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2025年大波乱のUKラップシーン統括




まず初めに

2025年の音楽シーン全体を振り返った時に、ぼんやりしていたなと感じる人も多いと思う。去年はケンドリックとドレイクのビーフ、チャーリー・XCXのbrat旋風、タイラが響かせた南アの音、ヒップホップに関して言えば、スクールボーイ・Q、グロリラ等のラップ作品も良作ばかりだった。

今年はケンドリックのハーフタイムショウで始まり、ポップミュージック全体でそこからあまり目立った動きは見られず。去年が盛り上がりすぎただけだったのか。何度もそう思ったが、新たな波はアメリカ国内中心のシーンではなく、大陸を渡ったイギリスですでに起きていたのだ。しかし、国内のTLを日々観察していると、ごく一部を除いてその盛り上がりがあまり響いている感じはなく、なんならエスディーキッドやFimiguerrero等のハイパージャーク系に関しては、EDM畑寄りの人たちの方が熱心に聞いていたように思える。

今年私が何度ジム・レガシーの名前をメンションし、今年のUKラップシーンは様子がおかしいと、うるさいほど言っていたことはわかると思う。大袈裟に言えば、グライム盛況時の2015年くらいの盛り上がりの熱が、今のUKシーンからは感じとれる。下半期はほぼUKシーンだけを注視していた。その体感を、書き殴っていく。


ジャンルを再解釈するラッパーたち


Jim Legxacy (ジム・レガシー)

すでに知っている人も多いであろうジム・レガシーは、今年のUKシーンで最も活躍を見せたと言える。「新たなデヴィッド・ボウイ」を宣言する彼はすでに発表されている各海外音楽メディアの年間ベスト等でも高評価、ファンターノが"stick"を今年のベストソング1位に選んでいたことも記憶に新しい。

via Jim Legxacy's instagram spam account


ロンドン南東部出身で、2023年にリリースしたミックステープ『homeless n*gga pop music』ですでにその才気を発揮していた。彼自身ホームレスだった期間もあり、セントラル・シーとデイヴの"Sprinter"をプロデュースしたことで、その名が広がる。

via Jim Legxacy's X account

彼の最大の特徴は、文脈を無視した音楽ジャンルの融合に、フランク・オーシャン的なアプローチとも言えるエモーショナルな歌唱だ。例えば"miley's riddim"ではマイリー・サイラスが普通の女の子とアイドルを演じたディズニーチャンネルの映像作品、ハンナ・モンタナから"ordinary girl"をまんまサンプルし、一見サグな見た目のブリティッシュラッパーとアメリカのキッズアイドルというネタが大きく受ける。この曲、すごく感動的な曲とかでもないのに涙腺が緩む。

ここ数年はステレオタイプな黒人音楽にレーベルされることに消極的で、インディロックをアルバムに1曲は入れたりするラッパーも珍しくないが、ジムも『black british music』より"new david bowie"では、ニューヨーク出身のアーティスト、ジョン・ベリオンの"WASH"をサンプルしており、このアイディアは亡くなった妹さんのお気に入りの歌だったことからだそう(ちなみに今作自体が妹さんに捧げた作品という一面が強い、アルバムカヴァーでジムが担いでいるのは棺)。インディロックからアフロビーツ、グライムと、さまざまな文脈からつぎはぎするように自分の音楽を作ることで、新しいサウンドが生まれているのだ。


また、行われたツアーもかなりの盛り上がりを見せた。半分くらいの楽曲をファンが熱唱し、ジム・レガシー自身も身を奮い立たせて本気のパフォーマンスという感じで。公共バスの停車駅のボードに、レンタルチャリ(Lime Bike)の灯りを照明使い、そしてblack british musicと記されたフラッグを立てた、簡素でありながら自身のアーティスト性に忠実なステージ構成も好感度が高い。このライヴ映像は何度見ても泣ける。


そんなジム・レガシーだが、最近は"'06 waybe rooney"がイギリスのスポーツ番組のサッカー枠で起用され、これも現地ファンの間では盛り上がっていた。


Niko B(ニコ・B)

ジャンルを無視したスタイルで言うと、今年良作を出したニコ・Bにも触れずにはいられない。ニューポート・パグネル出身の25歳で、2024年に出したハウスサウンドのポップな楽曲"Who's this dealer"や、デクスター・ニュースエージェントを迎えた"trespass coat"で有名に。


ファニーで陽気な性格が日々のインスタグラムや楽曲のリリックやタイトルからわかり、前作『dog eat dog food world』ではポップなスタイルが全面に出ていたが、今年発表した『Cheerleader』は、よりスピットするハードなラッパーモードにチャネリングしたヒップホップ作品だった。自分は特に"podka dot"がお気に入りです。リリックは意味があるというよりかは、言葉遊びで音に上手くはめてる感じですね。


飛ぶ鳥を落とす勢いを見せるジャーク勢


EsDeekid(エスディーキッド)

常時スキーマスク装着、インタビューなどのメディア出演一切なしで、今年じわじわと主に2000年代生まれの若者を中心に独自のフェノメノンを作っている、リヴァプール出身のエスディーキッド。特徴的なスコウスアクセントのラップと、殺伐としたダークでジャークなビート。Yeat以降のレイジとも捉えられますが、自分は最初ポーランドかどっかのラッパーかと思ったほどの、退廃感なんですよね。どちらかと言うと、こっちの方が柔らかいですけど、"Ginseng Strip 2002 ♦"とか"kyoto"で出始めたストックホルムの王子様ことヨン・リーン登場時に近いヴァイブスを感じる。


直近でエスディーキッドがインターネットを最も揺らしたネタといえば間違いなくこれでしょう。


ある意味、ティモシー・シャラメ本人実演の「私はエスディーキッドではありません」宣言。

まずこのコラボは細かいコンテクストで言うと「ティモシー・シャラメのラッパーデビュー」とは一才異なるとまずはっきりさせたいですね。しかも厳密にいうと彼は高校時代にのちにウィリー・ウォンカの役を勝ち取るきっかけになるラップ動画がすでにデヴュー作なので(?)

11月入ったあたりからティモシーがエスディーキッドのマスクの下の人物ではないか説がネット上でとても話題になっており、


12月に入るとティモシー本人もインタヴューで聞かれた際に「のちにすべてがわかるよ」と匂わせるような発言をしていたんですね。



からの、自身主演映画『Marty Supreme』のプレミア公開を行なっていた12月19日(現地時間)に、突然ティモシーがエスディーキッドと彼の有名曲"4 Raws"でラップしている動画を出すと。なんせティモシー・シャラメは今回の映画のPRをキャリア賭けてやっているので(とにかくいろんなポッドキャストやyoutubeに出ている)、ここで噂を利用してラップをしたのはめちゃくちゃマーケティングジーニアスと言われる結果に。偽のマーケティング会議を動画にするというマーケティングもしている(BarbieがピンクならMarty Supremeはオレンジなんだよ!って軽くキレ気味に言ってることおもろい)。今回のシャラメは本気(ボブ・ディラン含め)。

なんなら、エスディーキッドがティモシーをする日も遠くないとは断言できないですから。


話がティミーに逸れてしまったけど、xaviersobased等のジャーク的サウンドの流れを、より鬱な感じがしているのがエスディーキッド。なんかオールドヘッズの人が「こんなのヒップホップじゃない‼️」ってキレる声が聞こえそうですけど、進化する速度が最も速いのがヒップホップの最大の特徴だと自分は思っているので、普通にめちゃくちゃ好きだしコンサート行ってみたい。歌いやすいしね。ルイヴィサンダル♩


Fimiguerrero(フィミゲレロ)


レイジやクラウドラップ色が強いですが、フィミゲレロも結構面白い動きを見せている。ナイジェリア出身でロンドン育ちで、大学でファッションを学んでいたもののラップのために退学、今では4ミリオン近いリスナーを誇るラッパー。『IMMIGRANT』の後に、同じく人気ラッパーのレンとラウンシー・フォウクスと出した『CONGLOMERATE』を聞くと結構印象違いますね。

今はエスディーキッドとコラボしたりと、UKレイジの流れの主要人物。ジムレガシーしかり、この人たちもここでLime Bike乗ってますね。ラグジュアリーなライフスタイルではなく、生活感ある見せ方がウケているのかも。


Fakemink(フェイクミンク)

フィミゲレロと最近シングルも出したばかりのフェイクミンクも、すでに7ミリオンリスナーを超える大人気ラッパー。

私は勝手に、彼の細かく音節を区切るようなラップがM.I.A.みたいでいいなと思って聞いてて。彼はハードでもあるけど、結構エモラップ的な側面が強めで、初期のドレイク的とも言われいたり。

aestheticはすごく2010年代のtumblrみたいなんですよね。ヒップホップに限らず、最近はこの240pみたいなピクセル感がGen Zにはウケいいっぽい。

この曲が好き↓


曲単体で現象を起こすラッパーたち

ここからはYoutubeで謎に再生回数を叩き上げる、一種のフェノメノンを起こしているラッパーふたり。

Young Eman(ヤング・イーマン)


12月初週に突如おすすめに出てきたこのいかにもUK chavのギャルと言われるようなギャルがサムネの、ヤング・イーマンによる"popstar in da bits"。やっぱり今はtumblr美学な画像が大事っぽい。

2020年のコロナの時に私のfypにめっちゃ流れてきた、アイブロウ濃いめ、つけまバサバサ、ケイキーなファンデ、ヌードリップでダウンを羽織ったuk chav gyals。

公式なクレジットはないけど、このギャルたちのヴォーカルがめちゃくちゃいい味を出していて、ファンたちからもこの女子たちをグループでやってくれとの声が強い。ついこの間ライヴしてた時もちゃんと連れてきてたんで、続けて欲しい。


という感じで、

Len(レン)、Nemzzz(ネムズ)、オックスフォード卒のYT、プロデューサー上がりのTR Gobrazy、2ミリオンリスナー誇るFeng、玄人のデイヴの新譜等、まだまだ他にも紹介したいアーティストがいるけど、キリがなくなったきたのでレイジ〜トラップの男性陣はこの辺にしておきます。



あと南アフリカのアーティストKupa(クパ)なんですが、彼をここで詳しく挙げると(てかまずイギリス人じゃないので)コロニアリズム的な是非が問われるので、ですが、めちゃくちゃイカしたGQOMビートなのでチェックしてみてください。


面白い音を鳴らすフィメール勢


BXKS(ベックス)

ルートン出身のベックスは今年出会えてよかったアーティスト1位2位くらい、好きで聞きまくっている。さっきのGQOMの文脈続きで、彼女もビヨンセフリースタイルと名付けた楽曲でやっています。


元々学生アスリートで、ラッパーになるなんて思ってもいなかったとのことなんですが、確実にラッパーになるべきな声質。彼女はクールな見た目とは裏腹にインスタのスパムアカウントのストーリーが毎日面白くて見てる。(日々何かしらのサイドクエストをしてる)

彼女はラップが巧みなのも魅力なんですが、GQOMからハウス、アフロビーツ、そしてレディオヘッドをサンプルしていたり、多種豊かなサウンドが強い。

https://youtu.be/JLUGvemxqag?si=iYuHRo4XFGfMB9uv

あと日本がすごく好きなそうで、"Wagashi"っていう曲も出してます。去年、ライオンでライブしてたらしい。。。

Chy Cartier(チャイ・カルティエ)

最後に推したいのはロンドン北部出身のチャイ・カルティエ。威勢のいい強めギャルで、bop bop bopっていうアドリブが聞くたびに癖になる。こう思うと、最初の15秒で停止ボタン押させるかどうかのこのファスト消費時代、シグネチャーなアドリブって大事ですね。

この子も出してる曲、びっくりするくらい全部いい。あとライミングがとにかく強いですね。このヨッティとの楽曲が素晴らしい。最近何かとエクスペリメンタルなヨッティでしたけど、このヨッティのヴァースもここ最近で一番いいんじゃないんですか。これ、もっとグローヴァル規模で売れまくっていなきゃおかしいと思う。

彼女については来年でる書籍でも書いているのでぜひ!


というわけで、

自分はアーティストをゲートキープしたい方でもないし、ライターとしてある音楽について書くとき、そのハイプを共有してくれる読者がいなければ文章を書く意味がないとも思う。てか一人で騒いでても楽しくないし。自分もこのシーンの盛り上がりの全てを隅々把握できているわけではないし、ジャンルの交差を体系的に語れる人はもっといると思います。なのでそういう人たちのブログなり記事、どんどん出てきて欲しい。

今年の盛り上がりを回収するにはまだあと10日も(?)残ってますし、今はまだメインストリームシーンに完全になっるほんと一歩手前、来年にはもうコマーシャル化しちゃうかなという感じなので。このムーヴの流れは今年がピークというか、海外の音楽リスナーのハイプも凄かったので。来年からピークアウトするくらいに思って、今ディグりまくらなければと思いこの半年くらいずっと観察してました。まじでUKラッパーはスピード速いので、追えば追うほど楽しいと思います。

あと、この辺りのUKラッパーたちは基本的に横で繋がっててみんな仲が良さそうなのも見てて楽しいポイントですね。まだ成熟しきっていない新しい世代のシーンだからこそか。ファンも結構熱心で、ニューカマーでもすぐSpotifyリスナーの数がハネる傾向もいい動きかなと。

以前のブログではささっと取り上げましたけど、今回のティモシームーヴを受けて、しっかり書くなら今しかないでしょ!ということで、2021年ぶりに真面目に書いてみました。


年を越す前に物申したい

あと年の瀬ということで少し吐露しますけど、今年本当にTLに日々流れ来る一部ラッパーの話に飽き飽きしてたのもあるんですよね。だって正直、なんでこんなに新しい才能がいるのに、過去の栄光のアーティストのことを永遠に持ち上げるのか、理解しづらいんですよね、

ツイッタラーで終わらずに文章を書いていく流れは、今は古いのか。。最初は金にならないかもしれないけど(その後も金になるわけではないが)、よくよく考えたら自分より下のヒップホップライターって思い浮かばなくて、おそらくその世代はみんな動画投稿でユーチューバーしてんのかな。それも悪くないけど、文章書くのってしんどいけど、楽しいと私は思うし、もっといろんな世代の人の文を通して世界を見たいなと思う。

今はもっと別の面白い現象とか、露出が必要なラッパーについて語るべきだと思います。だから、UKラップしか聞かん‼️みたいなへそ曲がり期を拗らせたりと(単にアメリカのシーンがつまらなかったのもあるけど)。

というわけで、みんなでUKラップを聞いて、熱く語っていこう!!!

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