32番『わからない塔』
その塔が現れたのは、いつのことだったか定かではありません。
発見されて間もなく人が行き来する様になり、あれよあれよと言う間に辺りに街ができて、更に多くの人々が行き交う様になりました。
しかし、塔の主人が何者かは知られていなかった様で、記録は全く残っていません。
ただ、ある日、街の家々の扉に、人の表情の様々な有様を読み取れる焼印が押される様になり、実際に何かが起こったわけではありませんが、それを不気味がった人々は、災難を逃れるためにこの街を放棄して、辺りはすっかり寂れ、やがては塔だけが残ったということです。
いつの間にか塔は蔦におおわれ、多くの旅人や隊商が行き交ったその場所も、森に覆われてしまって、場所も定かではなくなってしまいました。
そうなると、改めて塔を発見しようと挑戦する人々が現れ、勇猛な騎士たちによって多くの探索が報告されることになります。しかし、塔が改めて発見されたこと、一見、詳細に記録はされている様に見えるものの、突き詰めていくと、塔については何一つ定かではありません。
