短編エッセイ『おそらく魔女に近い』(#創作大賞2026)
『おそらく魔女に近い』
幼少期の記憶とは恐ろしい。
幼い私に祖母はいつも戦時中の話しをした。
戦争の話しは強烈すぎてトラウマになった。
そのトラウマは高校生まで続き、夢を見るたびに私は戦場にいた。
敵兵から隠れて逃げる夢ばかり見た。
とんでもない恐怖心を植え付けられた。
そして、そのトラウマから逃げるのではなく、
受けて立つとこにしたのは高校生の時だった。
図書室で第二次世界大戦の本をすすんで読んだ。
読んだ本の中で最も恐ろしかったのが
731(ななさんいち)部隊の分厚い本だった。
そんな祖母について話しをすると、
あまり明るいイメージの人ではなかった。
祖母はいつもお着物で
その着物は自分で仕立てていた。
私も大人になったら日常的に着物で生活をするものだと思っていたが、
どう考えても現実的には難しい。
祖母は賢い人だったと思う。
戦時中の話をする時は
幼い私に出来事の日時までしっかり伝えた。
それに、どこか非現実的な人でもあった。
祖母はネズミを飼っていたのだ。
ネズミは次から次へと増えていくので、その数は異常だった。
母屋から離れた場所にネズミ小屋はあった。
そこには、どこからともなくヘビが現れ、ネズミは餌にされた。
幼い私はネズミがかわいくて見に行ったが、
蛇が出るたびに伝えに走った。
そうすると祖母はお着物に前掛けだけをつけ
斧を持ってゆっくり歩いてくる。
そしてヘビをぶった斬ってしまうのだ。
自分も悪さをすると
祖母に斧でぶった斬られると本当に思っていた。
それゆえ、私にとって祖母は魔女に近い存在だった。
笑った顔も見たことがない。
今にして思うと、
そのかわいいネズミ達は実験用マウスだった。
実験用マウスを量産することを
彼女は生業としていたのだ。
長生きもした。
104歳まで生きた。
