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「じゃあ明日」が、最後の言葉だった

会社帰り、君と別れ際に交わした、いつも通りの一言だった。

特別な意味なんて、何もなかったはずなのに。

その言葉が、最後になるなんて思いもしなかった。

『明日は君に』

「じゃあ明日」

会社帰り、そう言って君と別れた。

それが君を見た最後になるなんて…。

俺は君より三歳年下の後輩。
年下は眼中に無かったらしく、何度もお願いして交際が始まった。

それも明日でちょうど三年。
明日サプライズしたい。

天気予報では夜中から雨だと言っていたけど、もう降ってきた。

振り返ると人混みにまぎれて君はもう見えなくなっていた。

なぜか得体の知れない不安が心を曇らせた。

空を見上げると冷たい雨が頬に当たった。

急ぎ足になる。

角の信号が、青信号で点滅し出したので、駆け足で横断歩道へ足を踏み入れた。

右側からの車の走行音が一瞬で俺の耳をふさいだ。

激しい衝撃

視界が弾け
音が消えた。

気がつくと体に触れる道路の冷たい感触だけが微かにわかる。

何だこれ…

知らない誰かが俺に何か言っている。

「大丈夫ですか!」
「救急車呼んで!」

涙か雨かわからないが
まぶたを濡らすのを感じる。

重いまぶたが落ちた。

明日は君に

指輪を渡すんだ。


あとがき

明日が当たり前のように来る。
じつは、それは奇跡のようなことです。

この物語は、そんな“当たり前に続くと思っていた時間”について考えながら書きました。

きっと誰にでも、もう戻らない「明日」があるのだと思います。


■動画音声
VOICEVOX nemo:透川ナナ

■作者
なごみ堂

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