神聖なる昼休憩の「抜き打ちカンファレンス」
12時02分。お湯を注いだ。3分後、カップ麺は完成する。
それだけを考えていた。
「あ、みんないる!ちょうどよかった!」
新庄先輩が、A4の紙を持って休憩室に入ってきた。
「昨日の急変対応、せっかくだからデスカンファ(振り返り)やろうよ!学びのチャンスじゃん!」
「先輩」と僕は言った。「今、休憩中です」
「わかってる!でもみんな揃ってる時間って、なかなかないじゃない!」
「労働基準法第34条。休憩時間は、労働から完全に解放されなければなりません」
「成長の話してるんだけど」
「カップ麺が伸びます」
「そんなの後で食べれば——」
「3分計りました。今2分45秒です」
新庄先輩は、僕のカップ麺をじっと見た。それから紙を机に置いた。「……お前、ほんとに来ないの?」
「来ません」
「〇〇さんの急変なのに」
「〇〇さんのためにも、適切な休憩を取って午後の業務に臨む方が合理的です」
そのとき、僕以外の二人が、ため息をついて立ち上がった。「まあ、ちょっとだけなら」と一人が言った。
新庄先輩の顔が、また輝いた。
休憩室に僕一人が残った。3分が経過した。麺を啜った。
30分後、カンファから戻ってきた同僚が言った。「良かったよ。新庄さんの振り返り、けっこう深かった。〇〇さんのご家族への対応、次に活きそう」
そうですか、と僕は言った。
正しいことと、良いことは、時々ひどく遠い場所にある。僕はそれを、伸びた麺を噛みながら考えた。
