46番『墓泥棒の暮らし』
ピラミッドからの盗掘というのは、考えられているほど大仕事ということでもなかった様です。
現世とあの世のあわいの曖昧さが今の様になるまでは、どうしても生きている人間の都合が優先されて、いろいろなことが起こりました。
実は、多くのピラミッドからの盗掘のほとんどが、エジプトの貴族や王権を巡る、些細な理由が背景にあったと考えられます。
副葬品となっているいくつかの戦の道具、特に兜の様なものは、実際のところ、隠れた権威の象徴として捉えられており、いつの間にか誰かの手元に納まっていることが常でした。
ただ、泥棒たちの大胆さや腕前は、権力闘争の行方に大きく関わっており、公にされることはありませんでしたが、多くの泥棒が、王家を始めとした有力者たちに、直に召し抱えられてもいたものと推察されます。
ただやはり、この時代のエジプトは本当に今では考えられないくらい、現世とあの世の隔たりが曖昧だったことから、泥棒たちは非常に禁欲的な生活をし、常に神と向き合う様な、真摯で誠実な態度で盗みに入っていた様で、その暮らしぶりは神官以上の清浄さだったということです。
長い間に決定的に世界から失われてしまったこと、変化してしまったことはいくつもありますが、これも今からはなかなか本質を捉えにくい事柄と言えるでしょう。
