22番『向かっていく先』

 良い様に見えても、悪い様に見えても、本来の目指すところを妨げるものには、実は行き止まりの力が働いています。
 アフリカの古い言い伝えによれば、それは、二枚貝の様にも見える、石の様な小さな生き物の作り出す幻想とも現実ともつかない夢の力のしわざです。
 行き止まりがこの生物の隠れ蓑である事はあまり知られていませんが、美しく甘美だったり、ただひたすらに苦しかったりしますが、なんにせよ、そこに止まるということは、本来のいく先からは遠ざかってしまうということです。
 素晴らしいもの、美しいもの、途方もない困難。これら全てが実はただの行き止まりという場合があります。
 行き止まりは、常に人を止めおくもので、人を惑わせて留め置くことが、行き止まりが地上に存在できる唯一の方法なので、これはどうしようもないことですが、人にとって良い事であれ悪い事であれ、この行き止まりを捨てて、本当の行く先に向かっていく事はなかなか難しく、それでも捨ててしまわなければ、本当の運命に戻ることができません。
 これは世界中の物語でも語られることですが、例えば本当の目的を見失って、しかしそれで良かったと言う場合必ずその裏にはこの行き止まりがあると考えられるのです。
 ある青年の物語で、婚約者の願いを叶えるために遠く旅をしたにもかかわらず、アラビアの豪商にその才覚を認められ、後継者として強く誘われたという話しがあります。青年は商人の申し出を断り、国に帰って結婚し、質素な暮らしをしたそうですが、その暮らしは静かで幸福なものだったと伝えられています。
 この旅の中で青年は、仙人からの弟子入りの誘いも断っています。不死となる仙人の修行の誘いを受けたものの、その誘いを断って青年は故郷に戻ったのでした。

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