🎭 Cats: The Jellicle Ball、4月7日にBroadway開幕――Black & Queerの文化がCATSの意味を丸ごと反転させてた
Andrew Lloyd Webberの超有名ミュージカルCATSが、まったく新しい姿でBroadwayに帰ってきた。
タイトルは "Cats: The Jellicle Ball"。2026年4月7日、Broadhurst Theatre(NYC)でOpening Nightを迎えた。
儲かるからリバイバルと思っていると見逃す「新しい流れ」
今のBroadwayを見ていると、たしかに回顧主義的なラインナップが並んでいる。
Rocky Horror Show(1973年初演)が今月また開幕
Beaches(映画1988年)のミュージカル化も今月
Fallen Angels もリバイバル
日本でも漫画・映画・アニメのリメイクブームが止まらないけど、あれと同じ構造に見える。「知ってるIP」じゃないとチケットが売れない、という経済的な理由が大きいらしい。Broadway はチケット1枚$150〜$300。新作オリジナルよりリスクが低い既存IPに資金が集まるのは必然、という構造。
でも、Cats: The Jellicle Ballはそのカテゴリーに入れると本質を見失う。
このCATSは「Black & Queer がBallroomと言っている」ことに意味がある
CATSという物語の構造
CATSはT.S. Eliotの詩集が原作。「Jellicle Cats」と呼ばれる猫たちが一夜に集まり、天国に昇る猫を一匹だけ選ぶ儀式——「Jellicle Ball」——を描く物語だ。
核心にあるのは選別。誰が選ばれ、誰が選ばれないか。
Ballroom文化とは何か
一方、Ballroom文化は1970〜80年代のNYC・Harlemで生まれた。
社会から排除されたBlack・Latino・QueerたちがHouseという疑似家族を作り、「ここでは俺たちが主役だ」という場として始まった。映画『Paris Is Burning』(1990)やドラマ『Pose』(FX)で知られるあの文化だ。
その名前の由来は皮肉に満ちている。"Ballroom"の語源は19世紀の白人上流階級の「舞踏会(Ball)」だ。それをBlack・Queerコミュニティがパロディ・横取りする形で自分たちの文化に変えた。「お前らの舞踏会?じゃあ俺たちもやるよ」という意思表示として。
競技カテゴリーを見るとその反骨精神がよくわかる:
Executive Realness(企業役員っぽく見せる)
Ivy League Realness(名門大学生っぽく見せる)
Military Realness(軍人っぽく見せる)
「自分たちを排除している世界の住人を完璧に演じきる」というパフォーマンスとしての反撃。
テキストはそのまま——意味が反転する
ここで戻るとこういう構図になる。
CATS(原作)Cats: The Jellicle Ball「Ball」とは選ばれし者たちの夜会排除された者たちの祝祭選別の構造誰かが天国に昇る全員が主役になれる夜文化的文脈白人クラシック演劇Black・Queer Ballroom
Lloyd Webberは意図していなかっただろう。でも**「Jellicle Ball=選ばれし者の夜会」という構造が、Ballroom文化の「Ball=排除された者の祝祭」と偶然ぴったり噛み合った。**
テキストをそのままに、意味が完全に反転する——それを発見して舞台にした、このプロダクションの本当の面白さ。
作り手も本物
演出:Zhailon Levingston & Bill Rauch(ともにObie Award受賞)
振付:Omari Wiles(House of Ricci当主)& Arturo Lyons(House of Miyake-Mugler当主)
振付師2人が実際のBallroomシーンの「House父/母」であることが、このプロダクションに本物の文脈を与えている。
おわりに
「また懐かしいIPのリバイバルか」と流すのは簡単だ。でもCATSに関して言えば、その読み方は作品が仕掛けているものを見逃す。
過去の作品を素材に、それが生まれた時代に黙殺されていた文化で塗り替える。それは懐古ではなく、歴史の書き直しに近い。
