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くねくね山路の先に待つ贅沢!無農薬ブルーベリーの楽園

富山市八尾町の中心部から山の方へぐんぐん進んでいくと、そこにあるのが「秘境」という言葉がぴったりの大長谷(おおながたに)地区です。
そんな場所に、知る人ぞ知るブルーベリーの里があるんです。

くねくねした山道をひたすら進んで、「本当にこの先にあるの…?」と、不安になるくらいの深い緑を抜けた先。
正直、アクセス抜群!とは言えない場所なんですが、毎年、県内外からびっくりするくらいたくさんの人が吸い寄せられるようにやってきます。

お目当ては、キラキラと宝石みたいに実ったブルーベリー。
でも、それだけじゃないんです。

ここを訪れる人がみんな口にするのは、農園を営む井上さんご夫婦のあったかいお人柄。おしゃべりが大好きでサービス精神旺盛なお父さんと、そんなお父さんを優しく見守るちょっぴりシャイなお母さん。 そんな井上さんご夫婦が紡いできた、静かだけど情熱たっぷりな物語を伺ってきました。
※残念ながら今シーズンのブルーベリーは終了してしまいましたが、来シーズンの楽しみに、ぜひその魅力に触れてみてください。

大長谷とは
富山県富山市の最南端に位置する秘境「大長谷(おおながたに)」。
地元の人々から「NAGATAN」と親しまれる小さな集落には、わずか28世帯39人のコミュニティが協力しながら元気に暮らしています。大自然の恵みの恩恵を受けて育った山菜や川魚をはじめ有機野菜やジビエにも力をいれてます。

大長谷公式HP『大長谷NAGATAN』より引用

大長谷公式HP『大長谷NAGATAN』はコチラ


始まりは、偶然手にした「一鉢のブルーベリー」から

井上農園のブルーベリー

井上農園「ブルーベリーの里」は、2001年に開園しました。約15品種・450本もの木が大切に育てられており、驚くほど大粒で甘い実が特徴です。
きっかけは、知り合いが置いていった一鉢の苗木でした。当時は実の味さえ知らなかったという井上さん。

井上さん「一粒食べてみたら、『かなんちょ美味しいがけ!(なんて美味しいんだ!)』ってびっくりしてね」

その美味しさに感動した井上さんは、耕作放棄地だった場所にブルーベリーを植えることを決意。「これだ!」という直感を信じ、長野県まで二度も足を運んで苗木を取り寄せ、さし木で少しずつ木を増やしていきました。

当初は直売所への出荷やオーナー制度、摘み取り体験からスタートしましたが、その人気は凄まじいものでした。

井上さん「農協の方に勧められてパック詰めで直売所に持っていったら、『ブルーベリーだ!』って、あっという間の為五郎(ためごろう)でなくなってしまったんだよ!」

早朝の納品が難しくなった時期もありましたが、直売所のスタッフさんが山奥まで取りに来てくれるほどの人気ぶりに、井上さんはこう考えました。

井上さん「お金儲けが目的じゃない。納品が大変なら、逆にお客さんにここまで来てもらえばいい」

そんな思いから、元々行っていたオーナー制度や摘み取り体験の中でも、現在は現地での摘み取り体験をメインに据え、多くのファンに愛されるスタイルへと変わっていきました。

「人間の手に勝るもんちゃない」一粒に込める情熱

しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
3月の頭に長野から仕入れた苗木100本近くが、大長谷の厳しい寒さと霜で全滅してしまったこともあります。

また、こだわりの「完全無農薬」を守るための苦労は計り知れません。除草剤は一切使わず、広大な面積をすべて草刈機で整えます。虫取りもすべて手作業です。
「クモは害虫を食べてくれるありがたい存在だけど、摘み取りに来る人には苦手な人もおるからね」と、訪れる人が気持ちよく過ごせるよう、クモの巣払いも欠かせません。

冬になれば、3メートル50センチもの雪から木を守るための「雪囲い」をし、イノシシ対策の電気柵も張り巡らせます。 収穫も、もちろん手作業。一度にすべてが熟すわけではないため、一粒ずつ色づきを見極め、時にはしわしわになった実を取り除きながら、丁寧に摘み取っていきます。気が遠くなるような作業ですが、井上さんは笑って言います。

井上さん「人間の手に勝るもんちゃないちゃ(人間の手作業にかなうものはないよ)」

そう笑って話す井上さんの手には、長年の愛情と情熱が滲んでいました。

ブルーベリーを収穫するお父さん

国境を越えて広がる、温かな交流の輪

手間暇かけて育てられたブルーベリーを求めて、週末には100名もの人々が訪れます。一度その味とご夫妻の人柄に触れた人は、誰もがリピーターに。 最近では、近くの白木峰を目指す外国人観光客がふらりと立ち寄ることも増え、言葉が通じなくてもジェスチャーで心を通わせた中国の若者や、カナダやアメリカの観光客など、交流は世界へ広がっています。

井上さん「一緒に撮った写真を送ってくれたり、手紙をくれたり。お返事を書くのも楽しみなんだよ」

ある時は、発行されたばかりの新札(新紙幣)を出したお客さんをきっかけに、周りの人たちと即席の両替会が始まったことも。

井上さん「えっ、新札!?って人だかりになっちゃって(笑)。そのお客さんが何枚か持っていたから、欲しいという人にその場で両替してあげていたんだよ。まさかこんな山奥で新札の両替が始まるなんてね」

と笑うエピソードからも、この場所に集まる人々の温かな空気感が伝わってきます。

ブルーベリーを収穫するお母さん

農園を支える力強い助っ人たち

そんな井上さん夫妻には、心強い助っ人が何人もいます。
まずは息子さん。そして、地域おこし協力隊として大長谷を担当している久保さんです。 井上さんは久保さんを「孫のような存在」と目を細め、久保さんも「僕も大長谷の父と母だと思っています」と語っています。
久保さんはブルーベリーの世話から受付、SNSやホームページでの情報発信まで、精力的に農園を支えています。
さらに、イギリスからやってくるご夫婦も大切な仲間です。井上さんの農業や自然農法への姿勢に共感し、わざわざ手伝いに来てくれるのだそう。「『まだ来ないのかな』って、二人が来るのをいつも楽しみに待っているんですよ」と井上さんは笑います。

不便を楽しむ「大長谷」という生き方

「不便はないですか?」と尋ねると、意外な答えが返ってきました。

井上さん「買い物は週に一度の移動販売があるし、夏は涼しいからエアコンもいらない。生まれ育ったここが一番だよ」

かつては冬になると仕事がなくなり、休業届を出すために八尾の町中まで4時間かけて雪道を歩いたといいます。 「朝の4時に出てね、みんなでおしゃべりしながら歩けばあっという間だったよ」 そんな厳しい時代を知るからこそ、今の暮らしを「楽になった」と笑い、湧水で喉を潤し、野菜を育て、コンニャクイモからこんにゃくを手作りする丁寧な自給自足の生活を大切にされています。

自然と共に生き、鳥やイノシシから畑を守り、クモさえも味方につけて育まれるブルーベリー。その一粒には、大長谷の豊かな自然と、井上さんご夫妻の「働き者」としての歴史がぎゅっと詰まっていました。その背景を知って食べるブルーベリーは、きっと宝石以上の輝きと美味しさを感じさせてくれるはずです。

井上さんご夫婦と久保さん

取材を終えて

井上さんご夫婦、そして地域おこし協力隊の久保さん。私が農園に足を踏み入れると、皆さんがとてもナチュラルに迎え入れてくれました。まるで自分の田舎に帰ってきたかのような心地よさ。この温かさが、訪れる人を「またここに来たい」という気持ちにさせるのだと感じました。

風が吹き抜ける場所に座らせてもらい、冷たい湧き水で手を洗ったり、喉を潤したり……。ゆっくりと流れる時間に身を任せ、ついつい長居をしてしまいました。 ちなみに、秋にはここで育った落花生も販売されるそうです。農園の最新情報は、久保さんが運営するInstagramアカウント「do.jinen」で発信されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
※残念ながら今シーズンのブルーベリーは終了してしまいましたが、来シーズンの楽しみに、ぜひその魅力に触れてみてください。

久保さんが運営するInstagramアカウント『do.jinen』はコチラ!

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