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何もしない、デートを。

妻とデートした。
いつ振りだ?いつかわかんないくらい振り、だな。

いや、デートって、そんな気取ったものではなくて、
普段着のまま、無精髭も剃らず、近所のモールの書店併設のカフェで数時間。二人、差向いで読書するだけの、なんか、その、地味な時間。

開放的な明かりの降り注ぐ、エアコンの効いた店内。深煎りの豆の香りが鼻をくすぐるが、大腸ポリープ切除直後のためコーヒーは自粛。軟弱な横文字のジュースをトレイに、妻は抹茶の何か。

新聞の書評にあった本を書店からカフェに持ち込み、差し向かいに座り、時々互いの様子を伺いながら、妻は私のことをどう思っているかなど何もわからないが、当方は勝手に好意を送り続けることしばし。

多動の私はほどなく同じ姿勢が耐えられなくなり、肩を伸ばしてみたり、肩甲骨を前後させたり。一方の彼女は時々視線を泳がす以外はとりたてて動いたりもせず、ひたすらページを繰り続ける。

言葉の生まれない空間。周囲の喧騒と、本にピントを合わせているため輪郭だけになった彼女の横顔と、豆の香りと、オレンジの苦甘い風味と、薄いクッションに悲鳴を上げる腰と。

「ちょっと出かけるけど、( 私 )くん、どうする?」
嬉しかったな。何かの時に、一緒に時間を過ごせるの、嬉しいな。

外に出ると、台風の合間の小糠雨。
急ぐ理由もないので、少しだけ歩く。


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