すれ違いのまま君は逝ってしまった
一緒に暮らしているのに、会話もない。
そんな日々が、当たり前になっていた。
失ってから気づくことばかりだった。
彼女が残した最後の言葉を、俺は一生忘れない。

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『すれ違い』
夫婦なのに、顔を合わすことがない。
夜勤と昼勤。
仕事の時間も休みの日も全部違う。
俺が早朝に仕事から帰ってくると妻はまだぐっすり眠っている。
昼前に俺が起きると当たり前のように妻はいない。
テーブルの上には昼食が置かれ、メモには行ってきます、の一言だけ。
まるで別世界で生きているみたいだ。
それは、結婚する前から分かっていたことだけど…。
たまに顔を合わせても何を話していいのか分からない。
新婚当初は携帯で何とか連絡は取っていた。
でも、それも最近はやり取りが無くなっている。
結婚して三年。
子供はいない。
いや、子供のいる生活が想像出来ない。
本当にこれで良かったのか…?
結婚する意味はあったのか?とさえ思ってしまう。
妻と向き合って会話したのはいつだったろうか?
このままこの生活を続けて俺達の未来はどうなっているんだろう?
何かを失いかけている気がしていた。
ポケットの携帯が鳴った。
妻の職場からだ。
職場で妻が倒れて救急車で運ばれた。
そう聞かされて慌てて病院へ向かった。
――― 脳梗塞。
医者の口から出た言葉を受け止めることが出来なかった。
妻は、そのまま永遠の別れを告げた。
それは、あまりにもあっけなかった。
何で…。
突然すぎて気持ちが追いついて来ない。
俺たちは、ほんとに分かり合えていたのか?
彼女の冷たくなった頬に手をやった。
お前は....幸せだったのか....?
涙が出ないのが不思議だった。
彼女のカバンの中に日記帳があった。
日記には、
毎日、俺の弁当のメニューが書かれていた。
俺の好きなものばかりだ。
最後の日記の終わりに、こう書いてあった。
「 しあわせ 」
涙が止まらず、俺は声をあげて泣いた。
ごめんな。
ごめん。
あとがき
当たり前に続くと思っていた時間は、
ある日、突然終わってしまうことがあります。
その時に残るのは、
「してあげたこと」ではなく、
「してもらっていたこと」ばかりでした。
この物語が、
誰かの小さな気づきになれば嬉しいです。
■音声
VOICEVOX:青山龍星
■作者
なごみ堂
