贅沢って、こういう時間なのかもしれない。万平ホテルで過ごした午後
「贅沢な一日だったな」
一日の終わり、そんなことを思いました。
高価なものを買ったからでも、特別な予定をいくつも詰め込んだからでもありません。
夫とケーキを食べて、愛犬と歩いて、家に帰ってサウナに入った。
振り返れば、とても穏やかな一日でした。
それなのに、今日はいつもより少しだけ、心が満たされていました。
朝ごはんを食べたあと、夫と万平ホテルへ向かいました。
目的は、楽しみにしていたアップルパイ。
ホテルの入口に着くと、それまで歩いていた軽井沢の景色から、空気がすっと切り替わるような感覚がありました。

長い時間を重ねてきた建物ならではの重厚感。
木のぬくもりや落ち着いた照明、クラシックな家具。
派手に「特別です」と主張しているわけではないのに、そこにいるだけで自然と背筋が伸びるような、静かな品がありました。
新しくて華やかな場所も好きだけれど、時間を重ねてきたものにしか出せない美しさもあるんだなと思いました。
夫は季節のタルトを。
この日はブルーベリーでした。
私はアップルパイとハーブティー。

りんごの優しい甘さと、パイの香ばしさ。
ハーブティーを飲みながら、ゆっくり味わいました。
向かいには夫がいて、それぞれ好きなケーキを食べている。
会話が途切れる時間があっても、それさえ心地よくて。
「こういう時間、好きだな」
ふと、そう思いました。

昔の私は、「幸せ」とか「贅沢」というものを、もっと大きな出来事の中に探していたような気がします。
特別な場所へ行くこと。
欲しかったものを手に入れること。
何か分かりやすく嬉しいことが起こること。
もちろん、それも幸せです。
でも最近は、幸せってもう少し静かなものなのかもしれないと思うようになりました。
好きな人と同じテーブルを囲んでいること。
おいしいものを、急がずに味わえること。
素敵だと思った場所を、素敵だと思える心の余白があること。
今日の万平ホテルでの時間は、まさにそんな時間でした。
帰りには、万平ホテルとFEILERのコラボハンカチと、クッキー缶を二つ買いました。

可愛らしい水色の缶を見ながら、
「家に帰ってからこれを見るたびに、今日のことを思い出すんだろうな」
と思いました。
旅先のお土産って、物そのものを持ち帰るだけではなく、その日に感じた空気まで少しだけ家に連れて帰れるものなのかもしれません。
そのあとはアウトレットへ行き、愛犬のお散歩をしました。

さっきまで歴史あるホテルで静かにお茶をしていたのに、今度は芝生の上を楽しそうに歩く愛犬を眺めている。
その落差がなんだか可笑しくて、でもすごく私たちらしい一日だなと思いました。

家に帰ってからはサウナへ。
身体を温めながら今日一日を思い返していると、じんわりと満足感が広がってきました。
特別な場所に行ったことも嬉しかった。
おいしいアップルパイも、可愛いお土産も嬉しかった。
でも今日いちばん贅沢だったのは、もしかするとその全部を急がずに味わえたことだったのかもしれません。
幸せは、いつも大きな音を立ててやってくるわけではない。
静かな場所で飲んだ一杯のお茶だったり、
隣にいる人と交わした何でもない会話だったり、
芝生を嬉しそうに歩く愛犬の姿だったりする。
そして、それを「幸せだな」と思える自分でいられること。
今日の私にとっては、それがいちばんの贅沢でした。
