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影法師たちの帰り道


久しぶりにパートナーと過ごす週末

遅く起きた朝に
マイケルの映画を見に行くことにした

自転車をこいで映画館へ
海辺で暮らすようになってから
一年くらいになる

自転車に錆がついて
なんだかこのまちに似合うようになってきた

映画館に着くと
ちょうど入場できる時間になっていた
ネット購入したチケットで入場する

紙のチケットをもぎって・・・
なんてことはもう無くなってしまったのか

ネットを使ってチケット購入できるようになった自分を
すこし誉めながら
ちょっと寂しいような気持ちになった

映画館で映画を見たのは
もう何十年も前の話だからなぁ


通路のすぐ後ろの席に座り
広告とか予告編とかを見ながら
始まりを待つ


この時期の映画館は
少し肌寒いくらいに冷房が効いている
体を冷えから守れるよう
長袖長ズボン着用(笑)で準備万端だ


プレミアム席はほとんどうまっていた
首が痛くなりそうな前方の席にも
ちらほらと座っている

自分と同年代ぐらいの人たちが一番多い
でもよく見ると
子ども連れのファミリーもいる
40代くらいの男性がひとりで
大きなポップコーンを抱えている
高校生の男子グループが
一番後ろの席を陣取った
20代のカップルもちらほら

「意外だ」と思ったが
最近は学校でダンスの時間があるそうだから
実物のマイケルを知らない
若い人や子ども連れがいても
それはそれでアリなのかもしれない


照明が暗くなり
映画が始まった
この瞬間がとても好きだ

すこし時間が経ったころ
後ろのドアがあいて
人がはいってくる

相当なお年のお爺ちゃまと娘さんか
スクリーンを横切り
一番奥の通路へ
暗いなかで係員が足元を照らして誘導している

買い物に夢中で遅れたのかな
ここは大型スーパーの中の映画館だ

またしばらくすると
ファミリーが入ってきた
10歳ぐらいの男の子が一緒だ

スクリーンを横切り
プレミアム席に座る
お父さんらしき人が
ポップコーンと飲み物を抱えていた


ストーリーは順調に進んでいる
マイケルがどんな人か知らなくても
この人の歌やダンスに魅了された人たちは
大勢いるだろう

スクリーンに見惚れていると
お爺ちゃまが通路をゆっくり横切る

「ここは冷えるからなぁ
おトイレかな」

用を済ませたらしく
戻ってくる

歩調がゆっくりなので
その間スクリーンが見えない

お年寄りにはよくあることだ
と自分に言い聞かせる


すると今度は
小さな子どもが駆け足でドアを開けて
出ていった

しばらくして戻ってくる
またしても前方を横切る

小さいからそんなに邪魔にはならない
まぁ いっか


次は若い女性だ

だからさぁ 映画館は冷えるんだよ
長袖長ズボンが基本だからね


こうしてバラエティに富んだ人たちが
通路を横切り
映画はもうすぐラストを迎える時間になった


と、そこで
どうしても我慢ができなくなったのか
先ほどのお爺ちゃまが
また
通路を横切る

続いてご年配の女性も・・・

マイケルの映画が終わった


スクリーンを横切る人たち
大きいのから小さいのまで
さまざまな年代のさまざまなシルエットが
私の目にしっかりと焼きついた


部屋を出て
通路を歩いて出口へ向かう

そこには上映している映画の
巨大ポスターが貼ってある

「ちいかわ」ポスターの前で
両手を胸のあたりで組んで
ポスターに向かって何か喋りかけている男性がいた

目がキラキラしてとても嬉しそうだ

なんだかちょっとほっこりしてしまった


目に焼きついていた影法師たちが
ちょっとずつ薄くなっていくような
そんな気がした



通路の終わりには
マイケルのポスターも貼ってある

ポスターの前でカップルがポーズをとって
通行人に写真撮影をお願いしている

旦那さまはどうやらアメリカ人
奥さまは日本人か
どう見ても60代だ

なんて素敵なカップル!
パートナーと顔を見合わせて
笑顔になった

僕たちも撮るかい?
そう聞かれたが
さすがにそれは遠慮しておく


映画は私には少し物足りなかった

でも

映画館に集まった人たちは
とても魅力的だ

遅れてくる人

途中で席を立つ人

ポスターに話しかける人

記念写真を撮る人

みんなそれぞれの人生を生きながら

それでも同じ映画館に集まっていた

私はその光景を

たぶん映画よりも
面白く見ていたのだと思う



また 海辺でお会いしましょう


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