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【幸せな移住Vol.8】『田舎暮らしに殺されない法』(丸山健二)は移住希望者は読んでおいた方いい、容赦なく夢をボコボコにしてくれます

「孤高の作家」とも呼ばれる芥川賞作家にして文壇の大重鎮である丸山健二氏(81歳)が、安易な移住をしないよう警告する本です。同氏は長野県安曇野に25歳の時に移住した、田舎暮らしのベテランです。元々母親が住んでいたエリアに移り住みましたが、田舎に夢を見る人に対する容赦のない言葉の数々と、田舎の残念過ぎる状況描写に打ちのめされること必至の本です。あまりにも内容が濃いので、2回に分けて書きます。

移住・田舎暮らしを題材としていますが、結局はいかにして人間が自立するか、精神的充足を得るか、懊悩といかに向き合うか、理想と現実の違いーーこんなことを説く哲学書的な側面もあります。私は上記単行本ではなく、文庫版で2020年、東京から唐津に移住する前に購入しました。

次々と繰り出される容赦のない言葉の数々

基本的には①定年退職後に移住をするぞ、と一念発起する人は精神的に自立していない②田舎は酷い面がたくさんある③都会に疲れたから移住したいのかもしれないが、都会人は田舎人と根本的に考え方も行動様式も違うから年を取ってからそんな環境に飛び込むのは愚かである。

これらが前半では徹底的に描かれるのですが、少し引用してみます。さすれば雰囲気が分かるでしょう。

 まるで高熱に浮かされてしまったかのようにあなたの心を魅了してやまない田舎暮らしのことですが、ひょっとするとあなたは都会の生活で得られなかったすべてが田舎において手に入るという、ほとんど妄想に近い幻想を抱いているのではないでしょうか
 与えられる情報を吸収するだけで、精一杯だった、どこまでも受け身なその頭のなかは、逃避の悪習に満ちた、非現実的なイメージの数々で埋め尽くされているのではないでしょうか。
 あなたは一体全体田舎というところをどれくらいの深さまで見定めてから、どの程度の裏情報を得てから、あまりにも大胆で幼稚な決断にいたったのでしょうか。

同書より、以下同

この後は、自分が親や学歴や会社に依存し続き、自立の機会を失い、単に受け身で生きてきて様々な現実から逃げてきた、と追い打ちをかけたうえで、こう続けます。

 そして幸いにも、逃亡が可能な、逃げ道には事欠かない時代に身を置くができたというだけではないのでしょうか。
 そうでなければ、田舎への移住を安易に、そこまで能天気に、そこまで発作的にとらえるはずがありません。実は、現実の何たるかも、世間の何たるかも、この世を生きることの何たるかも、ほとんど知らずに、知ろうともしないで、一人前のおとなが身につけておかなくてはならない条件を単に知識としてのみ頭に詰め込んでいるにすぎないのかもしれません。

丸山氏の厳しい呼びかけは続きます。

 だからこそあなたは、職場という過剰に頼ってきた後ろ楯を取り上げられ、今度は自身の判断のみを迫られる本物のおとなの立場に立たされるや、そんな子どもじみた、ひどくずさんな発想に振り回されてしまうのではありませんか。
 男のロマンなどという、あるいは、童心を失わないおとななどという、陳腐で、黴の生えた、反自律的な、実に恥ずかしい言い回しでもって、その弱点をいくら補強してみたところで、手ひどいしっぺ返しを避けることは到底無理なのです。

TV番組『人生の楽園』は移住希望者が描く頭の中の楽園である

こうした雰囲気の本なのですが、前半を読むだけで、いかに『人生の楽園』(テレビ朝日系)に登場しそうな「蕎麦打ちに励む男」「ペンション経営でお客様をおもてなし」「古民家カフェで地元住民のオアシスになる」「念願の農業生活開始」といった甘~い「第二の人生」が困難かが分かります。ここから先は「でもね…」と反論したくなる移住希望者に「現実は違う。以上!」とビシバシと合気道で投げていく感じなのです。

農村の様子

とはいっても、本書はあくまでも「ド田舎暮らし」の困難さを描くものでして、県庁所在地のある市やJRの少し大きめの駅があるような「準都会」への移住の話ではありません。丸山氏は、読者が想像するであろう理想にこう現実を突きつけます。

でも、土地も家も安いですよね→価値のないものをぼったくり価格で買わされているだけ。その土地は将来は5分の1の価格でも売れない。あなたのような都会から来た移住希望者を騙して売るしかない

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