デンマークで、絵画のなかに足を踏み入れた|北欧留学日記
「ここが、天国です」
どこからかそんな声が聞こえてきそうな気がした。
もしそんなことばが聞こえてきたとき、わたしはそれを素直に信じてしまいそうなくらい、デンマークでの壮大な景色に圧巻された。

まるで、日本にいるときに美術館で見た絵画のなかに、足を踏み入れたような。
わたしはいま、生きているのか、どこにいるのか。そんな境界線がぼやけていく感覚。でもその感覚が、いやじゃなかった。いまここで死んでも、後悔しないんじゃないかなってくらい。


今日は夕食のあと、ひとりで駅の反対に足を伸ばして散歩してみた。
サマータイム中のデンマークは、20時台になっても、夕陽に照らされて明るい。いまの季節だけ味わえる、夜の散歩が楽しい。
ひとり自然を感じながら歩く。人もほとんどいなくて、鳥と虫の鳴き声がハーモニーのように静かに響き渡る。
ぼうっと歩いていると、そういえば最近、ひとりになることが少なかったよな、と気づく。寮での学校生活は、なんだかんだ朝から夜まで人と話すことが多かった。
ひとりで散歩して、ようやく自分の心に耳を傾けることができた気がする。まるで、ジャーナリングしているみたいだった。
学校が始まって一週間半。小さな悩みはポツポツ出てきた。部屋のカーテンに虫がたくさん付いていたこととか、英語が聴き取りきれないのに、英語をあまり話さずに過ぎてしまう1日があることとか。
でも、壮大な自然の景色を目の前にしたら、小さな悩みたちはすべてちっぽけに思えた。生きとし生けるものが、平和に生きていけますように。そんな感情が自然に湧いた。
そういえば日本にいたときは、一緒に働く人の目を気にしたり、狭い世界での悩みを大きく捉えていたな、と離れてみて実感する。


今日は、この学校に来て初めてライティングの授業を受けた。授業中、紙のノートと向き合いながら執筆の難しさと楽しさを再認識した。
その夜に散歩をして、散歩をすること、自然に触れ合うこと、自分の心を動かすこと。それも立派な執筆活動だと思った。だって、ひとりで学校の周りを大きく一周しただけでこんなにもことばが溢れ出てきたから。

この先には、どんな道が待っているだろう。
