ゴミ箱の容量と、存在の重さ
ナースステーションのゴミ箱が、限界まで膨らんでいた。
「手が空いてたら、ゴミ捨てお願い」
ただの業務分担だ。他意はない。
「……僕が、この病棟で一番のゴミだからですか?」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「いや、物理的にゴミ箱がいっぱいってだけの話だよ」
「僕ごと廃棄してほしい、というメッセージとして受け取りました」
理解に苦しむ跳躍だった。ポリ袋の容量と、人間の存在価値。その二つに、いったいどんな回路が繋がっているのか。
「君の存在価値と、ポリ袋のキャパシティをリンクさせるな。頼むから」
「わかりました。僕は、ゴミとして生きていきます」
決意されても困る。誰もそんなことは望んでいない。
「そうじゃなくて、普通に捨ててきてほしいだけなんだ」
星野は無言でゴミ袋を縛り、どこか清々しい顔でステーションを出て行った。
残されたのは、何も解決していない空気と、僕の疲労だけだった。
――あの決意に満ちた背中を見送りながら、僕は自分がとんでもない発言をした加害者のような気分になっていた。事実は、ゴミ箱がいっぱいだった。それだけのはずなのに。
