337:吾輩はだらしのない男である。名前すら付いている。
・約束を反故にし過ぎている。
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・念願叶い東京から関西への凱旋を果たした自分は、次の仕事が始まるまでの1週間程度で、学生時代の旧友の何人かと飯を食うなり酒を飲むなりしている。
・6年間東京でふらついていたにも関わらず、快く自分を迎え入れてくれて、そして驚くほど何も変わっていない彼らとの久しぶりの会合は、それはそれは心の緩む時間であった。
・それは良いのだが、同時に自分のだらしなさを悲しく思っている。
・今のところ関西で遊んだどの約束に関しても、事前に決めた集合時間より遅れての到着をかまし、平謝りし続けている。緩みすぎだ。
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・関西は大学時代過ごした地なので、基本的に遊ぶ人は大学の頃の友人である。
・自分の地元は福岡であり、大学時代に関西に移り住んだのだが、移り住む前までの自分はとにかく約束にうるさい方だった。
・集合時間や決め事が守られないことがあれば、その相手を糾弾する。そんな性格をしていた。
・そんな性格のまま大学に入学したのだが、大学生というのは基本的にだらしがない。
・大学時代の4年間、友人と遊ぶ時に約束を反故にされることなどはザラにあった。集合時間などあったしなかった。
・いちいち指摘する方が面倒だ。次第に気にしなくなり、そして自分も同じようになっていった。
・人間は、下流に流れやすい。
・と思っていたが、気付かぬうちに自分の方がさらに下流の方にいた。
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・先日、iPhoneを新しくした。その日の夕方、心斎橋にあるAppleストアで新しい機体を受け取り、近くのカフェでSiMカードを前のものから入れ替え、手に入れたばかりのiPhone16をメイン機体とした。
・夜はなんばで数年ぶりに会う友人と酒を酌み交わす予定があった。
・自分はSiMカードのことをあまり理解しておらず、ただ抜き差しさえすれば別の機体でも使えるようになると思っていたのだが、そうではなかった。
・機体側で受け入れるための準備をしなければならないらしい。最初は電波が繋がったのだが、途中で全く繋がらなくなり、連絡も取れなくなったし自分の今いる場所がどこなのかもわからなくなった。
・駅の観光案内所に行き紙の地図を貰い、なんとか集合場所に行くことはできたのだが、集合時間は疾うに過ぎていた。
・1時間程度の遅刻であった。
・快く許して貰えたが、遅刻したのは自分のみだった。
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・また別の日、京都に住む学生時代の先輩とその奥さんと3人で食事する予定があった。
・先輩には言わずもがな、これまでの自分の人生の転換点で大きくお世話になっており、今回もかなり相談をした。
・そして奥さんの方にもお世話になっており、今回の転職における就職先は奥さんにいろいろ気を回してもらった。
・そんな大恩人と呼ぶべき先輩らが、先斗町の細道にあるような──およそ大学生の小遣いでは入ることのできない──たこ焼き屋を予約してくれていた。
・30分程度自分は遅れていった。平謝りするしかなかった。
・家で荷解きしていたら集合時間のことをすっかり忘れており、思い出してからは即座に家を出て早足で向かったものの、その時点で既に間に合わないことが確定していた。
・彼らも快く許してくれたが、優しさに甘え過ぎである。
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・そんな自分の習性はとっくに知っているのでそれ自体に対しては何も思わないが、相手方たちはみな時間をきっちりと守っていたことと比較すると少しの悲しさがあった。
・彼らの話す内容や醸し出す人柄は何も変わっていない。ただ、社会性は向上していた。
・大学を卒業してからはだいたい同じ時間を過ごしていたというのに、どこで変わったのか。環境の違い、慢心──。
・そんなことを思いながら転院先の心療内科──10年くらい前から自分は不眠症である──に向かっていると、ふとその病院名がおかしいことに気づいた。
・よく見たら東京の病院から紹介された病院名と似ているが異なる。違う病院を予約していた。
・慌てて予約をキャンセルし、本来行くべき病院の方に問い合わせると、幸い枠が空いていてそちらで受診させてもらえる運びとなった。
・病院に着き、受付を済ませるべくマイナンバーカードを差し出すと、「保険資格がないので全額自費負担になります。」と言われた。
・そういえば今は無職か。先月末で前職を退職し、今月中旬に新しい会社へ入社予定の自分は、半月くらいは保険資格がなかった。
・「すみませんが今日の予約はキャンセルさせてください。」とお願いし、入社後の日程で受診予約を取り直した。
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・徒労の多い人生だが、他人には迷惑をかけぬよう精進したい。
