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「爆弾級」の問題作 映画『名無し』

映画『爆弾』然り、佐藤二朗によって見る闇はどこまでも曖昧で、それでいてどこまでも現実味がある。

〈概要〉
右手で触れた瞬間、相手は消え、死が訪れる-。
世にも奇妙な凶器なき犯行と謎に包まれた動機。その過激なテーマと特殊な世界観ゆえに、一度は封印されかけた物語を生み出したのは、『爆弾』(25)の怪演で第50回報知映画賞の助演男優賞を受賞し、唯一無二の個性を放つ佐藤二朗。自ら漫画原作を手がけ、原作・脚本・主演を兼ねる実写映画となった。

 この危険な世界に身を投じる共演者にも大胆不敵なアンサンブルキャストが顔を揃えた。容疑者の名付け親となるキーパーソンには、人間味の滲む存在感で近年俳優としての評価を高め続ける丸山隆平。容疑者の最大の理解者にしてトリガーでもある正体不明の女性には、異色のヤンキー恋愛リアリティショー「ラヴ上等」などでプロデューサーとしても辣腕をふるうMEGUMI。異常な執念で容疑者を追う刑事には、駆け出しの頃に同じ演劇畑出身の佐藤と切磋琢磨した佐々木蔵之介が、“同志”の熱望に応えて駆けつけた。監督は『嗤う蟲』『悪い夏』(25)などで知られる当代屈指の映画職人・城定秀夫がつとめ、劇中に仕掛けられた歪みとタブーに潜む闇をえぐり出す。

 見えない刃が光るとき、切り裂かれたスクリーンの向こうから、名もなき怪物の未知のうめきが聞こえてくる。

映画『名無し』公式HP

特殊な右手は、名前を知るものに触れると、その命を奪ってしまう。
生まれつきか、後天的に発症したものかは明かされていないが、恐らく生まれもっての、ある種の特殊能力だ。

その能力はあまりに理不尽で、不条理で、それを抱えさせられた山田太郎(佐藤二朗)はもしかしたら、この世で最も生きづらい人間かもしれない。

そんな特殊な事情や環境の中にいる山田太郎に、我々はつい同情の気持ちを向けようとする。
しかしそこで、真っ当な感覚を持つ刑事の国枝(佐々木蔵之介)の台詞により、山田太郎が行ったことの惨さを再認識する。
どんな事情があろうとも、彼のしたことは許されることではない。本作において、山田太郎に同情する一歩手前でハッキリと線引きをしてくれた国枝の存在は大きい。

本作は奇抜な設定と凄まじい画で観る者に強烈な印象を持たせるが、鑑賞後、冷静に考えてみると不明点が多い。
何故、山田太郎の右手はああなのか、事件の動機はなにかなどの基本的な謎から、山田太郎の親、出生、花子(MEGUMI)の存在などなど、数えたらキリがないほどの謎がある。
作中では山田太郎の幼少期や過去の出来事、現在の生活が主として映されているのに、その全てが不自然なまでに曖昧に描かれている。

それは、観る者に「ハッキリとした山田太郎像」を描かせないためではないだろうか。
山田太郎を細部まで描きすぎると、観客はそれに従って頭の中で山田太郎の輪郭をはっきりさせ、彼を確立された人物として見てしまう。
しかし恐らく、本作における作り手の目的はそうではない。
作り手側は、山田太郎に自分(観客自身)を投影してほしいと考えたのではないだろうかと推察する。

あなたがもし、山田太郎のような特殊な右手を持つ人間だったら、自力ではどうにもできない環境に生まれたら、この世界をどう生きる?
そう、投げかけて来ている気がしてならない。

「名無し」は、今もどこかで、孤独を抱えて生きているのだろう。


1997年生まれ、丑年。
とにかく映像作品が大好き!
映画、ドラマ、バラエティ、ニュース、CMすべて。
※ホラーを除く
noteでは、主に映画の感想をのらりくらりと記しています。
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