グロースハックを捨てたら、もっとグロースした話
最近、仕事がつまらないなーと思っている時大体グロースハックしていたことに気づきました。
追っているKPIの先に、また別のKPIがある。CVRを改善すれば、次はCPAを下げろと言われます。CPAが下がれば、今度はLTVを伸ばせという話になる。どこまで行っても、数字の裏にあるのは数字でした。
悪いことではありません。それが僕の仕事だと言われれば、そうかもしれない。バズっているフォーマットを使い回し、競合が出ている面を抑えて、効率よくリードを獲得し、広告のスコアを最適化する。確かに結果は出ます。
でも、何かつまらないんですよね。
グロースハッカーとしての自分は機能していました。でも、マーケターとしての自分はどこにいるんだろう、と思い始めていました。
「なんで独立したんですか」と、何度も聞くようになってから変わった仕事のスタンス
最近最初に必ず聞くことがあります。
「なんで独立しようと思ったんですか?」
「この会社を作って、何をしたいんですか?」
一度聞いただけでは、たいてい綺麗な答えが返ってきます。
「お客様に喜んでほしくて」
「業界を変えたくて」。
それはそれで本当のことだと思いますが、もう一歩奥にあるものがある気がします。
だから何度か聞きます。角度を変えながら、雑談の中で聞く。するとポツポツと、違うものが出てきます。
「実は昔、こういう経験をして…」
「前の会社ではこれがないのが、ずっと引っかかっていて…」
その「ポツポツ」こそが、まだ市場に提供されていない信念だったりします。カテゴリとして定義するには小さすぎることも多い。でも、そこにしかない固有の光があります。
想いを掘った後にやること
信念の輪郭が見えてきたら、次は顧客を深く調査します。
どんな人が、どんな状況でこのサービスに出会うのか。どこで情報を探し、何に不安を感じ、何に背中を押されるのか。タッチポイントの一つひとつを丁寧に調査して想像します。
クライアントが考えている顧客とリアルな顧客にギャップがあることも多々あります。
なので両面から丁寧に調査します。
そしてそれぞれのタッチポイントでどう表現しなければならないかを検討します。
グロースハックはその後です。設計なき最適化は、砂の上に高層ビルを建てるようなものだと思っています。
例えば、バズっているコンテンツのフォーマットがあれば、それを使い回すのではなく、そのフォーマットのどこにクライアントらしさを宿せるかを本気で考えます。トレンドに乗りながらも、そのブランドにしか出せない表情を探す。
協賛の場面でも同じです。社名やロゴを載せるだけで終わらせない。イベント全体を通じて、クライアントの信念と最も重なる瞬間はどこか。その瞬間に何かを見せられないか。
そのために運営側との調整まで動きます(意外と調整できてしまうことが多いです)。
広告の設計も自ずと変わってきます。リード獲得や購入を直接狙う広告だけでなく、まずは潜在顧客のプールを広げ、共感してもらう仕組みから作る。売る前に、共鳴させる。
これがグロースハッカーだとなかなかできません。
想いは、どこに宿すべきか
ここで一つ問いを立てたいと思います。
「信念をマーケティングに落とし込む」とき、それはどこに表現されるべきでしょうか。
広告のコピー、ウェブサイトのデザイン、看板、チラシでしょうか。
本当に信念が浸透したブランドは、もっと細部に染み込んでいます。
サービスの品質、オペレーションの設計、使う原材料の選び方、スタッフの口調、メールの文末の一文。そのどれもが、オーナーの信念の表現になりえます。
逆に言えば、広告だけが尖っていてオペレーションがバラバラなブランドは、必ずどこかで違和感が露呈します。顧客は思っている以上に、細部を見て感じとっています。
信念を「見せるもの」ではなく「染み込ませるもの」として捉えたとき、マーケティングの射程はぐっと伸びます。
売上の裏に、新しい価値への意志が見えるとき
数字を追う仕事と、信念を紡ぐ仕事。どちらも売上を作ることが目的です。その点は変わりません。
でも燃料が違います。
数字の後ろにまた数字がある仕事があります。一方で、数字の後ろに「新しい価値を作りたい」という意志が見える仕事がある。
その意志が見えたとき、自分の中で何かに火がつく感覚があります。
おそらく僕だけじゃなく、周りの人にも何かしら影響があることでしょう。
真面目そうに見える方でも、面白い信念を持っていることが多いです。まだ誰も言語化していない市場の余白に、静かに確信を持っている。そこに共感できたとき、この仕事はただの広告屋じゃなくなります。
売上は、想いが正しく伝わった結果なんじゃないかと
想いを掘り、顧客との接点を設計し、細部まで想いを染み込ませる。
そうして必要な人に正しく届いたとき、結果として売上が伸びていきます。
グロースは目的じゃありません。想いが伝わった証拠だと思っています。
グロースハッカーだった頃の自分は、数字を動かすことがゴールでした。今は違います。まだ名前のない信念を掘り起こし、それを顧客に届けていく過程に、マーケターとしての本当のやりがいがあります。
