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本当のレバーは「臭くない」

レシピサイトで、見かける言葉。

「レバーは牛乳に浸して、臭みを取りましょう」

世の中には、二種類のレバーが存在する。
「臭いレバー」と「臭くないレバー」。

本来レバーに「臭み」だとか「不快なにおい」など存在しない。本来のレバーは、牛乳に浸す処理なんかしなくても、臭くないどころか、そのレバー自体が、いい匂いなのだ。

これは、ある日のレバー。
できるだけ新鮮な状態で食べるために、ブロックのままで購入し、クーラーバックに入れて一目散に帰宅したら、あまり手で触らず、丁寧かつ手早く切って、サッと焼いて食べる。どんな店で食べるよりも、はるかに新鮮で、はるかにおいしい。そこに異次元の風味が存在していた。

豚レバ(豚肝臓)

新鮮な豚レバ。パツンとした張りがある。包丁を入れると、網の目のように張り巡らされた繊維の組織がプツプツと音を立てて切れていく。包丁にそのプツプツという振動が響く。組織が切れていくと、断面のトロッとした部分から、肝のいい香りがする。どこかで嗅いだことがある香り。動物じゃない。そうだ、やっと思い出した。新鮮なイカの肝の香りだ。そこに獣臭さなど一切ない。そして優しく焼くと、ねっとりとした舌触りで、驚くほど甘い。

これは100gあたり85円の豚レバの話だ。高級銘柄豚というわけでもないのに、こんなに異次元のおいしさがある。それは新鮮だからなのだ。

内臓肉屋さんが、ホルモン店に納品するものと同じように丁寧に肉を用意してくれて、私が肉を取りに行くまで、でっかい金庫のような冷蔵室で完璧な状態で保管してくれた。芝浦の食肉市場から、この内臓肉卸に運ばれてきた時の鮮度を完璧に維持した、超新鮮なレバーなのだ。

おいしいレバー。それは、銘柄牛、銘柄豚のように個体が持つ風味の違いや、餌による肉臭の違いもあるかもしれない。でもほとんどは、屠畜してから、レバーを受け取り、肉を扱う人達が、この味を変化(劣化)させている。

食肉市場から内臓肉卸店へ、そして焼肉店の厨房に渡り、お客さんの皿へ。この過程のどこかで、一度臭いがついてしまったら、次に受け取る人は、その臭いを消すことはできない。タレや下処理でごまかすことはできるだろうけど、そこに本来の「おいしさ」はないのだ。

レバーをブロック売りしてくれる対面販売の精肉店でも、開店直後の午前中に買うのと、夕方に買うのとでは、天と地ほどの味の差があった。元は同じ肉だとしても、注文が入るたび、何度も冷蔵ケースから出し入れされて、切って売られていく肉は、温度変化にさらされて、どんどん劣化してしまう。そのぐらいレバーは繊細なのだ。焼肉店の厨房でも、似たような状況があるだろう。

レバーをはじめ、内臓肉・ホルモンは、肉を扱う者の愛を、見事に反映する食材だ。丁寧に扱えば、おいしくなって応えてくれるし、ぞんざいに扱えば、臭くなる。

「臭いレバー」と「臭くないレバー」。

この沈黙の臓器は、どのように管理されて、どのように扱われてきたのかを、ただ、正直に語っているだけだ。



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