれぞれの価値観に照らし合わせて、ユーモアを交えつつそこそこ真面目に回答していく。
・隠す必要もないのでリンクを置いておく。オモコロ。
・コンテンツのテイスト上ユーモラスに富んだ回答を演者たちはしていて、エンタメとしてとても楽しめる動画であった。
・ただ人間関係などに関する悩み相談に対する演者たちの回答の中で、彼らのそれまでの人生で培ってきた価値観から出力される言葉があり、それに少し興味を思った。
・内容が興味深いのではなく、それを聞いた時に生まれた自分の感情が興味深かった。
・真剣な相談内容に対して、演者たちは真摯な回答を返していたが、一部は同意できるもののすべては同意できない、そんな感情が自分の中で生まれた。
・彼らは彼らの人生をしっかり歩んでいて、そこから出力される言葉には強い説得力を感じたけれども、自分とは違う意見だな、と思うこともあった。
・ただ「自分とは違う意見だな」というその思考は、あくまで自分のこれまでの28年間の人生に照らし合わされたうえで出力されたものであり、それに説得力があるのかどうかはわからなかった。
・彼らは自分よりも歳上で、影響力を持っていて、さまざまな障壁を乗り越えてきている。少なくとも現時点では、自分の解は彼らの解よりも弱いだろう。
・「なにを言うのか」ではなく「誰が言うのか」が、真実なのである。
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・その「誰」の説得力を上げるためには、自分が厚みのある人生を送り、影響力を持たなければならない。
・そしてその道を歩んでいくためには、自分なりの真実を出力し続けていかなければならない。
・その生き様が良いのかどうかと問われると、わからない。
・ただそれが━━知識の薄膜の上に刻まれた足跡が、自分という人間の小さな意地であり、ささやかな生のかたちなのだろう。
