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SF小説 Memory Banker Ghost Block編 第41話|本当の正しさとは?”彼女”を守るために繰り返されるメッセージ

Sub-Layer Vaultを出たあとも、温度の低さだけが残っていた。

地上に戻っても、感覚は戻らない。

足音がやけに乾いて聞こえる。

(分類を信用するな)

あの一行が、離れない。

端末がわずかに振動する。

視線を落とす。

INCOMING MESSAGE : UNKNOWN SOURCE  
受信メッセージ:送信元不明  
Encryption Level : INTERNAL  
暗号レベル:内部  

また同じ経路。

同じ層。

本文を開く。

It is not an identity error.  
それは人格のエラーではない  

佐倉は立ち止まらない。

歩きながら、もう一度だけ読み返す。

(人格のエラーじゃない)

なら、何だ。

Vaultで見たログが浮かぶ。

未分類。

保留。

連続性ドリフト。

すべては「説明できないもの」を、説明しようとする形だった。

(エラーじゃないなら——)

“誤り”ではない。

“別の構造”だ。

端末を閉じる。

結論はまだ出さない。

だが、前提は崩れる。

通路の奥で、別の導線に分かれる。

他の参加者はそれぞれの方向へ散っていく。

佐倉はそのまま歩き続ける。

(内部からの通信)

通常はありえない。

それが二度続いた。

偶然ではない。

端末が再び振動する。

INCOMING MESSAGE : UNKNOWN SOURCE  
受信メッセージ:送信元不明  
Encryption Level : INTERNAL  
暗号レベル:内部  

開く前に、一瞬だけ間を置く。

本文。

Do not let them finalize it.  
それを確定させるな  

(確定)

分類ではない。

“確定”

Vaultで見た状態がよぎる。

Classification : Pending  
分類:保留中  

まだ決まっていないもの。

それが、決められる。

(確定すれば——)

“定義される”

そして。

“扱われる”

足が止まる。

周囲に人の気配はない。

だが、監視の視線は消えない。

(なぜ止める)

その問いに対して、答えはまだない。

だが、方向は見える。

“エラーではないもの”が、

“エラーとして処理される”ことを防ごうとしている。

つまり——

“誤った正解”を止めようとしている。

端末を閉じる。

歩き出す。

そのとき、三度目の振動。

わずかに強い。

INCOMING MESSAGE : UNKNOWN SOURCE  
受信メッセージ:送信元不明  
Encryption Level : INTERNAL  
暗号レベル:内部  

佐倉は周囲を確認する。

人影はない。

開く。

本文は一行。

If it is finalized, she will disappear.  
確定すれば、彼女は消える  

——彼女。

初めて、対象が“人”として現れる。

ログではない。

パターンでもない。

分類でもない。

“彼女”

その言葉だけで、意味が変わる。

(消える……?)

削除ではない。

消失。

存在が定義の中に吸収される感覚。

(確定されると、元の形を保てない)

Vaultで見た構造が繋がる。

未分類のままなら、まだ“揺らぎ”として存在できる。

だが、確定された瞬間——

“どちらかに寄せられる”

そして、もう片方は——

(消える)

息がわずかに浅くなる。

ここで初めて、

判断が必要になる。

Memory Bankerとして。

“何を同一と認めるか”

それは、制度でもAIでもない。

人間が決める領域だ。

端末を閉じる。

3つのメッセージが、頭の中で重なる。

分類を信用するな。
それは人格のエラーではない。
確定させるな。

(守るべきものがある)

まだ正体は分からない。

だが、方向は決まる。

前方の通路に、微かな光が差し込む。

佐倉はそのまま歩き出す。

誰も呼ばない。

だが、選択はもう始まっている。

そして——

どこかで、それを見ている者がいる。

直接は出られない場所から。

ログと同じ層で。

静かに。

“彼女”を守るために。

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