「竹馬の友」#モノカキングダム2025
商店街を入ってすぐ右側に、古い喫茶店がある。
窓は装飾ガラス。夜になると、店内からの明かりが漏れて、不思議な光を放っていた。
ー喫茶あかりー
マスターである五十嵐五郎は、先月七十歳になった。毎日欠かさず、光る看板を拭いている。
店を始めた時は、まだ二十歳の若造だった。その頃にこれが”電飾看板”ということを知った。でも、電飾というほどピカピカ光りはしない。
五郎の誕生日は、10月31日だ。
世間的に、ハロウィーンと呼ぶようになったらしい。自然と仮装した客が集まるようになった。
その仮装をした客とは、五郎の幼馴染や後輩だ。おじいちゃんやおばあちゃんと呼ばれる世代が、ハリーなんとかっていう魔法使いやプリなんだかのアイドルの格好をするのだ。
最近では、従業員スペースで(もう従業員はマスターしかいないが)着替えてもいいことにしたから、コスプレみたいになってきた。
「なあ、五郎。お前も仮装してみればいいじゃないか。ハロウィーンの夜だぞ」
「いいや、俺はやらんぞ。・・今年はドラキュラか」
「ああ、ヴァンパイアだな。ドラキュラほど紳士ではない」
「それは言えてるな」
五郎が笑ったその時、店中に元気な声が響いた。
「いえーいい!トリックオアトリートー!」
威勢よく着替え部屋から出てきたのは、みつ子だった。
高校の頃、高嶺の花だと思っていた女性は、歳を重ねて気軽に話せる友人となっていた。
「今年はまた、派手だなぁ」
「何よ、いいでしょう。孫も褒めてくれたのよ。これほど裁縫ができてよかったと思うことはないわ」
「それで、なんの仮装なんだ」
「あら、五郎くん知らないの?禰󠄀豆子よ、ね・ず・こ!」
「ああ、鬼のやつだろう。だがそんなにキラキラした布ついてたか?」
「これね、娘が好きだったセーラームーンの衣装作った時に余った生地なの。キラキラがいいーっていう年頃だったから、隣の隣にあった佐々木手芸店って覚えてる?あそこで見つけてすぐに買ったの。ちょっとつけてみたのよ。藍色よ。可愛いでしょ」
「あ、ああ」
五郎は店内に目を向けた。10人くらいが談笑している。
年季の入ったカウンターキッチン。今日は、隣の八百屋で南瓜をすすめられた。そこの先代は、今、ミイラの格好をして椅子に座っている。どうやって飲食する気なんだろうか。
まあとにかく、かぼちゃのグラタンや煮物を名物のナポリタンの横に並べようとした。
パーン、パンパーン!
予想していたが、このタイミングとは。
毎年やるから、驚かすにはタイミングを変えるしかないとこそこそ話していたのは知っている。
ただ、今か。
料理を準備をしているときに、上から降ってくる紙テープ。煙が出ないのは、喘息持ちがいるからだ。
「「「誕生日、おめでとう!!!」」」
みつ子の主婦歴46年の技で、さっとテーブルの真ん中があいた。大きいショートケーキを運んできたのは、駅前のケーキ屋さんに30年勤めた友だった。
「・・ありがとう」
「あら!驚かないのね。もうこれ以上のサプライズできるかしら。みんな、来年は商店街の若い衆を連れてくるわよ!」
みんな、そうだなとかこうしたらいいとか話し始める。俺の誕生日なんてそんなものだ。だが、これがいいのだ。
明日も明後日も、来年も再来年も。
この灯りを絶やさぬようにしようじゃないか。
あとがき
読んでくださり、ありがとうございます!
場所への愛、モノへの愛。友愛。愛。藍。
ことばと様のモノカキングダム2025に参加いたします。
読み直し、書き直し、伝わるか考え、書き直し。
1人で書いていた時よりも、note始めてからの方が気持ちが落ち着いています。
日常で感じたことや出来事を、お話としてお伝えしています。
それではまた、お会いしましょう(^^)
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読んで読んでPOP、書いて書いて物語!ありがとうございます(人*´∀`)。*゚+