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構造を変える側に回る──UPSIDERとみずほの“戦わない”共創

執筆者:株式会社UPSIDER Capital 代表取締役 石神直樹

「UPSIDERがメガバンクにグループインする」――
その一報に、違和感を持った方もいたかもしれません。
「UPSIDERらしくない」「なぜ共創を選んだのか」。

しかし私たちは、“戦わない”という選択こそが、構造を変える最短ルートだと考えました。これは、祝福されるゴールではなく、金融インフラに“手を入れる側”に回るという、勝ち筋があると合理的に判断した「新しい始まり」に他なりません。

これまでの延長線上にない決断だからこそ、UPSIDERは今、「違う景色」に立っています。
それは、単なるプロダクトの進化や資金調達の話ではありません。これは”立ち位置の地殻変動”であり、会社が「何を目指すか」を鋭く問われる瞬間です。

本noteでは、共創の裏側、そしてともに描いてきた未来について、UPSIDER創業期にジョインし、カード事業の責任者を経てベンチャーデットの立ち上げから本ディールまでを主導してきた私自身の視点から率直に綴っています。

読み終えたとき、きっとあなたも思うはずです。
「これはゴールではなく、始まりだ」と。
それでは、お付き合いください。


【第一章】 合理的な共創の意思決定

みずほとの対話は、2021年頃から継続的に行ってきました。 当初は他の金融機関と同様、情報交換レベルの接点も多く、慎重な関係構築の段階に過ぎませんでした。

しかし時間とともに、会話の中身が変わっていきます。ファンド運営、API連携、与信モデル、プロダクト思想──議論は次第に本質に踏み込んだものになっていきました。 その中で明確になったのは、両社が補完しあえる論理構造の存在と、共通する未来志向でした。

それを象徴する取り組みとなったのが、UPSIDERとみずほの合弁事業として始動したスタートアップ向けデットファンド「UPSIDER BLUE DREAM Fund」です。2023年8月、みずほの会議室で行われた初回のキックオフミーティング。実務者を交えたその場で、私は「ローンチは今年11月を目指します」と宣言しました。室内に漂った「本気か?」という空気。それを合図に、互いの温度が一気に上がり、全員が同じ方向を向いて動き出した瞬間でした。結果、構想からわずか約3ヶ月でローンチ──通常は1年かかるとされるプロジェクトを、異例のスピードで形にしました。

ある日の打ち合わせで、みずほの担当役員がふと漏らした言葉があります。
 「UPSIDERは絶対にネクストアクションと期日を握ってくる。逃がしてくれない」

それは単なる厳しさの指摘ではなく、目標に向けて決して手を抜かない“本気の伴走者”としての評価でした。UBDFを通じて築いたのは、単なる取引関係ではなく、遠慮なく意見をぶつけ合える関係と、未来に対する揺るぎない共通認識でした。

2023年12月のFundローンチは、その信頼関係の証であり、次のステップへの助走でした。そこから協働の密度はさらに増し、2024年11月には2号ファンドへの出資が決定。そして、その延長線上にあるのが、今回の発表です。

通常であれば、こうした協業や資本関係の構築には半年以上を要するのが通例ですが、私たちは今回も本格検討からわずか3〜4ヶ月での発表に至っています。

夜中まで続いたメールの応酬、NYにいるメンバーに合わせた22時スタートの定例MTG。ただスピードを重視するだけでなく、妥協せず本質を詰め切る夜が続きました。そんな日々を積み重ねながら、全員が“共創を現実にする”という同じ未来に向かって動いていた──その確信が、今回の意思決定を後押ししました。

“みずほは大手だから時間がかかる”──そんな先入観を良い意味で裏切るスピード感が、私たちにとって共創可能性を確信させる決定打となりました。

そして私たちは、事業成長と構想の実現に必要なパートナーとして、みずほを選びました。 「競合や主従ではなく、武器を預け合う関係を築く」。 これは理想ではなく、今まさに進行中の現実です。その瞬間から、共創は既に始まっていました。ただ手を組んだのではありません。私たちは、未来を同じ構想で見つめ始めていたのです。


【第二章】 信用の定義を、更新する


急成長していても、債務超過というだけで融資を断られる。

決算期に一時的な赤字が出ただけで、「信用がない会社」と判断される。
── こうした“構造的な理不尽”を、私たちは現場で何度も目の当たりにしてきました。 

日本の金融は、いまだに“過去”を基準に信用を判断する仕組みが常態化しています。

固定資産、資本金、長い取引履歴──その多くは、挑戦の現在地や未来の可能性とは切り離された指標です。

もちろん、過去を基準にすることが有効な場面もありますし、そうした基準に基づいて信頼を築いてきた先駆者たちを私たちは本当にリスペクトしています。

しかしながら、それだけでは新たな挑戦者を支えるには不十分な局面が増えてきました。

だからこそ私たちは、この「信用」という概念を、今の時代に則した形に再定義したいと考えています。

UPSIDER Capitalのファンド運営を通じて取り組んできたのは、過去の実績や形式的な財務指標ではなく、「リアルタイムのキャッシュフロー」や「未来のシナリオ」に基づく与信モデルです。

言い換えれば、“過去の延長ではなく、未来の可能性”に投資する仕組みをつくってきたのです。 

そこに、みずほが持つ制度設計や運用ノウハウが交差したことで、構造の合理性と実行力の両面が飛躍的に洗練されました。 実際の金融プロダクトとして社会に実装する土台が整い、より精度高く、よりスケーラブルな「新しい信用スキーム」が現実味を帯びてきたと感じています。 

私たちの役割は、「こうすれば信じられる」という合理的な構造を定義し、 感覚や感情ではなく、データと仕組みによって“信用を解放する”ことです。 
それが、私たちUPSIDERが担うべき責任であり、存在意義だと考えています。 

そしてそれは、累計決済額6,500億円のキャッシュフロー審査、 累計130億円のキャッシュフローを重視したベンチャーデットを担ってきた私たちだからこそ、実行できることだと確信しています。


【第三章】 自分がなぜこれをやるのか

合理的な仕組みを組み上げることと、それをやり切る人間であることは別です。 創業初期メンバーとして、そしてこの構想を初期から推進してきた人間として、私はその重みを痛感してきました。 だからこそ、私はこの挑戦に、自分自身の時間と責任を投じています。

この産業を変える。この構想を進める。そして、このフェーズで勝ち筋をつくる。 ── そう覚悟を決めて立っているからこそ、譲れない場面がいくつもありました。

実際にみずほ側の担当者にファンド出資を打診した時には「この条件は通らないと思う」と言われた項目もありました。それでも、私が「ここだけは曲げない」と押し通し、最終的に望んでいた設計思想を実現できるように着地できたと考えています。

挑戦者を後押しできる設計にするために、しっかりと説明し納得していただきたいと心に決めていたポイントが3つありました。

1つ目が、デットファンドにおけるコベナンツ設計です。 従来のバランスシート基準ではなく、私たちが構築したキャッシュフローに基づくものを採用すること
2つ目が、意思決定のスピードを落とさない体制
3つ目が、最後に1件当たり実行額がデカいこと

もしここが説明できなければ、構造が変わらないことは分かっていました。結果として、既存の金融機関と変わらない仕組みになってしまう。それだけは避けたかったのです。 

それは、単に条件を通すこと以上の意味がありました。この信用を再定義し、挑戦者が正当に評価される金融構造をつくるというテーマに、私は強く責任を感じていました。

そしてそれを「誰かがやらなきゃいけない」では終わらせたくなかった。だからこそ、ここにこだわり、今の仕組みのファンドを組成することが出来ました。そして、これが達成できたのは自分の性格や背景が、この構想と“噛み合っていた”からだと思っています。

私は短気なところもありますが、粘り強く、検証を重ねるタイプの人間です。 派手さよりも堅牢さを選ぶ。 だからこそ、金融のように一見動きが鈍そうに見える世界において、 「構造を変える側」に回ることに意味を感じたのです。

そして、これまでの積み重ねが評価され、構造そのものに手を入れられるという打席に立てるチャンスを得た。大きな責任とともに、これを逃すわけにはいきませんでした。

だからこそ私は今、この構造の“中”で、本気で変化を起こそうとしています。  

社会を変えるには時間がかかる。 それでも、私たちは“待つ側”ではなく、“進める側”であり続けたい。  未来の金融の“当たり前”を、自分たちの手で作り上げていきます。


【第四章】 戦略的不可侵──「戦わない」ことを選ぶ合理性

スタートアップの美学として、「独立独歩で行く方が格好いい」といった価値観があることは承知しています。 しかし、それに固執する余裕は今の私たちにはありません。

社会の構造を本気で変えたいなら、時間がかかることも、反発があることも覚悟した上で、最も早く着実にたどり着ける手段を選ぶべきです。

共創とは、まさにその“最短ルート”でした。

大企業との共創は、妥協ではなく戦略。 プライドではなく合理性。合意ではなく目的への役割分担です。

「戦わずに進む」という選択は、傷を避けるためではなく、 目的に対して、遠回りせずにたどり着くための現実的意思決定です。

みずほとの関係性は、買収でも、提携でも、出資でもない。 それは一見「中途半端」に見えることもあるかもしれません。しかし、私たちは、型に当てはまらないからこそ実現できる“構想の共有”があると信じています。

それが、“戦わずに進む”という戦略的選択です。

過去の金融業界では、「どちらが買うか・売るか」「どちらが勝つか」が重視されてきました。 しかし私たちは、“正しいことをやるために、あえて戦わない”というルートを取った。

私たちが目指しているのは、金融の仕組みがもっと人にとってマシなものになること。 そして、それを構造として証明すること。

その実現に必要なのは、対立ではなく協調、駆け引きではなく構造、 そしてそれらを活かした“信用”のアップデートです。


【最終章】 これからを、構造で変える

これからの数年間、私たちは共創の成果をプロダクトとスキームとして世に出していきます。

中小企業の資金調達が、無駄なやりとりなく、シンプルかつ高精度に進む世界。 信用の可視化が、誰かの可能性を正当に評価する世界。

そのインフラをつくるのが、私たちの仕事です。

これまでの金融機関が構造的に救えなかった挑戦者が、スタートアップだけでなく中堅企業でも、金融の力で押し上げられるようになる。 今まで資金調達に2週間かかっていた企業が、キャッシュフローを元に即日で審査を通過し、機会を逃さず事業に挑めるようになる。 

そして、その変化を“制度”として、日本全国に届けられるのが、みずほとの共創なのです。 あなたの会社、あなたの周りの会社も、もしかしたらこの仕組みで未来が変わるかもしれない。そうなるように、私たちの挑戦はこれからも続いていきます。 “UPSIDERらしい進め方”は、感情や理念や名称ではなく、構造と実装によって語られるものだと信じています。

その構造を描き、実装していく責任の一端を担う者として、私はこの共創を「次のステージの起点」だと捉えています。 だからこそ、この共創も、最終的には「良い話だったね」ではなく、 「社会が少し前に進んだ」と言ってもらえるような、現実の成果で語られたい。

その第一歩を、静かに、しかし確実に踏み出しました。

この共創は、EXITではなく、NEXTそのものです。

UPSIDERが「次のステージ」に立ち、社会を変える“構造側”に回る、その意思を明確にする一手です。

そしてすでに、次の打ち手は始まっています。


▽特説サイト(みずほフィナンシャルグループへの戦略的グループインについてはこちら)

▽カジュアル面談

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