#30 ニュージーランド蹴破り日記その3-2
翌日、ネルソンの街は、色々な形の雲が漂いながら晴れていた。「ネルソン・レイクス国立公園」に行った。
しかし道中、だんだん雲が多く、太陽が姿を隠すようになった。
「これは危ないかもしれない」
と思いながらビジターセンターに着くと、空には厚い雲がかかっていた。
掲示されている気象情報によると、今日はこのままずっと曇りだ。なんなら小雨が降るそうだ。明日以降も、数日間はそんな天気のようだった。
すぐそばの「ロトイチ湖」まで行ってみたが、水は暗く、冷たい色をしている。風が強くて肌寒い。これではトレッキングも楽しめない。
結局、諦めて街へ戻ることにした。そうだ、アートを見よう。今から帰っても、街に着くのは午前中だ。今日という日は、いかようにもできる。
再び一時間以上かけて、街へ戻った。ネルソンの街はしっかりと晴れていた。
宿のすぐ近くにある、カフェが併設された小さなギャラリーに行った。明るい室内に、鳥をモチーフにした絵や、花瓶や、ジェリービーンズをたくさん並べてつくったニュージーランドの写真などが並んでいた。久しぶりにカフェでフラットホワイトを飲んだ。クライストチャーチの「チュランガ」のカフェに行きたくなった。
席の近くの大きな柱に、横長の画が立てかけてあるのに気が付いた。サザンアルプスのような山の、木版画だ。柔らかく刷り上げられた、様々な青色と茶色が重なっている。ニュージーランドの山を描いた、ニュージーランドの作家の画を見ているのに、ここがどこであろうといいような気持ちになった。
隅の紙に書かれたURLを調べると、その作家のインスタグラムのアカウントが出てきた。山を描いた、たくさんの木版画の写真と、その製作工程を撮った動画が投稿されていた。マウント・クックの画もあった。
「この人はきっと美しい山が好きで、自分が見た美しいものを表したくて、自分で木の板に線を掘って、色を選んで重ねているのだ」
と思った。その人の画に出会えただけで、今日はとても素敵な日になった。
その後もたくさんのギャラリーを回った。いずれも小さかった。また数分で歩いて行ける距離にあった。スチュアート島で会った女性が言ったことを、また思い出した。
ネルソンを発ち、ブレナムに来た。周りにはブドウ畑が広がっていた。ブドウの木は、どれも一メートルほどしか高さがない。地面に刺さった木の棒に支えられている。
このあたりはワインの名産地だそうだ。この一本の木から、どれだけのブドウが採れて、どれだけのワインができるのだろうか。
ブレナムの街は小さかったが、素敵なカフェや建物の合間に、公園や広場がたくさんあった。至るところにある公衆トイレが、驚くほどきれいだった。
街のはずれに、新しそうな、素敵な図書館を見つけた。吹き抜けの階段がある二階建てで、ギャラリーやフリースペースが充実している。展示やコーナーのそれぞれに特色がある。館内には、ミーティングや作業をしている若者がたくさんいた。私は、子供向けコーナーにある小さな洞穴のような椅子や、たくさん並ぶ丸っこい椅子に腰かけた。
勝手ながら、ブレナムってもっとしょんぼりした街かと思っていた。小さくて穏やかだけども活力があって、全然しょんぼりしていなかった。これは失礼いたしました。
