台風の日に。
(六月二日)
小学校が休校となった。
明日は、プールでヤゴ捕りする予定だったけれど、延期なんだろうか。それとも、休止なんだろうか。
なぜ気にしているかというと、娘は泥水とか砂場の砂とかそういうものに弱いのだ。
水たまりの水でチャパチャパ遊んだだけで、次の日嘔吐。
砂場で遊んだら、発熱。
園で、田んぼ踏みをして発熱。
園で、脱穀をして結膜炎。
全部、抗生剤を処方されてやっと治る。
最近はそういうものを避けていたけれど。
先週配信された六月の学年だよりに、ヤゴ捕りの文字が。夫と私は戦々恐々。
でも、娘はなんでもやりたがる。そりゃそうだよな……。
やりたいよね、うん。
苦肉の策で、花粉メガネを百均で買った。マスクもさせるつもりでいた。
さあ、いつでも来いと思っていたら、休校だ。
娘は悲しいだろうけど、私たちはほっと一安心。できれば、もう休止であってほしい。
是非とも。
(六月三日)
雨が轟々と降っている。カーテンの隙間から見える景色は、斜めの線で覆われていた。
娘は嬉々として休みの体勢に入った。
これはまずい。
このままだと、ただずっとゴロゴロする日になってしまう。
宿題は多めに出されているのに、やろうとする気配もない。
これはもう……あいつに頼るしかない。
インフルエンザに罹った時に、どうしようもなくなって導入したあいつだ。
ロブロックス。
ママも入れて、一緒にやりたいのと懇願されて古いスマホにダウンロード。あまりゲームをした経験がなくて、時々画面で酔ったりするけれど。
娘が心底嬉しそうだから良しとしたのだ。
「宿題を少しずつやろう。
ロブロックスは、一つ宿題終わったらやります。
ロブロックスの時間は測ります。
タイマーが鳴ったらおしまいです。
ロブロックスの時間が終わったら、また一つ宿題を頑張りましょう」
「やるぅ」
まだまだ小さな後ろ姿。時計や長さが苦手な娘がイライラして泣き出したら、口調を面白おかしくしながらゆっくり教えていく。めげてやらなくなってしまうことが怖いのだ。
漢字はなんとか自分で書けた。
すごいぞ。
トークンエコノミー法というらしい。
先日、ゲームで釣るみたいなことしていいのかなとか、ゲーム時間長すぎやしていないかとか不安なことを、日中一時支援の先生に相談した。
目標とする行動ができたら、直後に褒める・ご褒美をあげる。
これが育児として勉強として正しいかどうかはわからないけれど、娘は格段に機嫌よく宿題をできるようになった。
だから今は、私たちの最適な方法なのだろう。
それでも、ずっとゲームと宿題を行ったり来たりなんてしんどいから、そうじゃない時間を設ける。
その一つがダンスだ。
パイナポー体操、バナナ体操、ケチャマヨ体操。
一番気に入ったのが、「ちょっとだけ体操」だ。
しん先生のダンスチャンネルさんの、パンダの被り物が気になってクリックした。
娘と笑いながら踊るダンスは、楽しかった。
二回踊った。
「足がプルプルだ」と娘が言った。私は、足がバキバキだった。
特に学校から連絡がないので、明日は学校があるのだろう。
手紙をよくよく読んでみたら、ヤゴ捕りの予備日が明日になっている。
娘に明日ヤゴ捕りするのかなと聞いたけれど、わからないとのこと。連絡帳には持ち物が書かれていない。
こういう時、ママ友さんに聞いちゃったりするのだけれど、今日は聞かないことにした。
娘が言っていたのだ。
「夜だから、〇〇ちゃんいそがしいかもしれないでしょ?それはしつれい(失礼)になるから、聞かないんだ」
「そうかそうか。そうだね。そうしよう。明日はヤゴ捕りしないかもしれないけれど、サンダルとかをとりあえず持っていくでいいのかな?」
「うん、そう。持っていっても大丈夫」
成長したものだ。
以前は連絡帳に書いていないものを持っていくとなると、怒られるんじゃないかとか色々考えて、すぐに〇〇ちゃんママに聞いてー!と半泣きだったのに。
ビニール袋に、花粉メガネとマスクを入れて。
さあ、やるのか?やらないのか?
(六月四日)
少し涼しい日だった。
娘にパーカーを着るように言って、送り出す。
最近は、行き渋ることが少なくなった。席の近くにいる子たちと、仲良し四人組をやっているらしい。
その話を聞いた時、私はしっかり目を潤ませた。
名前を覚えていることにも驚いたし、仲良し四人組という言葉の響きも嬉しかった。
私の知らないところで、娘の輪が広がっていく。去年は不安が強かったけれど、今年は私も落ち着いてきた。
これからも波はあるかもしれないけれど、この思い出があるだけで乗り越えていける気がする。
そういえば、お友達の名前で気になることがある。
フルネームで言う子と、名前だけで言う子がいるのだ。気になって聞いてみたけど、ハテナ顔をされるだけだった。
先生の発音で覚えている子と、お友達の呼びかけを聞いて覚えた子の違いなのかもしれない。
みんなそうなのかな?
兎にも角にも、名前を覚えたというだけでもすごいことなのだ。
幼稚園では、二年かかっても覚えられない子がいた。
覚えたと思ってもすぐ忘れてしまう子もいた。
本当に申し訳ないけれど、幼稚園のお友達で学校が違う子は、どんなに仲良かったとしても忘れてしまっているのだ。顔は覚えているみたいだけれど。
名前を覚えたということだけでも、成長したなと感じる。小さなことだけれど、本当に嬉しいことだ。
娘が学校から帰ってきた。
どうやらヤゴ捕りをしたようだ。ヤゴ捕りセットを持っていってよかった。
ヤゴは娘の手のひらくらいの大きさで、ちょっときもちわるーいだったそうだ。そうかそうか。
とりあえず、嘔吐も発熱も結膜炎にもなっていない。
台風は、過ぎ去った。
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