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離婚届

夜勤明けの日曜日。
昼前に起きて、
リビングの扉を開けた。

妻の姿はなく、
テーブルの上に一枚の紙が置いてあった。

言葉では、
どうにもならないことがある。

これは、
それでも手を伸ばした日の記録です。

『離婚届』

居るはずの妻の姿がない。

今日はどこかに出掛けると言ってたっけ…?

夜勤明けの日曜日は、いつもお昼前に起き出す。

重たい体を引きずりリビングの扉を開けた。

ふとテーブルの上に目をやった。

何かの紙が置いてある。

覗き込むと、自分の目を疑った。

離婚届。

妻の署名捺印が済まされていた。

何これ…?
どういうこと!?

ベランダに飛び出し、階下を覗き込んだ。
冬の冷たい風が体を芯まで凍らせた。

結婚して10年、俺たちに子供は出来なかった。
不妊治療も効果はなかった。

妻は両親を事故で亡くし、小さい頃から施設で育っている。
家族というものに、憧れがあったんだ。

子供がいなくても俺は構わないと思ってた。

でも妻は苦しかったのかもしれない。
俺が人一倍子供好きなのを知っているから。

離婚届けは、このまま出せるはずもない。

会ってちゃんと話がしたかった。

彼女には両親も兄弟もいない。
頼れる人もいないはずだ。

警察に捜索願いを出したが、あまり意味はなかった。

それから三ヶ月経ったある日、俺の携帯が鳴った。

発信元は公衆電話になっている。

もしかして…

スマホの通話ボタンを押した。

一瞬の沈黙があり、

[ごめんなさい…。]

妻の声だ。

「今何処なんだ?」
「…何処から掛けてる?」

電話の向こうで車が通る音がしている。

「今から行くから。」
「何処なんだ?」

[わたし…]

「何も言わなくていいから…。」
「何も心配要らないから。」

電話口の妻は泣いていた。

心細かったんだろう。
俺が仕事で疲れて彼女の話を聞こうとしなかったから…。

彼女から今いる場所を聞き、そこへ向かった。
俺たちが交際中によく待ち合わせに使った場所だ。

人混みの中、一人寂しそうに下を向いて立っている妻を見つけた。

そばに近づくと、妻は顔を上げた。

目が合い、俺達は静かに泣いた。

「ごめんな…。」

言葉は無力だ。

俺はもう何も言わず、そっと妻の肩を抱き寄せた。

街はすっかり雨があがっていた。


あとがき

離婚の危機、ありますよね?
ないですかw
まあ、無いのが普通なんですよね。
結婚生活が長くなるとお互い嫌なところが目に付いたりします。
そもそも、何でこの人を好きになったのか?
よく考えてみると、その人の良さを思い出したりします。
だから好きになったんですからね。
生まれ変わっても同じ人を選ぶと思います。
あっちは違ったりしてw


■動画音声
VOICEVOX:青山龍生
VOICEVOX Nemo 透川ナナ

■作者
なごみ堂

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