見出し画像

転職はキャリアアップにつながるのか?|「有能感」を軸に考える

転職は「キャリアアップの手段」だと、多くの人が信じています。
しかし、実際には──転職後に所得が下がる人の方が多いというデータがあります。

厚生労働省の調査によれば、転職者のうち年収が上がるのは4割弱。
残る6割は、収入を減らしてでも「自分に合う環境」や「働きやすさ」を求めています。

では、転職は本当にキャリアアップなのでしょうか。
あるいはキャリアダウンなのでしょうか。

私はこれまで、
① 公務員(県)
② 公務員(市)
③ 建設コンサルタント
④ 農業ベンチャー(創業メンバー)
──と、4つの異なる組織で働いてきました。

制度を守る立場から、仕組みを創る立場へ。
安定を選ぶ時期もあれば、挑戦を選ぶ時期もありました。

結論から言えば、転職=キャリアアップとは言えません。
しかし、キャリアをアップデートする絶好の機会ではあります。

そしてその鍵を握るのが、
「Will・Must・Can」──自分のやりたい・求められている(使命感)・できるの重っている部分に身を置いているかです。



1. 所得面から見ると、転職で上がる人は少ない

転職をすれば年収が上がる。
そう思っている方は多いですが、実際には平均年収が下がるケースの方が多いのが現実です。

特に30代以降では顕著です。企業が求めるのは「すぐ戦力になる人材」。
つまり、自社で育成しがたい“尖ったスキルを持つ人”です。

裏を返せば、「これから伸びる人」よりも「すでに完成されている人」が優遇されます。
その結果、スキルを証明できない人ほど条件交渉で不利になります。


2. 多くの人は“キャリアダウン”と引き換えにワークライフバランスを選ぶ

一方で、所得が下がっても満足度が上がる人は少なくありません。

たとえば、

  • 通勤時間が短くなった

  • 上司や同僚との関係が良好になった

  • 家族との時間が増えた

  • 心身の余裕が戻った

こうした変化は単なる「逃げ」ではなく、ライフキャリア全体の再設計だと考えています。

キャリアの価値を「所得」だけで測る時代は終わりました。
いまは、心理的報酬(有能感・関係性・自律性)こそがモチベーションを持続させる基盤です。


3. Will・Must・Can が重なる場所が、最も成長できる環境

キャリア理論でよく使われる3つの要素があります。

● Will(やりたいこと)
● Must(求められること・使命感)
● Can(できること)

転職を考えるとき、多くの人は“Will”から入ります。
「もっと自由に働きたい」「好きな分野で挑戦したい」──そうした想いは自然なことです。

しかし、キャリアアップを実現するのは“Can”の質と深さです。
“Can”が浅ければ、いくら“Will”が高くても成果は出にくいのです。

ですから、重要なのは次の順番です。

① Canを深める → ② 有能感が高まる → ③ Willが湧く → ④ Mustに応えられる

この循環が回り始めると、人は自然と前向きに動けるようになります。
報酬の多寡に関わらず、「自分はやれる」という有能感がモチベーションを支えます。


4. モチベーション理論から見た“キャリアアップ”

自己決定理論では、モチベーションの源泉を次の3つとしています。

① 有能感(Competence)
② 関係性(Relatedness)
③ 自律性(Autonomy)

このうち、転職によって最も大きく変化するのは「自律性」です。
転職は、自分の意思で環境を選び直す行為であり、「自分で決めた」という感覚が強く働きます。

次に変化するのは「関係性」です。新しい職場では当然ながら人間関係が変わります。
新たなネットワークに触れ、価値観の違う人たちと協働することで視野も広がります。

一方で、「有能感」はすぐには高まりません。
転職直後は、成果も評価もまだ定まらない時期です。
むしろ「思うように力を発揮できない」と感じる方が自然です。

しかし、やりたいこと(Will)ややるべきこと(Must)の中に身を置くことで、少しずつ「できること(Can)」が広がり、深まっていきます。

その積み重ねの先にこそ、本当の満足感や成長実感が待っています。
転職は一時的な変化ではなく、自分の内側を育て直すプロセスだと思います。


5. 所得よりも「有能感」に軸を置く

転職後に多くの方が口にするのは、

「給料は下がったけれど、ストレスが減った」
「今の方が自分らしく働けている」

といった言葉です。

これは、“自分らしさ=有能感が発揮できている状態”を意味します。
仕事の難易度が少し高くても、成果が出ると達成感が得られます。
逆に、どんなに給与が高くても「自分の強みが活かせない職場」では、やりがいを感じにくいものです。


6. 「いまはできないけれど、やりたい」場所に身を置く

理想のキャリアとは、

いまはできないけれど、Will(やりたい)とMust(求められる)が高まる場所で、できること(Can)を増やしていくこと。

その環境こそが、人の成長を最も加速させると思います。

転職は、その環境を自ら選び直すチャンスです。
つまり、“キャリアアップ”とは報酬の上昇ではなく、有能感の拡張プロセスなのです。


7. キャリアアップ=自分の価値構造を再定義すること

キャリアアップを「昇進」や「昇給」だけで捉える時代は終わりました。
むしろ、次のように定義を変えるべきです。

キャリアアップとは、
自分の価値観(Will)・使命感(Must)・能力(Can)を
より高次に整合させるプロセスである。

この整合が取れてくると、結果として所得も上がります。
しかし、順番を逆にしてはいけません。


まとめ

転職は「キャリアアップの結果」ではありません。
むしろ、自分のWill・Must・Canを再定義する起点です。

給与や肩書きよりも、
「この環境で、自分は何を学び、何を伸ばすか」。
その問いに誠実に向き合える人こそが、
真の意味でキャリアをアップデートしていく人だと感じます。

いいなと思ったら応援しよう!

EngiManage|中島広二|技術士×中小企業診断士 記事が少しでも参考になったり、役に立ったと感じていただけたら、とても嬉しいです!チップは今後の発信の為の学びに活用にさせていただきます。引き続き、実践で役立つ情報をお届けしていきます!