『明日の君は、どこにいる?』制作記(4)なぜ物語にしたのか、なぜ答えを書かないのか
自分の人生はこのままでいいのか
振り返ると、僕は昔から「自分の人生はこのままでいいのだろうか」と何度も悩んできた。
高校3年生のとき、理系から文系の大学に目標を変えたときもそうだった。
人生で初めて勤めたアイスクリーム屋のアルバイトを辞めて、プログラミングを使うアルバイトに変えたときも同じだった。
ことあるごとに「このままでいいのだろうか」という問いにぶつかったとき、僕は方向転換をしてきた。
でも、それで何か確かな答えが見つかったかといえば、そうではない。
もちろん、後悔はしていないし、方向転換をしたことで多くの経験を積むことはできた。
とはいえ、いつまでも迷走し続けるわけにはいかない。
この先、どこへ向かえばいいのか。
僕には先を示してくれるコンパスが必要だった。
そのコンパスを教えてくれたのが、先生であり、特に先生が伝えてくれた「先人たちとの付き合い方」だった。
「先人たちの肩を借りて世界を見るのがいい」
先生は、僕にこう言った。
「先人たちの肩を借りて世界を見るのがいい」
読書は、知識を詰め込むためのものではない。
過去の偉人たちと対話し、彼らの肩を借りながら世界をとらえる手段だ。
先生の手ほどきを受けながら、読書を通して、先人たちの肩を借りる。そんな読書法だ。
そう気づいてから、僕は読書の仕方が変わった。
たとえば、僕が夏目漱石の遺作『明暗』を読んだとき、
「漱石の描く女性はこれまで謎めいていたのに、この作品では内面が生々しく描かれている。
彼は恋愛という西洋から持ち込まれた考えを、それまでの伝統的な日本の家族観と結びつけようとしたのだろうか?
漱石の描く登場人物の女性に対する後ろ髪を引かれた態度やヘタレっぷりから見ると、男性がうまくやっていける未来が見えないな。漱石が考えても、いい関係が見えてこないなら、僕が考えても仕方がないのか?
でも、漱石の奥さんってかなり大変な人だったよな。
恋愛に対する漱石の結論は、自身が奥さんに振り回されていたことが影響しているのかもしれないな。
じゃあ、自分にとって女性とは、恋愛とはどういう存在なのだろう?」
なんてことを考えることになった。
こういう対話はすぐに答えは出るものではないけれど、誰か他の人が言っている価値観といったものに流されることなく、ゆっくりではあるけれど、自分なりの答えを見つけていく手がかりとなったのだ。
読書は、過去の偉人との対話だ。
彼らの考えを借りることで、自分の心が何を求めているのかが、少しずつ見えてくるのだ。
この本を書いた理由、物語にした理由
その道の延長線上に続くものとして、この本を書き上げることになった。
だから、この本は当然かつての僕と同じように、「このままでいいのか?」と悩む人に向けて書いた。
僕の迷い、先生との出会い、読書を通じた気づき——。
それをただ説明するのではなく、物語として描くことにした。
一般的な自己啓発書や実用書ではなく、あえて物語というかたちを採用した。
僕がこの本で伝えたかったのは、「こうすれば人生がうまくいく」という答えではないからだ。 むしろ、一人だけで考えないということを、物語の中で表現したかった。
どうしたって実用書やhow-to本のような書き方では、自分一人で悩みを解決することになってしまうと思ったのだ。
物事を解決するために、合理的に考えたり、正しい答えを探し出そうとすることは、僕が今までしてきたことでもあった。しかし、これこそが先が分からず、ぐるぐる同じところで悩み続けることになった原因の一つでもあった。
だから、その流れから抜け出すために、この本では物語を採用し、読んでくれた人が自分自身の人生と重ね合わせられるように書くことにしたのだ。
「このままでいいのか?」と問い続けた先に『明日の君は、どこにいる?』
「自分の人生はこのままでいいのか?」
誰もがそんな問いを抱えたとき、誰かに答えを求めたくなることがある。
でも、今までの話から察した人はいるかもしれないが、この本は明確な「答え」は書かれていない。
代わりに、本の中で交わされる対話や、偉人たちの言葉が、読む人それぞれの心の中で、自分だけの新しい視点を生み出していく方法を学べるものになっている。
ヘーゲル、ホイジンガ、ユング、漱石、諭吉、プラトン、デカルト、ルター、エリクソン。
『明日の君は、どこにいる?』に登場する主人公は、上記のような偉人たちの考えをたどりながら、「自分の人生はこのままでいいのか?」という問いを深めていった。
誰でも一度は疑問に持ったことがあるこの問いを、先人たちの言葉に触れながら、読者であるあなた自身が、自分の足で考え、自分の視点で世界を見る旅に出てほしい。
自己分析でも、感情に寄りすぎた“やりたいこと探し”でもない、歴史や他者とのつながりの中で見つけていく、自分だけの「羅針盤」。
そんなものが、あなたの人生のどこかで、静かに力を持ってくれることを願って。
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『明日の君はどこにいる?』特設サイト
第1話:
第2話:
第3話:
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