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【🎨展覧会レポ】秋田県立近代美術館「三浦明範 VERITAS」「キンビ写真コレクション」ほか

【#321、約5,800文字、写真約95枚】
秋田県立近代美術館(以下、近代美術館)に初めて行き「2025コレクション展第2期<三浦明範 VERITAS>」「企画展<キンビ写真コレクション>」などを鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。

※ 三浦明範展の会期はすでに終了しています。

▶︎ 結論

アートに興味があり、時間に余裕があれば、寄っても良い美術館だと思いました。それは主に、1)電車、バスともにアクセスが難しい、2)平成初期につくられた美術館のため、当時の古いコンセプトに基づく部分が散見される、3)意外に三浦明範のコレクション展は楽しかった、4)雪のない季節は屋外彫刻が楽しい(かもしれない)ことによります。なお、秋田県で美術館を巡りたい人は、まず秋田市内を優先することをオススメします。

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★☆☆☆☆
展覧会名:①企画展「キンビ写真コレクション」、②2025コレクション展第2期「三浦明範 VERITAS」
場所:秋田県立近代美術館
会期:①2025(令和7)年11月22日(土)~4月5日(日)、②2025(令和7)年10月9日(木)~2026(令和8)年1月4日(日)
休館日:年末年始
開館時間:09:30~16:00
住所:秋田県横手市赤坂字富ヶ沢62-46
アクセス:横手駅からバスで約20分
入場料(一般):無料
事前予約:ー
所要時間:約2時間
撮影:コレクション展のみ可能
巡回:ー
URL:①こちら、②こちら


▶︎ 訪問のきっかけ

秋田旅行に行った際、1日目は、秋田市立千秋美術館、秋田県立美術館、秋田市立赤れんが郷土館に行きました。

横手市増田まんが美術館(2019年にリニューアル)

2日目の候補は2つ(秋田県立近代美術館、横手市増田まんが美術館)ありました。ともに横手市にあるため、両方訪問しようと考えましたが、まんが美術館は遠い上に、電車、バスともに本数が少ないため、往復するだけでもかなりしんどい。そこで、秋田県立近代美術館のみの訪問しました。

横手まんが美術館の立地は厳しすぎる

地方には、アクセスに難がある美術館が多いです。地方に人口が多かった20世紀なら問題ありません。しかし、過疎化の進行に加え、自動車の所有台数が減少局面にある現在、都心部にない美術館は、十和田市現代美術館のような尖った特徴がないと、今後は存在意義が問われそうです。

▼ 大人気の十和田市現代美術館

▶︎ アクセス

秋田県立近代美術館は、徒歩やバス合わせて、横手駅から約30分(新幹線が止まる大曲駅から横手駅間の電車は、1時間に約1本のみ)。

横手駅は白銀世界

私は、バス停「北都銀行横手西支店前」から、9:41発のバスに乗り、イオンスーパーセンター西口9:52に降車、約10分歩いて近美に到着しました。

バス停では雪が大量のため、車道に出るしかない
バスは1時間に1本!

横手駅から近美の行き方は、時間帯によって、バスの路線が様々あることに加え、運行本数がとても少ない(横手市循環バスの場合、1時間に1本)ため、難易度が高かったです。ステキな展覧会を企画しても、来館者を増やせないのであれば元も子もなさそうです。

無事、循環バスに乗車
雪国では、ワンストップで買い物が済むイオンは役に立ちそう
イオンの近くにウィンズ
都内では見ない「はたらく車」
近美が見えてきた
朝イチでも、雪かき済の歩道
美術館の入り口とは思えない雰囲気

帰りのバス本数も少ないため、事前にアクセス方法を入念に調べておく必要があります。

帰りのバスも1時間に約1本!
12:15に乗車。
雪国での移動は計画的に!

▶︎ 秋田県立近代美術館とは?

秋田県立近代美術館は、1994年「秋田ふるさと村」のオープンと同時に、その敷地内に開館しました。

秋田ふるさと村のメインエントランス

「秋田ふるさと村」とは、秋田県の魅力を紹介するテーマパーク。美術館のほか、秋田の名産品・特産物の展示・販売、工芸品の制作実演の見学、体験工房、プラネタリウム、トリックアートなどのアミューズメント施設もあります。当日は、地元の家族連れで賑わっていました。

東北最大級のプラネタリウムが併設

観光施設に美術館が併設されるのは、地方ならではの印象があります。それぞれの施設による相乗効果はゼロではありません。しかし基本的に、顧客層は異なっていると思いました。

箱庭うどんで有名な「佐藤養助商店」も同居
近美に約2時間いたため、時間がなく食べられなかった…
多くの人で賑わう
時間があれば、お土産を買いたかった

現代の感覚では、テーマパーク内に美術館が併設されているのは、違和感が強かったです。美術館(博物館)=観光娯楽施設ではなく、主目的は、資料の収集、保管、展示、調査研究、教育普及活動だからです。

「秋田県のテーマパークつくるなら、県立美術館もつくっとくか!」という軽いノリを感じました。収蔵品を見ても、秋田市立千秋美術館と違いもなかったため「本当にここに美術館必要だったの?」と素直に思いました。

秋田出身の版画家・勝平得之のステンドグラス
安藤泉《大地の鼓動》
近美の横には「ワンダーキャッスル」。
子どもは1日中楽しめる
雪の季節は正面から入れないため、
横の通路から入る。

驚いたことに、当時の近美での観覧が無料!近美で集客し、「秋田ふるさと村」でお金を落としてもらう作戦でしょうか。しかし、近美の入館者は常時数人程度だったため、客寄せ効果はほぼなさそうでした😅

いつでも観覧無料!

近美もふるさと村も、事業主体はともに秋田県のため、どこで利益を得ても、結果的に黒字ならいいと思いますが、珍しいパターンでした。

正面玄関は地下1階で、展示室は5階と6階です。2〜3階は何があるんだろう?と不思議でした。特徴的な設計を担当したのは、山下設計東北支社(仙台市)です。

地上から5階にダイレクトに行けるエスカレーター
現在、休止中
一部の床はガラス仕様
館内のあちこちに彫刻が点在

近美の館内には、至るところに彫刻が展示してありました(全34点)。ジャンルも様々。館全体を通して、バブル期に建てたホテルのような印象を受けました。

朝倉文夫《よく獲たり》
アリスティード・マイヨール《囚われのアクション(腕のない)》
野口裕史《天空伝説・風韻》
背中にマル付いてるし、絶対乗りたくなるけど…
舟越保武《ANN》
朝倉文夫《佐藤章像》
横手中学出身、日本で初めての東京↔︎大坂間郵便飛行で優勝し、
民間のトップパイロットとなった人物

屋外にも彫刻が32体設置されています。バリー・フラナガン、藪内佐斗司、清水九兵衞、安藤泉、三木富雄など、私も聞いたことがある作家の作品も並んでいました(冬は楽しめず…)。

▶︎ 企画展「キンビ写真コレクション」感想

5階のコレクション展は、秋田県出身の写真家5人の展示でした(撮影不可)。気になったのは、以下の2名でした。

✔️ 千葉禎介ていすけ(1917年〜1965年)

1940年代以降に、秋田の生活風景を写した等身大の写真は、好感がもてました。また、村々の団欒の様子は、先日知った秋田の版画家・勝平得之を思い出しました。

千葉によるヴィンテージプリントは、今見てもパキッと美しいモノクロだったため、現代の高性能デジカメで撮ったようでした。

✔️ 大野源二郎(1924年〜2023年)

秋田に関する作品を見ていると、農家、田植え、雪。やはり秋田のDNAや誇りは、そこに収斂されると感じました。

1950年代の農作業は、ほとんど手作業。しかし、1960年代からはコンバインなど農業機械の導入により、今と変わらない風景にガラッと変わりました。写真は、当時の慣習を知る上でも、重要な役割があると改めて思いました。

また、大野源二郎は笑顔を撮るのが上手いため、見ていて気持ちがほっこりしました。たとえ同じ機材で撮影しても、撮影した人によって、そこに「ニュアンス」が出るのがカメラの面白いところです。

5階から見た風景
山々が美しい!
安藤泉によるキリンは、八重洲でも見られる
5階から6階はスロープでも上れる

▶︎ 2025コレクション展第2期「三浦明範 VERITAS」感想

秋田県出身の画家・三浦明範は、1970年代から90年代半ばにかけて、油彩とテンペラの混合技法を駆使し、精緻な筆致と澄んだ色彩にあふれる作品を多く制作。その後、1996年から97年にかけて(略)シルバーポイント(銀尖筆)による制作を始めます。以降、“日常生活の中にある不思議さ”や“生と死”など、画業の初期から通底するテーマを深めながら、白と黒を基調としたモノクロームの作品を多く手がけてきました。

公式サイトより

✔️ 三浦明範(1953年〜)

6階の展示室では、三浦明範による企画展が開催(ほぼすべて撮影可)。すべてが近美の所蔵です(全15点中、11点が2024年の寄贈品)。この作家の作品は、前日に千秋美術館で見た時、一際異彩を放っていると感じました。

三浦明範は、秋田県大館市生まれ。東京芸大を卒業する時、《赤い風船》が買い上げとなりました。

混合技法の説明

写実的な絵を描くには「混合技法」が有効らしいです。絵を描く場合、当然ながら、目的に合った技術があることを再認識しました。

《斜線の風景》

テンペラとは「油絵具が登場する以前の水溶性の絵具すべてのこと。西洋では卵が最も多く採用され、<テンペラ>と表示されるほとんどが<卵テンペラ>を指す」そうです。

そのテンペラと油絵具を合わせたものを「混合技法」を言います。お互いのいいとこどりをすることで「透明層と不透明層の重ね合わせでつくる繊細な色調」が実現するそうです。

細かい!
テンペラの記載

この時、キャプションにある「テンペラ」に初めて注目しました。

《消し忘れたランプ》
《朝の祭壇》

実際の絵画を見ると、心の中で「すごーい」を連発!ただただ精巧で驚きました。秋田旅行の最後に、面白い作品をたくさん見られてうれしかったです。このように細かい作品は、おそらく原始人でも、現在の世界でどこに住んでいる人でも驚くのではないでしょうか。細かいは正義!

《再生ー白い月》
《COGITO》
メタルポイントに使用する様々な金属線と芯ホルダー

この展覧会で「シルバーポイント」を初めて知りました。簡単に言えば、鉛筆の先がシルバー(銀)でできたもの。1度描くと、消せないそうです。

シルバーポイントの説明

三浦明範の作品は、ただ細かいだけでなく、彼独特のダークな意思を感じます。すべての作品に「死」のイメージが付きまとっていました。

《薔薇と標本》
《シュレーディンガーの箱》

シルバーポイントで作品をつくるにあたり、どのくらいの時間がかかっているのでしょうか?チマチマ削っていると、あっという間に日が暮れそうです。黒い部分もシルバーポイントで削ったと思うと、人物よりも背景の方が気が遠くなりそうな作業です。

《鳥》
細かい!
《VERITAS》

展覧会名になっている「VERITASベリタス」はラテン語で「真理」「真実」という意味。この作品は、表情や服装よりも、血管の表現が生と死を暗示しているように思えました。

《Sleeper》

5階の企画展を見た後、6階のコレクション展は全く期待していませんでした。しかし結果的に、三浦明範展はとてもワクワクしました。作品にエッジがあることに加え、パネルによる説明が丁寧だったため、今までにない発見が多くありました。

とまれ、秋田で巡った4つの美術館の中で、この展示が最も面白かったかもしれません。素直に「近美、やるやん!」と思いました。

《Inheritance from Grandmaー受け継ぐ》
美しい…!

都内で企画展を実施すれば、一定の集客が期待できると思いました。今まで、武蔵野美術大学 美術館・図書館や、平塚市美術館で展示した実績があるようです。

✔️ そのほかのコレクション

残りのコレクションでは、小田野直武、寺崎廣業、高橋萬年など、前日に、千秋美術館で見た秋田出身作家の作品が多かったです。

川端玉章《四時群花図》
小田野直武《岩に牡丹図》
高橋萬年《四季彩》

中でも、満足感があったのは勝平得之の版画4点でした(赤れんが郷土館では撮影不可でした)。

彼の版画からは、秋田のもつ力強さ、自然との共存、それらに対するリスペクト、版画ならではの温かみを感じました。

勝平得之《米作四題・耕土(春)》
《田植(夏)》
《刈あげ(秋)》
《堆肥運び(冬)》

◾️ その他

✔️ ふれんどりーギャラリー

5階には小さな展示スペースがありました。近美に申請することで、作品を展示できるようです。「ギャラリー」というものの、廊下の突き当たりを利用しているだけ。来館者が少ない上に、目立たないスペースに作品を展示しても、どのくらい役割を果たしているか…。

✔️ ハイビジョンギャラリー

ハイビジョンギャラリー」には5つの部屋があり、近美の名作、世界の美術館などの映像を見ることができます。1994年当時は、ハイビジョン(2K解像度)機材は、数十万円したため、近美の白眉だったのでしょう。

しかし、2011年から地デジが普及したため「ハイビジョンギャラリー」と銘打つ価値は、ほぼなくなってしまいました。この辺りでも、平成初期の残り香がしました。

✔️ 近美キッズルーム

7階には、取ってつけたようなキッズルームがあります。設備はとても充実しており、私の幼児が来たら、大喜びだと思いました。夫婦で来た場合、子どもをここに置いて、交代しながら鑑賞するのはアリかもしれません。しかし、エレベーターを乗り換えて、わざわざ7階まで来るかな…、という印象でした。

美術館とは切り離して、保育としても利用されているようです。

▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?平成初期に建てられた美術館の雰囲気が強かったため「これでいいのかな?」という部分を多く感じました。一方で、三浦明範のコレクション展は、秋田で訪れた4つの美術館の中で、意外にも最もワクワクした展覧会でした。アクセスはとても厳しいですが、アートに興味がある人であれば、寄っても良いと思いました。雪のない季節は、屋外彫刻も見どころだと思います。

▶︎ 今日の美術館飯

★3.3/スターバックスコーヒー 秋田駅店 (秋田県/秋田駅) ー S スターバックス ラテ (¥377)、シュガードーナツ (¥255)
★3.3/北野水産 大曲駅前店 (秋田県/大曲駅) ー ミニカツ丼セット (¥1,280)

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