2026年7月8日 医療なんわか配信
「薬を安くすると、薬が届かなくなるかもしれない」——そんな逆説が、今日の中医協で正面から論じられた。医療費を抑制するための薬価改定が、医薬品の安定供給を逆に脅かしかねない。制度のツールが目的を裏切りかねない、そんな緊張感が今日のニュースにはある。
今日の注目ニュース
1. 2027年度薬価改定「実施を前提に」——対象品目の検討が始まる
厚生労働省は7月8日、2027年度に薬価改定を実施することを前提に、対象品目の範囲や適用ルールを検討する方針を中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会に示しました。関係業界からの意見聴取を経ながら議論を深めていく予定です。
少し背景を整理すると、薬価の見直しは2年に1度の本改定と、その間の「中間年改定」(奇数年度)の2種類があります。2027年度はその中間年にあたり、実施するか否か、何を対象にするかが論点になります。
ポイントは日本医師会の委員がこの場で発した言葉です。「薬価改定で医薬品の供給が再び悪化すれば意味がない」——これは、近年続くジェネリック医薬品の供給不足問題を念頭に置いた発言です。薬の値段を引き下げすぎると、製薬企業が採算を取れずに生産を縮小するリスクがある。費用抑制と安定供給を両立させる「対象品目の選定」が、これからの議論の最大の焦点になりそうです。
かかりつけ薬局で「在庫がありません」と言われる場面が増えている方も多いのではないでしょうか。その背景には、ジェネリック医薬品の供給不安定という構造問題があります。来年度の薬価改定論議は、その解決と費用抑制の両立を迫る、難しい舵取りになりそうです。
2. 「人手不足解決のためのDXは続かない」——高齢社会DX協会がシンポジウム
一般社団法人・高齢社会DX協会の設立記念シンポジウムが都内で開かれ、厚生労働省・経済産業省・介護事業者の代表者が2040年問題への向き合い方を議論しました。2040年とは、高齢化が本格的なピークを迎え、介護人材の不足が最も深刻になると予測される時期です。
注目すべきは「効率性の追求だけではDXは定着しない」という見解が出たことです。人が足りないからAIやロボットで補う——そういう発想で技術を導入しても、現場の働き方そのものが変わらなければ定着しないという指摘は、現場の実態をよく知る声です。
あまり意識しないかもしれませんが、これは介護だけの話ではありません。医療現場でも電子カルテや画像診断AIの導入が進んでいますが、「入れただけ」で終わってしまう例は少なくない。技術が効果を発揮するには、使いこなせる組織文化と人材育成がセットで必要です。「高齢社会DX協会」という新しい組織の設立は、そうした教訓を踏まえた実践の場として注目したいところです。
3. 国際モダンホスピタルショウ2026が開幕——310社が医療の未来を並べた
7月8日、東京ビッグサイトで「国際モダンホスピタルショウ2026」が開幕しました。今回は310の企業・団体が出展し、3日間で約35,000人の来場が見込まれます。
この展示会は国内最大級の医療総合展示会で、AI診断ツール、電子カルテシステム、看護支援ロボット、医療物流の自動化など、病院運営に関わる最新技術が一堂に会します。今年は「医療AI」と「医療DX」が主要テーマとなっており、各社のソリューションが競い合っています。
直接の影響がすぐに出るわけではありませんが、今日の展示会で選ばれた技術は、数年後には実際の病院やクリニックに導入されていきます。「受付が自動化された」「診断がより速くなった」「処方履歴がどこでも確認できる」——そういった変化の種が、この場で蒔かれています。私たちが医療を受ける体験が、少しずつ変わっていく。その入り口がこうした展示会です。
医療なんわかより
今日の3本を貫くのは、「変化のスピードのズレ」という問いだと思います。展示会には最新技術が並ぶ。でも制度設計は費用抑制と供給安定の板挟みで難航し、現場への定着には文化の変革が必要になる。技術を「つくる側」・制度を「整える側」・現場で「使う側」、それぞれのリズムが合わないことの難しさをあらためて感じました。
日本の医療は本当に優れた仕組みを持っていると思っています。だからこそ、この「ズレ」を小さくしていく工夫が、次の10年でいちばん問われるのではないか。明日もよろしくお願いします。
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