見出し画像

ショートショート「ゆびきりげんまん」#3つのお題に空想のひらめきを 【第18回】

片桐みかん様の企画に参加させていただきます!

お題:「風船の行方」「月の鏡」「約束の駅」



母とゆびきりげんまんしたのは、5歳の時だった。
それはまだ私が、何にも疑問を感じず、何にも影響されていない頃。
純粋に笑い、純粋に泣いた。

ある夏の日、遊園地に連れていってもらった。
とても暑い日だった。
買ってもらったアイスクリームが、口に入れる前に溶けていった。
パレードが始まり、楽しげな曲が流れ始める。
隣の小さな男の子が泣き始めた。大きい音に驚いたのだろう。スピーカーが近かったのだ。
その子のお母さんは慌てていて、ベビーカーについていた風船に手が触れてしまった。
風船は、一瞬戸惑っているような動きをした後、空に浮かぼうとした。
それを私の母が素早くつかまえたのだ。

その子のお母さんが、「すみません、すみません、ありがとうございます」と頭を下げている。
男の子は一際大きい声で泣いている。
その家族は、申し訳なさそうな顔で後ろの方に下がっていった。

ダンサーさんが曲に合わせて踊っている。
キャラクターが私に手を振ってくれた。私は手を振りかえす。
風船の行方はもうわからない。


父は笑わなくなった私に鏡をくれた。
鏡には月の模様が描かれていて、キラキラして見えた。
「これは想いの鏡。どうしても辛くなった時、この鏡を覗きなさい。叶えたかった想い出を見せてくれるだろう。そして、それは父さんが叶えてあげるからな」
そうして、父がゆびきりげんまんしてくれた。

今、月の鏡に映るのは叶えたかった想い出。
その年、母とは遊園地に行けなかった。でも、遊園地に行こうねと約束したのは本当なのだ。

15歳の私は、約束の駅に着いた。
父を待つ。
父は電車に乗ってやってくる。だって、ゆびきりげんまんしたんだから。


あとがき

叶えてあげたかった想い出、叶えたかった想い出。まだ、叶えられる想い出。

読んでくださり、ありがとうございます!
日常で感じたことや出来事を、お話としてお伝えしています。
それではまた、お会いしましょう(^^)

いいなと思ったら応援しよう!

なみあさむ 読んで読んでPOP、書いて書いて物語!ありがとうございます(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+