男性育休をとろうか悩んでいるあなたへ
男性育休は「休み」ではなかった。父親になり直すための訓練だった
3人目が生まれる。ヤバイ、家庭が回らない
3人目の子どもが生まれる。
ヤバイ。このままだと家庭が回らない。どうしよう、、
……育休、取るしかない。じゃあ、どれくらい?
僕の3回目の育休は、そんな切実さから始まった。
1人目、2人目でも育休を取っていたから、「取るかどうか」の悩みはもうなかった。悩みは最初から「どれくらい取るか」だった。
理想を言えば、育休を取る理由はきれいに並べられる。
妻の負担を減らしたい。 家族の時間をちゃんと持ちたい。 父親として、もっと育児に関わりたい。 子どもが成長する瞬間を、この目で見たい。
全部、本心だ。
でも我が家の正直なところは、「取らざるを得なかった」である。
夫婦共働き。両親は遠方。近くで頼れるのは妻の姉だけど、彼女も仕事をしている。
3人目が生まれたら、誰かが家庭に立たないと、物理的に回らない。それだけの話だった。
僕は最初から、少し間違えていた
1人目のとき、育休を決断した瞬間を思い出す。
頭にあったのは、育児のことだけじゃなかった。
仕事のこと。収入のこと。これからのキャリアのこと。このまま会社員として働き続けて、本当に家族を守っていけるのか、という不安。
今振り返ると、この時点で僕はすでに少し間違えていたのかもしれない。
育休を「育児のための時間」としてだけでなく、どこかで**「人生を立て直すための時間」**としても見ていたからだ。
それ自体が悪いとは、今でも思っていない。子どもが生まれるタイミングで、働き方や家計や将来を考えるのは自然なことだ。家族の生活を守りたいと思うのも、当然だと思う。
問題はそこじゃなかった。
問題は、その考えを妻ときちんと共有していなかったことだった。
「育休を取れば、家族はうまく回る」と思っていた
育休を取る前の僕は、どこかでこう思っていた。
家にいれば、育児はできる。 時間があれば、妻の負担は減る。 仕事を休めば、家族の時間は増える。 そのうえで、空いた時間に自分の勉強や将来の準備もできる。
現実は、そんなに単純じゃなかった。
家にいることと、育児を担うことは違う。 時間があることと、家庭が回ることも違う。 夫が育休を取ることと、妻が安心できることも、必ずしも同じじゃない。
僕は「育休を取る」という行動そのものに、どこか満足していたのだと思う。
仕事を休んで家にいる。子どもと過ごす。妻の近くにいる。それだけで、ある程度は役に立てると思っていた。
でも、育児の現場では「いる」だけでは足りなかった。
朝起きて、子どものご飯を準備する。食べさせる。着替えさせる。歯を磨く。髪を整える。保育園の準備をする。連絡帳を書く。洗濯物を確認する。忘れ物がないか見る。ぐずる子どもをなだめる。時間までに送り出す。
家庭は、この細かいタスクの積み重ねで動いている。
僕はその全体像を「見ているつもり」で、実は見えていなかった。
妻が求めた育休と、僕が考えていた育休
妻が求めていたものは、たぶんとてもシンプルだった。
育休を取るなら、育児に向き合ってほしい。 家事育児を「手伝う」のではなく、一緒に背負ってほしい。 自分のやりたいことより、まず目の前の子どもと家庭を優先してほしい。
一方で僕は、こう考えていた。
育児はもちろんやる。でも将来の収入も、復職後のキャリアも不安だ。だから育休中に勉強や副業の準備も進めたい。それが長期的には家族のためになるはずだ。
どちらも、家族のことを考えているつもりだった。
でも、見ている時間軸が違った。
妻は「今日と明日の育児」を見ていた。 僕は「半年後、1年後の家計と仕事」を見ていた。
どちらが正しい、という話ではない。
ただ、産後の家庭で優先されるべきは、まず目の前の生活だった。
夜泣き。授乳。上の子のケア。保育園。食事。洗濯。睡眠不足。妻の体力。子どもの安全。
ここが安定していないのに将来の話ばかりしても、相手には届かない。
僕はそれを、頭ではわかっているつもりだった。実際には、わかっていなかった。
育休は、夫婦関係をよくする魔法ではなかった
育休を取れば家族の時間が増える。時間が増えれば、夫婦関係もよくなる。
そんな期待が、どこかにあった。
現実は逆だった。
これまで見ないようにしていたズレが、一気に表に出てきた。
家事育児の認識のズレ。 お金への不安のズレ。 仕事への考え方のズレ。 「何をやったら育児なのか」という基準のズレ。
仕事の忙しさを理由に見えなくなっていたものが、家にいる時間が増えたことで、全部見えるようになった。
これは、かなりしんどかった。
でも同時に、必要なことだったと思う。
そのズレを見ないまま父親を続けていたら、僕はずっと「やっているつもり」のままだったかもしれないからだ。
育休が最初に突きつけてきた問い
男性育休で最初に学んだのは、制度の使い方ではなかった。
給付金の計算でも、復職時期の調整でも、会社への申請方法でもなかった。
一番最初に突きつけられたのは、この問いだった。
お前は本当に、家庭の当事者になれているのか。
子どもはかわいい。家族は大事。妻を支えたい。
そう思っているだけでは、足りない。
朝の準備を、ひとりで回せるのか。 子どもの予定を、把握しているのか。 保育園や外部の支援を、自分で調べられるのか。 妻が何に疲れているのか、理解しようとしているのか。 自分の将来不安を、妻にぶつけるだけになっていないか。
育休は、そこを全部見せてくる。
だから男性育休は「休み」ではない。
父親として、夫として、家庭の一員として、
今の自分がどこに立っているのかを確認する時間だと思う。
そして僕の場合、その現在地は、思っていたよりずっと未熟だった。
これから育休を取るあなたへ
これから育休を取る男性に、最初に伝えたいことがある。
育休を取ること自体は、すばらしい。取れるなら、取ったほうがいい。子どもと過ごす時間は、本当にかけがえがない。
でも、取るだけで満足しないほうがいい。
大事なのは、取った後に何を担うか。妻と何を合意しておくか。家庭の中で、自分がどこまで責任を持つか。
育休前に、夫婦で話しておいたほうがいいことはたくさんある。
育休の目的と期間
お金のこと
家事と育児の分担
「自分の時間」の扱い
復職の時期
外部支援を使うかどうか
夫婦喧嘩になったときのルール
子どもの前でどう振る舞うか
僕はこれを十分に整理しないまま、育休に入った。
だから、たくさん揉めた。たくさん失敗した。子どもの前で後悔するような場面もあった。
このシリーズについて
このシリーズでは、そのきれいではない部分も書いていく。
これは、男性育休の成功談ではない。
育休を取るまでに揉め、取ってからも揉め、家事育児の見えていなさに気づき、夫婦関係の難しさと向き合った記録だ。
だからこそ、これから育休を取る人の役に立つと思っている。
「こうはならないでおこう」と。
男性育休は、父親になるためのご褒美ではない。
父親になり直すための、訓練だった。
