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deluxe55
サンタ酸
味が決まらない。コンクールは間近にせまっているのに。しかしなんで、クリスマスなんかに料理コンクールを開かないといけないんだろう。
トモカは焦っている。なんとしても優勝したい。そしてあこがれの厨房で働きたい。でも、スープの、サンラータンの味がどうしても決まらないのだ。
酸辣湯の酸味は、基本的に酢で味つけをする。もう何日も、色々な酢をためしているのだが、どうしても決め手に欠ける。スマホが震えた。料理学校時代に後輩だったスグルからだ。
ートモカ先輩、大丈夫っすか?
ーダメかも。いろんな黒酢、試してみたんだけど。頼んでたの、見つかった?
ーあ、まだなんすけど、俺、中国人の知り合いがいて、もうとんでもない爺さんなんすけど、探してくれているみたいっす。
ー間に合うかな?
ーギリギリになるかもです。先輩のとこに、直接持っていくようなこと、言ってましたけど。
ーありがと。
ー大丈夫っすよ。奇跡、起こしてください。応援してるんで。俺、先輩の料理、好きなんで。
ーマジ?
ーマジっす。
12月25日の朝、トモカは玄関に茶色の袋を見つける。中の瓶のラベルは、鎮江香醋と読める。中国黒酢だ! 火を止めて注いでみる。ああ、この味だ。
トロフィーを掲げて涙しながら、トモカは感謝する。スグルに、そして、まるでサンタクロースのような見知らぬ老人に。
以来トモカは、鎮江香醋に「サンタ酸」というあだ名を密かにつけている。
了
