SF小説 Memory Banker Ghost Block編 第52話|接触?誰かを探してる?もう見つけたw
佐倉は画面を見つめていた。
消えたはずのメッセージ。
残っているはずのない返信。
だが。
確かに見た。
私だけではない。
その言葉だけが頭の中に残っていた。
端末を確認する。
何も残っていない。
ログも。
送信履歴も。
存在そのものが消えていた。
佐倉はゆっくりと椅子にもたれる。
そして。
もう一度だけ履歴を確認しようとした。
その時だった。
INCOMING MESSAGE : 1
受信メッセージ:1件
SOURCE : UNKNOWN
送信元:不明佐倉の呼吸が止まる。
新しいメッセージ。
ゆっくりと表示される。
They are looking for her
彼らは彼女を探している「・・・誰だ。」
思わず声が漏れる。
彼女。
考えるまでもない。
五十嵐はな。
その瞬間。
文字が揺れた。
They are l▮▮king for h▮r
彼らは彼女を▮している
T▮▮▮ ▮▮▮ ▮▮▮▮▮
▮▮▮ ▮▮ ▮▮▮▮▮メッセージは崩壊し。
そして消えた。
何も残らない。
まるで最初から存在しなかったかのように。
佐倉は画面を見つめたまま動けなかった。
誰が。
何のために。
はなを探している??

その頃。
Cognitive Belt。
放課後のカフェ。
店内は異様な熱気に包まれていた。
人気インフルエンサーの公開配信。
Helix公式アンバサダー。
ミライ。
Experience Chainレビュー動画で数百万人の登録者を持つ有名人だった。
店内のモニターにはHelixのロゴが映っている。
学生たちは順番にインタビューを受けていた。
「今日はみんなが最近購入したMemory Chainについて聞いていきます!」
歓声が上がる。
最初の学生が答える。
「私は英会話!」
「いいですね!」
次の学生。
「私はスノボ経験です!」
「冬シーズン前には人気ですよね!」
配信は順調だった。
ミライは笑顔を絶やさない。
だが。
彼女の耳には常に小型イヤホンが装着されていた。
誰かが指示を送っている。
そんなことに気付く者はいない。
やがて。
一人の女子高生の前で立ち止まった。

「最近購入したMemory Chainはありますか?」
少女は少し困ったように笑う。
「お姉ちゃんは、大学受験チェーンを購入してもらってたけど、私はまだ買ったことないです。」
「なるほど。お姉さんだけ、ずるいですねwww」
ミライは笑い
自然に話を続ける。
「じゃあ逆に。」
「最近、一番影響を受けた経験は?」
少女は少し考えた。
そして笑う。
「経験じゃないですけど。」
「友達かな。」
周囲が笑う。
ミライも笑う。
「どんな友達?」
「変な子です。」
また笑いが起きる。
「犬が大好きで。」
「困っている人を放っておけなくて。」
「なんか放っておくと心配になる感じ。」
ミライはうなずく。
だが。
イヤホンの奥で誰かが何かを言った。
「名前は?」
少女は不思議そうな顔をした。
「名前ですか?」
「うん。」
「その友達。」
少女は何気なく答える。
「はな。」
その瞬間。
ミライの笑顔が止まった。
本当に一瞬だけ。
だが。
確かに止まった。
「フルネームは?」
「五十嵐はな。」
店内の誰も気付かなかった。
だが。
ミライのイヤホンから聞こえる声は変わっていた。
短く。
そして鋭く。
ミライは何事もなかったように笑顔を作る。
「ありがとう。」
「素敵なお友達だね。」
少女は照れたように笑った。
インタビューは終わる。
配信も続く。
何も変わらない。
誰も気付かない。
だが。
ミライの端末には別の画面が表示されていた。
COGNITIVE TALENT INDEX : MATCH
認知才能指数:一致
SUBJECT : HANA IGARASHI
対象:五十嵐はな彼女は画面を閉じる。
そして店内の出口へ視線を向けた。
まるで。
何かを見つけたかのように。

