【第8話】兄は、2時間手を洗い、そのあとも終わらなかった。
もし、
「もう十分きれいなのに」と思いながら
やめられなかった経験があるなら、
この話は少しだけ分かるかもしれません。
これは、兄の手の話です。
兄は、お風呂に入らなくなりました。
でも、
手は洗う。
石けんで、何度も。
洗って、
流して、
また洗う。
1回では終わらない。
10回でも終わらない。
気づけば、
2時間近く経っていることもありました。
蛇口の水の音だけが、
家の中にずっと響いている。
シャー…という音が、
静かな家に残る。
手は赤くなり、
荒れて、
ひび割れていました。
それでも洗う。
そして、
それで終わりじゃなかった。
洗い終わったあと。
兄は、
手と手を強く叩き続けました。
パンッ、パンッ、と。
30分以上。
まるで、
まだ汚れが残っているみたいに。
何かを振り払うみたいに。
その音が、
家の中に響く。
パンッ、パンッ。
止まらない。
当時の僕は、
正直、怖かった。
そして、
イライラもしていました。
「もうきれいやろ」
そう何度も思った。
でも今は、
少しだけ違う見方をしています。
兄は、
何を落とそうとしていたんだろう。
汚れ?
それとも、
見えない不安?
家は、
整っていませんでした。
屋根は抜け、
雨が降ればバケツを並べる。
物は増え、
空気は重い。
もしかしたら兄は、
“完璧にできる場所”を探していたのかもしれない。
それが、手だったのかもしれない。
全部を完璧にしようとする人ほど、
心の中が揺れていることがある。
僕はそれを、
兄から学びました。
だから今、
僕は70%でやると決めています。
全部をきれいにしなくていい。
全部を正しくしなくていい。
壊れない程度でいい。
あの水の音と、
叩く音。
今でも思い出します。
でもその音は、
僕に「ほどほどでいい」と教えてくれました。
この経験が、
今の僕の“70%思考”につながっています。
詳しくは、後半でまとめます。
次は、
椅子から動かなくなっていった兄の話です。
人生70% Things will work out きっと大丈夫 上手く✨
