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すれ違いのまま君は逝ってしまった

一緒に暮らしているのに、会話もない。
そんな日々が、当たり前になっていた。

失ってから気づくことばかりだった。

彼女が残した最後の言葉を、俺は一生忘れない。


👇まずは音声を再生してから、ゆっくり読み進めてください。

『すれ違い』

夫婦なのに、顔を合わすことがない。

夜勤と昼勤。

仕事の時間も休みの日も全部違う。

俺が早朝に仕事から帰ってくると妻はまだぐっすり眠っている。
昼前に俺が起きると当たり前のように妻はいない。
テーブルの上には昼食が置かれ、メモには行ってきます、の一言だけ。

まるで別世界で生きているみたいだ。

それは、結婚する前から分かっていたことだけど…。

たまに顔を合わせても何を話していいのか分からない。

新婚当初は携帯で何とか連絡は取っていた。
でも、それも最近はやり取りが無くなっている。

結婚して三年。
子供はいない。
いや、子供のいる生活が想像出来ない。

本当にこれで良かったのか…?
結婚する意味はあったのか?とさえ思ってしまう。

妻と向き合って会話したのはいつだったろうか?
このままこの生活を続けて俺達の未来はどうなっているんだろう?
何かを失いかけている気がしていた。

ポケットの携帯が鳴った。

妻の職場からだ。

職場で妻が倒れて救急車で運ばれた。
そう聞かされて慌てて病院へ向かった。

――― 脳梗塞。

医者の口から出た言葉を受け止めることが出来なかった。

妻は、そのまま永遠の別れを告げた。
それは、あまりにもあっけなかった。

何で…。

突然すぎて気持ちが追いついて来ない。
俺たちは、ほんとに分かり合えていたのか?

彼女の冷たくなった頬に手をやった。

お前は....幸せだったのか....?

涙が出ないのが不思議だった。

彼女のカバンの中に日記帳があった。

日記には、
毎日、俺の弁当のメニューが書かれていた。

俺の好きなものばかりだ。
最後の日記の終わりに、こう書いてあった。

「 しあわせ 」

涙が止まらず、俺は声をあげて泣いた。

ごめんな。

ごめん。


あとがき

当たり前に続くと思っていた時間は、
ある日、突然終わってしまうことがあります。

その時に残るのは、
「してあげたこと」ではなく、
「してもらっていたこと」ばかりでした。

この物語が、
誰かの小さな気づきになれば嬉しいです。


■音声
VOICEVOX:青山龍星

■作者
なごみ堂


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