「おみやげはもうずっとこれがいい」と三度は言われた不思議なギモーヴの話
「あなたから貰うおみやげは、もうずっとこれがいい」と言われたことがある。それも三度、別々の人から。
それが、もみじまんじゅうの老舗・藤い屋の「淡雪花」(あわせつか)。
雪華模様が箔押しされた化粧箱の上品な白さと、雪輪の形からお菓子が覗くパッケージが静かに目を惹くお菓子で、年齢を問わず色んな人への贈り物にしてきた。

淡雪花は、おみやげとしてお渡ししたときに「これはいったいどういうお菓子なんですか?」と首を傾げられることもしばしばだったりする。
ふわっとしたギモーヴでレモン羹を挟んだお菓子です、と説明するのが通りがいいような気はするものの、いわゆるギモーヴっぽさはない。実際に、「私の知ってるギモーヴと違うんですが……」と不思議そうな顔をする人も少なくない。いつも、「そうなんですよ。食べてみていただくのが一番わかりやすいかと」と返すことにしている。

それというものの、淡雪花は不思議な食感をしている。
口に入れると、最初は雪のように表面にまとわされた氷餅の、しゃりっとした儚い食感に驚かされる。そのままふわんとしたギモーヴに歯を立てると、弾力のあるレモン羹にたどりつく。まさに「しゃり、ふわ、ぷるん」というキャッチコピーの通りで、異なる三つの食感とほんのりと甘いギモーヴと爽やかなレモンの風味が上品な余韻を残して消えていく。
そっと口にいれた瞬間から呑み込んだ後の余韻までふんわりと上品で、何度も食べているはずなのにどこか新鮮な気持ちがしてしまう。何というか、一つ食べ終えた後に心地よい風が通り過ぎた後のような一瞬の余白が残る気がしている。この感覚を自分以外の人にも感じてほしくて、おもたせにしているのかもしれなかった。
はじめて食べたときから随分経つのに、ほかに似たお菓子を知らないでいる。淡雪花は、そんな不思議なお菓子なのだった。
……とはいえ。
「おみやげはもうずっとこれがいい」と言ってくれた人のために淡雪花を買いつづけていると、たまに悩むことがある。そう言っていたのはもうだいぶ前のことだし、今は気分が変わっているかもしれない。それこそ、『魔女の宅急便』のニシンのパイみたいに知らないところで「私このお菓子飽きたのよね」みたいに思われているのでは……? と。デイリーなおやつの一つとして淡雪花を食べ続けているものの、おみやげにこだわる派としてはどうにも気に掛かる。
たまに不安になって、「いつものおみやげだけど、本当に飽きてない? 次から違うお菓子にしたほうがいいなら、教えてもらえるとうれしい」と言いながら渡す。でも毎回、「本当だって! 親戚へのおみやげに自分で買ったくらい今も好きだし」と返ってくるので、「おみやげはもうずっとこれがいい」は今も変わらず続いている。淡雪花、本当にすごいお菓子だなあ。

淡雪花が好きなことには、この端正なデザインも大いに影響している。
銀の箔押しが上品な化粧箱は2個入りから用意されていて、2個520円と手頃な価格ながらきちんとした印象が出るので、目上の方へのおもたせからたくさん手土産が必要なときまで使いやすい。
藤い屋の淡雪花やもみじまんじゅうといったお菓子は同じ規格で作られていて、化粧箱の中で好きなお菓子を組み合わせられるようになっている。一つの商品として魅力的なのはもちろん、お菓子を贈る、贈られる人にまで目線が行き届いているのが心地よいなと思う。
あと、私は長らくもみじまんじゅうは藤い屋一択の強火担で、ほかのところのもみじまんじゅうを買ってきてと言われたときにかなり渋ってしまったという前科がありまして……。そのくらい、藤い屋の味が好き。おいしい。
淡雪花は、ピエール・エルメコラボのイスパハン(限定)をはじめ、今ではほかの味も展開されている。でも、おすすめはやっぱりこのスタンダードな淡雪花。食べるたびに何だか不思議な余韻を感じる広島のお菓子、機会があればぜひ一度食べてみてください。
(公式がAmazonにも出店していますが、暑い時期はおそらく在庫切れのままかと思います。公式からどうぞ)
いいなと思ったら応援しよう!
お読みくださりありがとうございます。いただいたチップは、日々の本代や読書時に飲む紅茶の茶葉に使わせていただきます。