すべてをかけて建立に臨む大工の情熱―幸田露伴の『五重塔』③
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11月第2作目には幸田露伴の代表作、『五重塔』を取り上げます。
五重塔建立に執念を燃やす大工の、芸術にかける名人気質を描いたものです。
仕事に賭ける男の内面や精進の姿も描かれており、『努力論』を書いた幸田露伴らしい作風となっています。
『五重塔』……すべてをかける大工の情熱と執念

幸田露伴(1867~1947)
江戸(東京)生まれ。
本名、幸田成行(しげゆき)。
小説家、随筆家、考証家、俳人。
電信修技学校卒業後、電信技手として北海道に赴任するが、文学を志して帰京。その二年後の1889年に『露団々』で文壇に登場すると、『風流仏』『五重塔』などで作家としての地位を確立。理想主義文学の担い手として近代文学の一時代を築いた。随筆や史伝においても、優れた作品を多数遺している。
代表作品:『露団々』『五重塔』『頼朝』『努力論』『修省論』『運命』など
【書き出し】
木理美しき槻胴(けやきどう)、縁にはわざと赤樫の用ひたる岩畳作りの長火鉢に対ひて(むかひて)話し敵(がたき)もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何日掃ひしか剃つたる痕の青々と、見る眼も覚むべき雨後の山の色をとどめて翠の匂ひ一ㇳしほ床しく、鼻筋つんと通り眼尻キリリと上り……
※あらすじの前編・後編はこちら⇓⇓
【解説】

仕事にかける男の精進の姿
『五重塔』の作品の魅力は、なんといっても、塔の建立にすべてをかける大工の情熱。
技術の素晴らしさを称えるだけでなく、彼らの内面の精進が描かれているのが大きな特徴です。
特に、十兵衛、源太の2人の異なるタイプの大工が切磋琢磨し合う姿は、現代のスポ根物語みたいで、人気を博す理由もよく分かります。
やや字体が古く、読みにくくなっているため、最近ではあまり読んでいる人を見かけませんが、仕事にかける熱い情熱を感じたい方には、ぜひおすすめしたい一冊です。
・十兵衛の自己実現欲求、
・源太の侠気(おとこぎ)
・対立する2人の大工を導き、公平に評価する朗円上人
それぞれの姿から、仕事の流儀を学ぶこともできます。
ラストの描写が圧巻!
『五重塔』の落成式を目前に控えたある時、暴風雨が江戸を襲います。
五重塔に上り身一つで嵐と対峙する十兵衛。
ついに暴風雨を耐えきった五重塔には、一寸一分の歪みも生じていませんでした。
落成式の後、上人は「江都の住人十兵衛之を造り、川越源太郎之を成す」と銘を入れました。
五重塔の棟梁の座を譲った源太、五重塔の責任者となった十兵衛の両方を立てる、流石の一言。
これには十兵衛も源太も言葉はなく、ただただ平伏して上人を拝むだけでした。
努力家・幸田露伴
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