【展覧会レポ】東京都庭園美術館「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」
【約4,600文字、写真約55枚】
東京都庭園美術館(以下、庭園美術館)で開催された「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」を鑑賞しました。その感想を書きます。
※本展覧会は2/16(日)に終了しています。
▶︎ 結論
庭園美術館の魅力と、青木・三嶋の作品がもつ特徴が美しく融合したキュレーションによって「感じ方って、置き方でこんなに変わるんやなぁ」と感動を覚えた展覧会でした。また、鉄やガラスの「楽しい意外性」にも気づくことができました。今後、青木・三嶋の作品に出会うことが楽しみです。
おすすめ度:★★★★★
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★★★☆
展覧会名:そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠
場所:東京都庭園美術館
会期:2024年11月30日(土) - 2025年2月16日(日)
休館日:月曜日
開館時間:10時 〜 18時
住所: 東京都港区白金台5丁目21−9
アクセス:目黒駅から徒歩約10分
入場料(一般):1,400円
事前予約:事前予約が望ましい
展覧所要時間:1時間半〜2時間
撮影:映像作品以外すべて可能
URL:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/241130-250216_noeaokiandritsuemishima-2/
▶︎ 訪問のきっかけ
1)愛知県美術館で《Untitled》を見た時、初めて「青木野枝」を認識しました。その後、青木を体系的に知りたいと思っていました。

▼ 私が青木を初めて認識した美術館
また、伊藤文化財団(伊藤ハムの拠出による公益財団法人)が、阪神・淡路大震災から30年を迎えるのを機に、兵庫県立美術館に大きな作品を3つ寄贈したことも印象に残っていました。
2)本展覧会のフォトジェニックなレビューを見て、興味が湧きました。
▼ 本展覧会の特徴的なレビュー
3)3年前に庭園美術館を訪れた際、作品と旧朝香宮邸のコラボレーションが素晴らしかったです。当時のポジティブな記憶を引きずって、今回の展覧会にも期待を寄せていました。
▶︎ 「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」感想
本展は、現代美術の第一線で活躍を続ける二人の作家、青木野枝と三嶋りつ惠が、当館の各所に作品を配置し、新たな視点でアール・デコの装飾空間を照らし出す企画です。青木は鉄を用いて空間に線を描くような彫刻で表現の地平を切り拓き、三嶋は無色透明のガラス作品を通して場のエネルギーを掬い取り光に変換してきました。(略)そのプリミティブな力を宿したフォルムは、自然のもつエネルギーや循環を想起させ、見る者に驚きと気づきをもたらし、私たちを取り巻く世界を新たな光で包み込みます。


✔️ 予想以上の大賑わい!

私は展覧会が終了する最終週の平日・午前中に訪問。到着するとびっくり!チケット売り場に行列ができていました。

列に並ぶこと約20分間、チケットを購入(オンラインチケットで該当時間は売り切れ)。土日はもっと激混みだったのではないでしょうか。展覧会の最終週は行ってはいけないと学びました(多分、また忘れます)。


青木野枝《Untitled》

青木、三嶋の作品はともに「映える」ことが特徴的でした。ここまで人気が高い理由の1つは、普遍的に「美しい」ことだと思いました。また、この展覧会は、写真を撮るのも楽しかったです。来場者は、バシバシ撮影に没頭している人が多かったです(私も含め)。
✔️ 建物と作品の美しい融合

入館して早々に感じたことが、青木野枝(以下、青木)、三嶋りつ惠(以下、三嶋)それぞれの作品は、旧朝香宮邸の雰囲気ととてもマッチしている点でした。作品と建物の装飾とのコントラストが素晴らしい(コレは蜷川実花の展覧会と同様)。美術館と作家が、ともにwin-winの展覧会でした。
(青木の作品は鉄、三嶋の作品はガラス、と頭の片隅に置いてください)

本展覧会では、ほぼ全て作品にキャプションがありません(コレも蜷川実花の展覧会と同様)。それにより、先入観なくピュアに作品を楽しむことができました。


2人のエネルギッシュな作品に圧倒されますが、それらにうまくマッチする旧朝香宮邸のポテンシャルもすごいと思いました。愛知県美術館で見た青木の作品は、置くべき適当な場所が見つからず「ん〜、ここでええわ!ポツン!」でした。しかし、庭園美術館で見た青木の作品は、全く別物のオーラを放っていました。
✔️ガラスや鉄の楽しい意外性

ガラスは、熱せられた後に固まって、硬いはずなのに、柔らかかったり、透明で水のような印象を受けることがあります。それに加え「三嶋のガラス」からは、不定形で不規則な心地よいリズムも感じました。
一般的なガラスのもつイメージからは相反する印象を抱くことができた点も、楽しい意外性でした。それらも含めて、ガラス作品には不思議な魅力があると感じます。この感覚は、北澤美術館でガレの作品を初めて見た時にも、強く感じました。
▼ 北澤美術館(長野県)の感想
私は、ヴェネツィアに団体ツアーで行ったことがあります。そのため、ヴェネツィアガラスでできた三嶋の作品には、どこか親近感を覚えました。



鉄の一般的なイメージは、無機質・硬い・冷たい・男っぽい。しかし「青木の鉄」(「夏子の酒」みたいな言い方…)は、それらとは対照的に、丸い・広がる・花のように軽やかな印象を受けました。その相反する意外性も面白かったポイントでした。私は、大食堂にある《ふりそそぐもの》が一番気に入りました。



「ただの丸」ですが「されど丸」。機械的なようですが、感情的な何かも感じました。また、私はこのような幾何学模様、連続模様になぜか惹かれます(草間彌生《無限の網》も同様)。子供の頃、大きなカレンダーの裏に無限迷路を描くのが大好きだったことも影響しているかもしれません。

そのように見ると「三嶋のガラス」「青木の鉄」も、素材は違えど、どこか似ている性質を感じました。

作品の魅力は、それ単体だけでなく、展示される環境によっても大きく変わると再認識しました。この魅力(キュレーションの面白さ)は、私が色んな美術館へ実際に足を運ぶ理由の一つでもあると思います。

✔️ 来場者はほぼ女性


来場者の9割以上が女性でした。男性は女性の付き添いがほとんど。男性1人で楽しんでいる人は非常に少数派でした。女性の方は、庭園美術館という立地に加え、青木・三嶋の女性性に自然と惹かれるのかもしれません。
ホテルの(高額な)アフターヌーンティーを楽しむのは女性しかいないのと同様に、特に女性は、庭園美術館の優雅な雰囲気に惹かれるのでしょうか。
✔️ 運送会社に感謝!


最近、私は引っ越しました。その時思ったのが「ものを移動させるってこんなに大変なんか…」ということでした。
青木の作品は、巨大なものが多いです(加えて、鉄なので重い)。引越しで、ものを運ぶ大変さを身をもって実感したため、今回の展覧会では「こんなでかいモン、狭い部屋によう運んだなぁ」と感心しました。一部の作品は、工房で完成させずに、ボルトとナットを使って、現場で完成させたそうです。


庭園美術館は、実際に住んでいた旧朝香宮邸を使用しているため、ホワイトキューブのような一般的な美術館と違った難しさがあると思います。しかし、今回の展覧会はその困難を乗り越え、ハードとソフトの融合が見事に実現していました(邸宅を傷つけずに運んだ運送会社に感謝!)。
同様の面白さは、アサヒグループ大山崎山荘美術館や、日本民藝館でも感じました。
▼ 住居を展示室にした美術館




✔️ 三嶋・青木の人間味
館内には、三嶋と青木のインタビュー動画も設置されていました。


三嶋曰く「光が降りてきて…、私の作品を通して、光を感じてほしい」とのこと。青木は作品制作の構想を練った上で、3、4名のガラス職人が一生懸命つくる横で「ここをもうちょっとこうして」など、指示を出すだけです(自らを”コンダクター”と呼んでいました)。

三嶋は、ヴェネツィアで結婚、離婚、出産、そしてガラスに出会いました。ヴェネツィアガラスの特徴は、透明度が高いこと。それと三嶋の感性が重なり、特別な「光」を生み出していると思いました。





まるで生きている花のよう
青木曰く「鉄は光って、溶けて、流れる。それが楽しい。火を使う楽しさ、切ってる時にワクワクする。…すべての物体は原子、すなわち球でできている」とのこと。一日中、鉄の塊からワッカを切り出す作業に没頭しているそうです。切り出されたワッカを溶接するのは助手の役目なんだとか。



✔️ 最後は息の飲む青木の大型作品



青木の作品は大きいため、展示現場で完成することが多いそうです。「その場所で作らないとわからない、それを最初に見られるのが楽しい」という青木のコメントもありました。




✔️ 展示ではなくインスタレーション
今回の展覧会で特に良かった点としては、1)展示の順序、配置のメリハリ、自然光の活かし方などを含め、館全体を使ったキュレーションが良い、2)キャプションがないため鑑賞に没頭できる、3)作品自体の性質が館の特徴と渾然一体に調和していおり心地よいことでした(「展示」よりも「インスタレーション」に近い)。
また、全然知らなかったアーティスト(特に青木)を好きになることができました。全体的に大満足の展覧会だったため、素直に「来て良かった」と思いました。

見つけるのに4分くらいかかりました

▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?庭園美術館の魅力と、青木・三嶋の作品の魅力が美しくマッチした展覧会でした。展覧会は「作品を見る」というより、展示された空間、並べ方なども含めた「総合芸術」だと改めて認識できるキュレーションの美しさも実感できました!
▶︎ 今日の美術館飯




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